本物の「専門家」と受け売りの知識を披露するだけの「模倣者」を区別する方法とは?
現代社会を取り巻く環境はますます複雑になっており、もはや個人で生活や社会に関するあらゆる専門的な情報を網羅することは不可能です。そのため、信頼できる専門家が発信する情報を適切に取り入れることが重要ですが、中には専門家をかたって注目を集めることで利益を得る「模倣者」もいます。本物の専門家と模倣者を区別する方法について、元諜報機関勤務でブロガーのシェーン・パリッシュ氏が、自身の著書「Clear Thinking: Turning Ordinary Moments into Extraordinary Results(クリアな思考:平凡な瞬間を非凡な結果に変える方法)」から抜粋して解説しています。
https://fs.blog/experts-vs-imitators/
流行している感染症や政府の経済政策などこの世のありとあらゆる事柄について、インターネットやテレビなどで「専門家」を名乗る人物が登場します。それと同時に、自分を専門家に見せかけてそれとなく世論を都合のいい方向に誘導したり、注目を集めて自身のブランディングを高めたり、商品や商材を購入させて利益を得たりする「模倣者」も登場するため、信頼性の低い情報に踊らされないためには専門家と模倣者を見分けるスキルが必要です。
パリッシュ氏は、専門家と模倣者の違いについて以下のように解説しています。
◆1:模倣者は深いレベルの質問に答えられない
専門家が持っている知識の中には、書籍やウェブサイトで見かけて習得したものだけではなく、自ら真剣に問題に取り組むことで「獲得」したものが含まれます。専門家は知識を獲得するために苦労することで、特定の事柄について深い理解を得ることができますが、すでに存在している知識を覚えただけの模倣者は、問題について浅い理解にとどまっている場合が多いとのこと。
そのためパリッシュ氏は、「問題の詳細や第一原則、あるいは非標準的なケースについて尋ねると、模倣者からは適切な答えが得られません」とアドバイスしています。
◆2:模倣者は語彙(ごい)を素人のレベルに適応させることができない
模倣者は特定の事柄についての知識を人々に伝える際、自分が覚えた専門的な語彙だけで説明しがちです。これは、問題についての理解が浅く、専門用語の背後にあるアイデアの本質を理解していないためだとパリッシュ氏は指摘。一方で専門家は、専門用語の背景についてしっかり理解しているため、聴衆のレベルに合わせた言葉や言い回しで問題の本質について表現できるそうです。
◆3:模倣者は聞き手が理解できないとイライラする
模倣者は自分の説明でうまく聞き手が理解してくれない場合、フラストレーションを感じるとのこと。その理由についてパリッシュ氏は、専門的な見栄えを気にしすぎた結果であると指摘しています。聞き手が問題についてうまく理解できない場合、話し手はより突っ込んだ説明をする必要に迫られますが、模倣者は問題の本質を捉えていないため、突っ込んだ説明をすると専門的な見栄えを維持できなくなる可能性があるとのこと。
一方、本当の専門家は問題の本質について理解しているため、たとえ聞き手がうまく理解できなくても、専門知識を分かち合おうとすることに興奮を覚えています。そのため、聞き手が問題を理解できない状況にフラストレーションを感じることはないとパリッシュ氏は主張しました。
◆4:専門家は自らの失敗についてすべて教えてくれる
自らも専門知識の獲得に苦労したことがある専門家は、何らかの失敗が学習プロセスにおいて必要なことだったと受け入れています。そのため、誰かに問題について説明したり質問を受けたりした際、自分がどのような失敗を犯したのかについても教えてくれます。一方で専門家をかたる模倣者は、自らの完璧なイメージが損なわれることを恐れているため、「失敗したことがある」と認める可能性が低くなるとのことです。
◆5:模倣者は専門性の限界を知らない
ほとんどの分野では、たとえ専門家であっても「わかること」と「まだわからないこと」、あるいは「知りようがないこと」が存在します。専門家は自分の知識に限界があることを理解しているため、「これ以上はわからない」という事柄についてははっきり伝えることができます。
しかし、知識を覚えただけの模倣者は、「まだわからないこと」や「知りようがないこと」に踏み入っても理解できません。そのため、専門家であれば「その点についてはまだわからない」と認めるような不確かなことについても、模倣者は適当な知識で断言してしまいがちだとパリッシュ氏は指摘しました。
あるテーマについての情報を得る際、ほとんどの人々はオリジナルの研究論文を読んだり専門家に話を聞いたりするのではなく、流行した記事や動画を見ています。しかし、人々が目にする記事や動画は専門家が直接発信したものではなく、アイデアを明確かつ印象的に伝える能力に優れた「popularizer(普及者)」が発信したケースがほとんどです。
パリッシュ氏は、「本当の専門家を探す時には、『本当の専門知識を持っている人は、そのテーマを流行させた人ではないことが多い』という点を心に留めておいてください」とアドバイスしました。