エースとして五輪での活躍が期待された宮田選手

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20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止

 代表チームの大黒柱であり、誰もが認めるエースに、一体何が――。体操女子のパリ五輪日本代表でキャプテンを務める宮田笙子選手(19)を巡って、にわかに信じ難いニュースが飛び込んできた。

【写真】しなやかに躍動する太ももが、テーピングでがっちりと固定される痛々しい姿……。傷だらけで「五輪の切符」を掴んだNHK杯での宮田選手

 日本体操協会が都内で緊急会見を開いたのは7月19日のこと。協会の説明によれば、喫煙の疑いが浮上した宮田選手を、合宿地のモナコから緊急帰国させて聞き取り調査に着手。その結果、喫煙だけでなく、飲酒行為まで発覚したという。宮田選手はパリ五輪出場を辞退することになった。

エースとして五輪での活躍が期待された宮田選手

 日本体操協会の「日本代表選手・役員の行動規範」には以下のように明記されている。

<日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する ※2016年度から数年かけて段階的に全面禁止とする>

<日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止とする。ただし、合宿の打ち上げ、大会のフェアウェルパーティー等の場合は監督の許可を得て可能とする>

 協会内では未成年に限らず、代表選手として活動する際に喫煙・飲酒は「原則禁止」という扱いだったわけである。

“たかがタバコ”では済まされない

 五輪を目前に控えたタイミングでのトラブル発覚について、「選手にとって4年に1度のチャンスを飲酒や喫煙くらいで潰していいのか」という声も聞こえてくる。だが、スポーツ紙記者によれば、

「たしかに、“たかがタバコと酒で……”“宮田選手を批判する人は自分の大学時代を思い出した方がいい”といった声もあるようですが、正直なところ、協会の厳しい対応は致し方なかったと思います。協会の行動規範以前に、そもそも、未成年者の飲酒や喫煙は日本の法律で禁じられているわけです。日の丸を背負って五輪に出場する日本代表選手の行いとして、問題視されるのは当然と言えます。少なくとも、これまで五輪の日本代表選手が“未成年者の喫煙や飲酒”によって取り沙汰されたことは記憶にありません」

 その一方で、関係者によれば、体操選手は常にストレスと向き合っているという。

「特に女子の体操選手は、成長に伴って比較的脂肪がつきやすい面があるため、食事の量や中身まで制限されるような厳しい体重管理が求められます。また、競技の性質上、一瞬の判断ミスが選手生命を脅かす大ケガに繋がるのも事実。さらにメダルへの期待などが加わって、精神的に追い込まれる選手は少なくありません。そのせいで他の種目と比べ女子選手の引退時期が早いとも言われています。そうしたストレス過多な環境のはけ口として、喫煙や飲酒に走った可能性は否定できません」

痛々しい両足のテーピング

 実際、パリ五輪の女子団体メンバーは5人全員が10代で、19歳の宮田選手は最年長のひとりである。ちなみに、宮田選手は2004年9月21日生まれなので、2ヵ月後には晴れて20歳となり、喫煙と飲酒は法的に問題なくなるところだった。

 また、宮田選手は過度なストレスに加えて、常にケガに悩まされ続けてきた。

 彼女がパリ五輪代表への切符を手にした5月のNHK杯。しなやかに躍動する、鍛え抜かれた両足は、しかし、明らかに痛々しい様子だった。古傷の右かかと、内転筋を痛めた左太ももがテーピングでがっちりと固められていたのだ。だが、圧倒的な脚力と天性のバネを活かした演技で、宮田選手は見事に大会3連覇を成し遂げた。

 5月29日にデイリー新潮で配信された記事<平均年齢17.8歳」の体操女子日本代表 “全員が初五輪”でも「メダルも夢ではない」>では、ロンドン五輪に出場した解説者の田中理恵さん(36)がこう評している。

「日本の美しい体操は必ず高い評価を得られるでしょう。宮田を軸にミスなく演技すれば、団体のメダルは夢ではないと思います」

“軸”となるエースを欠き、日本代表は正念場を迎えている。

デイリー新潮編集部