「インバウンドには偏りがあり、外国人がお金を落としているのは7割が東京や大阪、京都で、あとは福岡や北海道、沖縄などです。それ以外の土地にはほとんどお金が落ちていません。

 AIやITといった社会インフラを国際基準まで引き上げ、外国人観光客を分散させることが必要です。しかし、地方はまだノウハウが蓄積できていません。人材もなく、どう誘致したらいいかもわからないという声も聞きます。

 まずはSNSで発信したり、グーグルマップに情報を埋め込むなど、地道に取り組んでいけば徐々に変わっていくはずです」

 オーバーツーリズムが解消されるのはまだ先のようだ。

オーバーツーリズム10大スポット

・蔵王
冬に樹氷を求めて多くの人が訪れる。駅からのバスは満員で乗車できず、さらにロープウェイも2〜3時間待ちになることもあるとか

・浅草
平日の日中でも仲見世通りが大混雑。地元民から愛されていたホッピー通りも”インバウンド値上げ”が横行。庶民の街ではなくなりつつある

・箱根
休日には交通渋滞、公共交通の混雑が発生し、地元住民の生活に支障をきたしている。現在、宿泊税導入や入湯税引き上げを検討中

・鎌倉
江ノ電は乗車するまで1時間以上かかってしまうことも。『スラムダンク』の聖地は踏切周辺で外国人観光客らの迷惑行為が相次ぐ

・富士山
弾丸登山客の問題行動やゴミ問題などがかねてから指摘されている。登山客だけでなく、富士山撮影スポットでも迷惑行為が横行している

・白川郷
合掌造り集落が人気だが、駐車場のルールが守られず、周辺渋滞が発生して近隣住民の生活への支障が出ていることから、完全予約制に変更

・奈良公園
海外観光客がお土産の紙袋やポリ袋をシカに食べさせているケースも。公園周辺の渋滞や駐車場不足など問題も多発している

・宮島
島民にとって足代わりとなっているフェリーは、GW期には1時間待ちとなる。高速船のほうも地元民はチケットの事前購入を強いられている

・熊野古道
’04年に世界遺産登録されてから海外観光客が急増。近年ではトイレに関するクレームも増加し、自治体は対応に追われている

・阿蘇
ユネスコ世界ジオパークに認定された鍋ヶ滝公演は完全予約制に。気軽に滝の裏を満喫できたこれまでと違い、旅行計画が必須となった

【宮本 大氏】
インバウンドアナリスト。訪日観光客向け体験ツアーの企画運営などを行うJapan Localized代表。インバウンド市場のリサーチ業務に従事している。

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社

―[[観光パニック日本]の真実]―