大声援でチームを後押ししたコロンビアサポーター。写真:浅田真樹

写真拡大 (全2枚)

 コパ・アメリカ2024準決勝、ウルグアイ対コロンビアの一戦は、試合そのものよりも、試合後の“事件”によって長く歴史に刻まれてしまうのかもしれない。せっかくの好カードは、そんな後味の悪い試合となってしまった。

 試合自体はよくも悪くも、南米らしい熱い戦いだったと言っていい。球際の争いは激しく、明らかなファウルも少なくなかったが、そこには絶対的な勝利への意欲が感じられ、互いがスピードダウンすることなくゴールへと向かう展開は、見応えがあった。

 そのなかで、この試合唯一の得点が生まれたのは39分。ハメス・ロドリゲスの右CKにジェフェルソン・レルマがヘディングで合わせ、コロンビアが先制した。

 すると、わずか6分後、試合はさらに動く。

 コロンビアのダニエル・ムニョスが小競り合いのなかでヒジ打ちを放ち、この試合2枚目のイエローカードを受けて退場となるのである。

 それでもコロンビアは、決して守備に徹することはなく、あくまでカウンターの脅威を示し続ける。

「我々は試合をコントロールしていた」と振り返る、コロンビアのネストル・ロレンソ監督が、「ひとり少なくなった時でさえ、我々は2人のフォワードを残した」と誇らしげに語っているとおりだ。
 
 結局、退場者を出しながら、虎の子の1点を守り切ったコロンビアが1−0で勝利。前回王者アルゼンチンが待つ決勝へと駒を進めた。

 だが、この試合で最も大きな話題となったのは、ここから先だ。

 センターサークル内で両チームの選手、スタッフがもみ合いになるのと同時に、スタンドでもサポーター同士の乱闘があちこちで発生。スタジアム内には不穏な空気が漂っていた時だった。

 ウルグアイのベンチ脇、ピッチに最も近いスタンド最前部に、ホセ・マリア・ヒメネスが駆け上がり、コロンビアサポーターと小競り合いになったのである。

 だが、これは会場の警備員らが間に入り、ほどなく両者が引き離された。ウルグアイの選手の家族と思しき一団が、スタンドから降ろされ、ピッチに避難するという事態にはなったが、これで終わっていれば、ここまで“事件”は大きなものにならなかっただろう。

 ところが、直後、激高したダルウィン・ヌニェスが多くの人をかき分けてコロンビアサポーターに突進していくと、次々にパンチを繰り出した。どうにかスタッフに抑えられ、ピッチに降りたヌニェスは号泣。収まりのつかないヒメネスはスタンドとにらみ合い。しばらく混乱は続いた。

【動画】まさかの乱闘! ウルグアイ選手がスタンドに乗り込んで敵サポと...
 CONMEBOL(南米サッカー連盟)は試合後、「サッカーに影響を与える暴力行為を強く非難する。フィール内外に不寛容と暴力の居場所はない」との声明をすぐさま発表。だが、怒り心頭のヒメネスは、「Desastre(災害)」という言葉を何度も用い、取材陣にこう語っている。

「私たちの家族が、コロンビア(サポーター)の一部から攻撃された。これは私たちの家族に起きた災害だ。愛する家族が危険だったので、彼らを守るためにスタンドに押し入るしかなかった。生まれたばかりの小さな赤ん坊もいたのだから」

 ヒメネスが、「彼ら(コロンビアサポーター)は(酒の)飲み方を知らない。まるで何も知らない子どものように振る舞う」とも話していることから察するに、酔ったファンの行為が家族に何らかの危険を及ぼしたのだろう。

 だとしても、そもそものきっかけがはっきりしない以上、一方的にコロンビアサポーターを非難はできない。
 
 この試合、数の上ではコロンビアサポーターのほうが圧倒的に多く、ウルグアイサポーターを大勢で取り囲むという状況が生まれやすかった(そう見えやすかった)のは、確かだからだ。

 試合前に時間を戻せば、数の違いこそあれ、両チームのサポーター同士が記念撮影をする姿も見受けられた。そこには国際大会ならではの楽しげな雰囲気があった。

 サッカーという競技が、両チームのサポーターを物々しい柵で切り離さなければ成立しないのだとしたら、寂しい限りである。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)