創作にペットを登場させる時は最大限気を付けなくてはいけない
主人公の相棒としてペットが出てきたり、動物をモチーフにしたキャラクターが主人公になったりと、フィクションにペットなどの動物が登場することは多くあります。ペットを登場させることで得られる効果は大きいものの、ペットの扱い方で大きな失敗を生む可能性もあるという注意点について、広告業界で長年の勤務経験がある作家のクレア・プーリー氏が指摘しています。
Kill the Pet, Kill the Book’s Rating: The Perils of Writing Dogs in Fiction ‹ Literary Hub
「ピーナッツ」に登場するスヌーピーや、「名犬ラッシー」で主人を探すラッシーなど、印象に強く残るフィクションの動物キャラクターは多く存在しています。愛らしいペットは、ほのぼのした作品では穏やかで幸せの象徴となり、苦境にある作品では心が張り裂けそうな共感を呼び起こします。
by Alexandra Abreu
プーリー氏はこれらのキャラクターに触れてきたことや、自身も2匹のボーダーテリアを飼っていることから、特に犬を作品に登場させることが好きとのこと。プーリー氏はフィクションで犬を描くことについて、「犬は素晴らしい文学的表現手段となりえます。静かなひとときに主人公が犬に語る言葉から、主人公の考えや感情について多くのことを知ることができます。フィクションでも、現実の生活と同様に、人が犬を扱う方法からその人について多くのことがわかります」と述べています。
一方で、フィクションにペットを登場させてどのように扱うかについては、「非常に慎重になる必要があります」とプーリー氏は指摘しています。プーリー氏はデビュー作である「The Authenticity Project」という作品で、雑種の老犬キースを登場させました。キースは主要人物の一人に引き取られましたが、最終的には人の手を離れて再び孤独な捨て犬となってしまいます。
「The Authenticity Project」はニューヨークタイムズが選ぶベストセラーになり、29の言語に翻訳されています。そのため、出版から1年の間に、「キースはその後幸せになれたのか?」などと問いかけるメールやメッセージが世界中から100件ほどプーリー氏のもとに届いたそうです。キースは架空のペットなため、物語で描かれたことがすべてです。しかし、プーリー氏はキースを孤独にしたまま物語を終えたことが「間違いだった」と考え、キースがどのようにしてその後引き取られて幸せに過ごしたのかについて、問い合わせをくれた読者全員に返信したとのこと。さらに、ペーパーバック版が出版される際には、物語後のキースに起こった事を説明する段落を追加しています。
プーリー氏は何人かの読者とやりとりして、物語でペットを扱うためには最大限注意しないといけないと気付いたそうです。物語上で人間が劇的に、あるいは残忍に殺害されたとしても、読者は物語の出来事として捉えます。しかし、ペットが死んでしまう物語は、絶対に許せないと感じる読者が少なくありません。プーリー氏の作家仲間であるベス・モーリー氏は「The Love Story of Missy Carmichael」という作品で、ペットの犬との悲しい別れを描いた結果、出版から4年たっても犬の死について激怒した読者からメッセージが送られてくると話しています。
プーリー氏がこうした読者の感覚を「ペットが無実の当事者であるため」だと指摘しています。人間と違って複雑な対人関係を持たないペットは、読者が強い絆を感じるように促されるにもかかわらず、読者の気持ちを左右するための「感情的な犠牲」として一方的な被害者になってしまうとプーリー氏は述べています。敏感な読者だと、主要人物の相棒としてペットが出てきた時点で、「このペットが死んでしまうのではないか」と不安に思いながら読むストレスも感じることもあるそうです。
ペットを物語の中でつらい目に合わせたり、殺してしまうような展開は、作品の評価や売上にも影響を及ぼします。ニッキー・スミス氏の「Look What you Made me Do」という作品は、「相棒の犬が死んでしまうシーンまでは、この本が好きでした。5つ星の評価がこんなにもすぐに下がるものなのか」というコメントとともに、「星1」の評価がつけられています。
プーリー氏は「すべての著者への私の強いアドバイスは、毛皮で覆われた友人を殺す前によく考え、もし殺すことに決めたら、準備をしておくことです。読者への私のアドバイスは、本、映画、テレビで犬や動物が死ぬ可能性を心配しているなら、物語に犬の死が含まれるかチェックできるウェブサイト『doesthedogdie.com』を参照してください」とアドバイスしています。