【芳沢 光雄】小学生は知っている「0.777…」「0.191919…」循環小数を分数に直すやり方

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食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。

長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。

『大人のための算数力講義』連載第23回

「5/7 ÷ 3/5 = 5/7 × 5/3」…なぜ分数の割り算は分子と分母を入れ替えた掛け算に直せるか説明できますか』より続く

円分割から考える分数計算

ピザのような図を用いて考えよう。

上の図は、円全体を1と考えている。まず、

1/2は0.5で、0.5を掛けることは半分にすることである。だから、2/3に1/2を掛けると

という計算は納得できる。

有限小数を分数に直すには?

次に、前ページ左の図と右の図を見比べて、2/3を1/6で割ると、その結果は4になればよい。そこで

という計算は納得できる。

分数の掛け算や割り算の計算方法を確かめるためには、ここで述べたような考え方で構わないと思ったきっかけは、分数の計算をすっかり忘れてしまった大学生の存在である。せめて、このような方法で公式を確かめることができてほしい、と思ったことが何回かあったのである。

最後に、小数と分数の関係をもう少し学ぼう。まず、無限小数でない有限小数は、必ず分数に直すことができる。たとえば、

割り切れない分数は必ず「循環小数」に

次に、

1/3=1÷3および

1/11=1÷11を小数に直してみると、

というように、小数点以下どこまでも3が繰り返し続いたり、09が繰り返し続いたりする数になる。

小数点以下の数が限りなく続く小数を「無限小数」といい、7.342のように小数点以下の数が有限個で終わる小数を「有限小数」という。

実は、有限小数にならない分数は、必ず繰り返しのある「循環小数」という無限小数になる。

ちなみに、円周率πや中学数学で学ぶ2などは繰り返しのない無限小数で、このような数を「無理数」という。

循環小数とは?1/7を例に考える

とりあえず、有限小数にならない分数は必ず循環小数になることを、1/7を例にして説明しよう。1÷7を次のように筆算で計算していくと、

というように、「142857」が繰り返し続く。

上の式において、第1段から第7段までのあまりに注目すると、それらは順に3、2、6、4、5、1、3となっている。

各段における7で割ったあまりは、0以上7未満の整数になるので、0、1、2、3、4、5、6のどれかである。したがって、割り切れないまま無限に小数が続くならば、各段のあまりは必ず1、2、3、4、5、6のどれかなので、それらのある数字は2回以上現れなくてはならない。

適性検査で頻出!循環小数の分数変換

先ほどの筆算では、第1段と第7段の「3」がそれを表している最初の数字で、第1段と第7段で同じあまりが出たということは、どちらも同じ7で割るので第2段のあまりと第8段のあまりは同じになり、それゆえ第3段と第9段のあまりは同じになり……と以下同様に続くことになる。

そして、それが第7段と第13段のあまりが同じところまでいけば、後は第1段から第6段を一つのセットとした繰り返しが続くことになる。

反対に、循環小数は必ず分数に直せる。

就活の適性検査では頻出なので、例によってこの説明をしよう。その前に、

のように、循環小数については、繰り返す部分の上に点「・」を書く記法があることを紹介しておく。

循環小数を分数へ変換する方法

なので、(1)−(2)を考えると以下の式が順に成り立つ。

という無限小数については、

なので、(3)−(4)を考えると以下の式が順に成り立つ。

複雑な循環小数の分数変換

という無限小数については、

なので、(5)−(6)を考えると以下の式が順に成り立つ。

『素数が「無限に続く」ことを証明できますか?...2000年以上発見されなかった「小学生でも」納得できる「簡単な」方法』へ続く

素数が「無限に続く」ことを証明できますか?...2000年以上発見されなかった「小学生でも」納得できる「簡単な」方法