「やりすぎ」「ヤバい」は褒め言葉 ドンキの「偏愛めし」が愛される理由とは
「みんなの75点より、誰かの120点」をコンセプトに、ディスカウント店『ドン・キホーテ』が世に放つ「偏愛めし」。食への強い“偏愛”を持つ開発担当者による同店ならではの尖りに尖ったお弁当・お総菜のシリーズだ。振り切った楽しさと美味しさがある「偏愛めし」を実食した感想をお知らせする。
全国の系列358店舗で展開!ますますトンガる「偏愛めし」
2023年11月の発売以来、SNSなどでも話題になっているドン・キホーテ(以下、ドンキ)の「偏愛めし」。「やりすぎ」「ヤバい」「イカレてる」なんて言葉が並ぶが、ドンキにとっては褒め言葉。つい気になって手に取った方、結構いるんじゃないだろうか。うっかり食べたら、ガッツリハマるかまったく刺さらないか。私・ライター市村は、まんまと前者だ。もちろん、愛の深さは商品によるけれども。
新発売の際にも記事(https://otonano-shumatsu.com/articles/337132)にした。この記事で紹介している「【R指定?】葉わさびポテトサラダ」は、日本食糧品新聞社主催の「第15回 惣菜・べんとうグランプリ 2024」で、なんと金賞を受賞。実は「西京味噌で米を食い続けるための金目鯛おにぎり」(214円)、「あんだく溺れ天津飯」(430円)なども入賞を果たしている。食のスペシャリストや専門家などからのお墨付きということだ。
こうした強い商品がありつつも、個性が突き抜けているだけに飽きられないようにと、毎月新商品を発売している。約半年が経ち、現在はどんなラインナップが並ぶかを見ていこう。
初のサンドイッチシリーズは3種類
2024年4月に発売されたのが、シリーズ初のサンドイッチだ。
先にあげたポテサラを挟んだ「【R指定?】葉わさびポテトサラダサンド」(322円)は、スタッフの声から商品化した一品。このポテサラをあまりに気に入ったとあるスタッフが、実際にやっていた食べ方という自信作。
ポテサラにワサビがしっっっかりときいているからこそ、際立つのがパンの甘さとジャガイモのホクホクさ。
と言いつつ、そのツ〜ンとした刺激に思わず涙が出てしまった。久々に食べたからか、こんなに辛かったかしら?と驚いた。でも好きだ。我が夫は本当に辛かったらしく、泣きながら食べていたけれど(笑)。
「半熟ゆで卵まるごと2.5個サンド」(430円)もいい! 口の中でモサモサしないようにと入れたのは半熟卵。それが2.5個分もみっちり入っている。
マヨネーズと卵黄ソースを加えることにより、とろとろ感とタマゴ感が前面に出てくる。そんな中で、脇役に回りかねないパンが、これらの具材をうまくまとめている。
現在発売中の「おとなの週末」2024年6月号では、「町パン」の特集をおこなっている。その中で紹介している一つがタマゴフィリングがたっぷりと入ったしっとり食感のタマゴサンド。もしかしたら、このサンドイッチのインパクトがなんとなく頭の中にあったのかもしれないなぁと今になっては思ったり。
中でも私が気に入って、周りにお薦めしまくっているのが「マッスルチキンサンド」(538円)だ。これでもかという量の鶏胸肉がサンドされている。どれくらいたっぷりかというと、裏面の原材料には蒸し鶏が最初に書いてあるほど。
タンパク質量は驚異の34gとなっている。よく売られているプロテインバーなどを見ると25g程度なので、どれだけ多いかがわかるだろう。
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を見ると、12歳以上1日あたりのタンパク質食事摂取基準の推奨量は、18〜64歳の男性で65g、18歳以上の女性で50g。いずれにしてもこれで1日分のタンパク質が半分以上摂ることができる。
商品開発に際して、ボディービル大会に出場している、現役のトレーニーと一緒に作ったそう。求められるがまま、動物性のホエイと植物性のソイの2種類のプロテインを味のバランスギリギリまで入れたのだとか。
開発担当者は「『味は二の次でいいから、とにかくプロテインの量を入れてほしい』というオーダーがあった」と苦笑いしていた。
しっとりとした鶏胸肉が青じそノンオイルドレッシングで味付けされていて、これからの季節、特にピッタリな爽やかな美味しさだと思う。
ということで、サンドイッチ3種類が個人的にはヒットだった。
やりすぎだと笑っちゃう3品はこれだ!
店頭で見かけていたものの、あまりのインパクトに思わずひるんでしまっていたのがこの2つのお弁当だ。
まずは「最香チキン弁当」は、チキンへの味付け、ソース、トッピングなどニンニクを丸々1個分使用。ニンニクのさまざまな食べ方を楽しめる、重度のニンニクラバーも納得せざるを得ないと思う一品。
グリルしたチキンにもすりおろしのニンニクが塗られ、上にはスライスニンニクがどっさりと乗っている。かなり臭くなるから、食べた後は人に会いづらいし、蓋を開けただけで強烈な臭いがするので部屋の換気も必要だ。けれど、体にパワーがみなぎるような感覚になるし、満足感があった。
「ころもが主役のチキンカツ弁当」(538円)は、ソースが染みたジューシーな衣を主役にしている。カロリーが高いものって、その背徳感を含めて最高なご馳走だと思う。
レモン果汁を入れてさっぱりさせたタルタルソースとからしソースで味の変化を加えるという、小技を効かせている。ただ、アラフィフの私に完食はちょっと難しいかな。
やりすぎの並びで紹介させていただきたいのは、「激辛デビルペンネ」(214円)だ。大量の輪切り唐辛子を盛り付けたペンネアラビアータは、ホワイトチーズソースで甘さやコクをプラスしており、単に辛いだけでないのも魅力。
これまでも、ご飯にコチュジャンを混ぜ込んだ「赤いビビンバおにぎり」(322円)、花椒やラー油などを利かせた「覚醒シビれカレー」(486円)などを出してきた「偏愛めし」。しかし、激辛党から「これじゃ辛いうちに入らない」などと酷評されてきたと開発担当者は唇を噛む。
しかし、このペンネアラビアータはしっかりと辛くて、辛いもの好きの私でも満足できる美味しさだった。ちなみに開発担当者は辛すぎて食べられないんだとか。
これらこそ、とことん振り切った突き抜け方をしている「偏愛めし」シリーズの素晴らしさだとうれしくなってしまう商品たちだ。
尖っているこそのウィークポイントがあった
ただしこの「偏愛めし」シリーズにおいて、ちょっと困っていることがある。コンセプト通り、万人受けを狙った商品では無いので仕方ないとは思うが、エリアや店舗によって、取り扱いのない商品が結構あるのだ。
私の住居エリアにあるドンキには、常温のお弁当とおにぎりはあるが、冷蔵コーナーの惣菜類は見当たらなくなってしまった。だからサンドイッチも無い。
だからこそ、時間のある時には通りがかりのドンキを覗くのが恒例となってしまった。先日たまたま寄った後楽園店には、時間帯等もあると思うが、「偏愛めし」のラインナップが意外と揃っておりテンションが上がった。
皆さんも機会があれば、お近くや通りがかりの店舗などをふらりと覗いて見ていただけたらうれしい。
他のお弁当類に比べるとちょっと割高に感じてしまうかもしれないが、コンビニと比べると十分、重量や個性では負けていないし、コスパも悪くないと思う。
ドンキにはいつまでも「やりすぎ」、「ヤバい」、「イカレてる」なんて、言われ続ける美味を生み出していってほしい。
文・写真/市村幸妙
いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。