コロッケパンには総菜の存在感に負けない“しとむちぃ”(ムチムチ感)を、繊細なクリームをはさんだタイプにはあまく柔らかいクリームが口の中で長く味わえるように“しともちぃ”(モチモチ感)を採用するなど、具材によって最適な生地を使い分けています。

 このように、1つのシリーズで楽しい世界を作りあげる開発スタンスが、パンにおいてヒットを生み出す条件とも言えるでしょう。

 ごちそう感のあるコッペ商品はセブンイレブンでも発見することができます。「愛媛県産せとか&ホイップ」(203円)は旬の柑橘を使用したふんわり食感のコッペパン。

 コンビニの王者セブンのパンは十分においしいものの、食べ心地を期待・想像する楽しさまで提案していないスタンスは、ファミマとのちがいと言えるでしょう。もちろんどちらが好きかは人それぞれです。

◆選ばれる決め手は、想像できるわかりやすさ

 ファミマのパンが秀逸なのは、シンプルながらも個性的な商品設計(例えばバターを使ったクロワッサンの中で一つだけ新しい要素を加える)でありながら、食べる前においしい想像がしやすい点にあります。

 あまりに長いネーミングはときとして成功することもありますが、どんな味がするのかわからなくなってしまうことも。

 子どもからお年寄りまで、作り手の想いや楽しさがきちんと伝わるファミマルベーカリー。今後も注目していきたいところです!

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12