保育園と「パンとエスプレッソと」がコラボ。子連れも一人客も笑顔になれるカフェベーカリー

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保育園運営会社と「パンとエスプレッソと」の異色コラボ。月島「みらいのテーブル」をご紹介。

〈「食」で社会貢献〉

2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、より良い世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まずお店選びから意識してみては? この連載では「食」を通じての社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店をご紹介。

今回訪れたのは、2024年4月に月島にオープンしたベーカリーカフェ「みらいのテーブル月島」だ。

「みらいのテーブル 月島店」の子ども用メニュー

カフェという形での“子育て家族を応援”。「みらいのテーブル月島」

近隣には保育園、区民センターや大きな公園もあり、親子連れが立ち寄りやすい立地

2023年1月に門前仲町店がオープン、この月島店は2号店となる。店内に入ると、ゆっくりとパンや飲み物を楽しめる大小のテーブルと、焼き立てのパンが並ぶ棚が目に飛び込んでくる。一見するとスタイリッシュで居心地が良さそうなベーカリーカフェなのだが、この「みらいのテーブル」はそれだけの場所ではない。

中央の大きなテーブルは、多人数のママ会なども想定。ベビーカーのままでも入りやすいよう配慮された設計になっている

この店舗を運営する「株式会社みんなのみらい」は、保育所運営を中心に、共働き家族・子育て家族を応援する事業を展開する「株式会社さくらさくプラス」、そしてベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと」などの店舗展開で知られる「株式会社 日と々と」との合弁会社。つまり、子育てを応援する事業と飲食事業のコラボレーションで運営されているカフェなのだ。

もともと知人だったという2社の代表が「食育」という観点から意気投合したことで始まったというこの取り組み。安心・安全な子育て支援の空間を提供したい、子どもが「食」に興味を持てる空間を作りたい……そんな思いから始まったのが「みらいのテーブル」だ。

店内のコンセプトは「大人目線と子ども目線の両方から楽しめる空間」。子連れウェルカムな飲食店はわかりやすく子ども向けのデザインを意識したものが多いなかで、こちらの店舗の内装はとてもシンプルなもの。だからこそ、子ども連れでも、1人でも、友達同士でも……と幅広い属性の人が気軽に入ることができるのが魅力だ。

「食育」も見据えた店内の細かな配慮

親子で使いやすい手洗い場

店内をよく見ると、随所に子ども連れの方が使いやすいよう細かな配慮が施されている。例えば、店内に設置された手洗い場には、子どもでも使いやすい高さのものを併設。こういった手洗い場は普通なら客席から見えない場所に作りがちだが、あえてどこからも見える場所に作ったのは「子どもが一人で手を洗いに行っても親が見守れるように」だという。安全確保と同時に「食事の前に手を洗う」ということを子どもが主体的に行えるような工夫の一つだ。

この手洗い場の裏には、ゆっくりとおむつ換えや授乳ができる「授乳室兼おむつ替え室」も完備。実際、取材に訪れたときも授乳室を使う赤ちゃん連れの利用客を目のあたりにした。子ども用の椅子も、乳幼児用のチェアベルトがあるもの、もう少し大きな幼児向けのものと2種類完備されているところがうれしい。

子どもの目線の高さに作られた本棚には絵本が常時60冊以上

店内の棚には子どもが楽しめるおもちゃや絵本も。絵本のラインアップは「さくらさくプラス」運営保育園からヒアリングした子どもたちに人気の作品を中心に、一部は世界中の絵本をサブスクリプション形式で楽しめる「ワールドライブラリー」と提携。定期的に入れ替わるので、リピーターでも新たな絵本との出会いを楽しめる。

そういった細かな配慮ができるのは、保育園運営会社との共同運営ならでは。「小さな子ども連れの人たちに何が必要か」について現場の声を聞くことができ、それを店舗運営に活かすことができる。これは最大のメリットだろう。

子どもたちが厨房のスタッフと見つめ合う微笑ましい光景も 写真:お店から

「食育」への配慮もあちこちに。厨房がガラス張りになっていることで、子どもたちは「パンがどうやって作られるのか」を眺めることができる。また、パンの棚の最下部は、あえて子どもたちが届く高さに設定。自分でパンを選び、トングでパンを取る楽しさを子どもたち自身に味わって欲しい、という思いからだ。

パンを選ぶワクワク感を子どもも実感できる棚の配置

親子で楽しめるカフェメニュー

ランチメニューで人気、3種のパンプレートと自家製レモネード セットで1,800円

カフェの方ではモーニングメニューやランチメニューも。ランチの「3種のパンプレート」は米粉の入ったバゲット、生食パン、クロワッサンと、ソーセージ、ラペやサラダなど盛りだくさんの野菜、日替わりのスープがいただける。3種のパンはどれも店舗の看板商品。このプレートで味を試してみて、気に入ったものを購入してもらえれば……という目的もあるとか。つい自分の栄養補給は後回しになりがちな子育て時期には、野菜がたっぷりついているのもうれしいところだ。また、自家製レモネードなどドリンクも店内仕込みの凝ったものが多いのがポイント。

子育て中、特に乳幼児を育てているときには「お店の中で子どもが泣いてしまったら……」と気を遣ってしまい、外食へのハードルは高くなるもの。子育ての当事者が孤立しがちな時代だからこそ、おいしいパンとドリンクでホッと一息をついてほしい……そんな店側の思いが伝わってくる。

3種の米粉蒸しパンとベビチーノのセット 350円

乳幼児が食べやすいキッズメニューも。小麦粉・卵不使用の3種の米粉蒸しパンとスチームミルクを使ったドリンク「ベビチーノ」のセットは、「大人と同じようなものを食べたい・飲みたい」年頃の幼児を持つ親にはとてもうれしい。しっとり、もっちりした食感と優しい味わいが印象的な米粉蒸しパンはベーカリーでも売れ行きが良いというが、これは保育園で人気のメニューをヒントに生まれたもの。「みらいのテーブル」ならではの商品といえるだろう。また、米粉を使った商品やグルテンフリーの商品は今後もっと増やしていきたいという。

店内で焼き上げるパンに使用する小麦粉はすべて国産のものを使用

パンの商品開発は「子どもも食べられるかどうか」を主軸に試行錯誤しているというが、常時50種類用意しているというパンはどれも「パンとエスプレッソと」の監修だけありハイクオリティ。もともとベーカリーショップが少なかったエリアとあり、オープンするやいなや多くの近隣住民に歓迎されているというのも頷ける。また、店舗でドーナツなどに使用した揚げ油をハンドソープにリサイクルし「さくらさくプラス」で運営している保育園で使用するといった取り組みも。「飲食」と「子育て支援施設」のコラボレーションでどんなことができるのか、そのモデルケースを見せてくれるという意味でも興味深い。

まずは門前仲町と月島の2店舗をしっかり認知してもらい、その上でいずれはこの形態の店舗を増やしていきたいという思いもあるとか

月島という場所は東京の中でもいわゆる“下町”。古くから住む住人が多い一方、マンション建設により新たに移り住んだファミリー世帯が急増している場所でもある。そういった地域は、住人たちのコミュニティをどう形成するかという課題も抱えていることが多いもの。まだ開店間もないものの、この「みらいのテーブル」では店内で高齢者と小さな子ども連れ、また出産を控えた妊婦さんなどが混在することも多々あるという。
地域も、人も、店舗も、「ここから一緒に育っていく」。単なるカフェではなく、“みらい”がここから見えてくる……そんな場所といえるだろう。

※価格は税込です


<店舗情報>
◆みらいのテーブル月島
住所 : 東京都中央区月島2-13-5
TEL : 03-3520-9239

<店舗情報>
◆みらいのテーブル
住所 : 東京都江東区富岡1-14-5
TEL : 03-5809-9039

取材・文:川口有紀
撮影:大谷次郎

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