高卒アルバイトの22歳女性が年商20億の会社社長に大抜擢。古参社員も全員納得の当たり前すぎる「選ばれたワケ」とは

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CoCo壱番屋などのフランチャイズを都内を中心に27店舗展開し、400名以上のスタッフを抱える株式会社スカイスクレイパーの新社長に抜擢されたのは、なんと22歳の女性アルバイト。15歳から接客しかしてこなかったアルバイトスタッフがなぜ社長に選ばれたのか? なぜ古参の社員たちはこの人選を受け入れることができたのか? そこには外食チェーンが目指すべき王道があった。諸沢莉乃新社長と広報担当者に話を聞いた。

【画像】社長のオファーをもらったのは20歳のとき…JK時代の諸見社長

フリーターから22歳で社長に成り上がり!

――5月1日に就任され、お話をうかがう本日は社長2日目です。実感はどうですか?

諸沢莉乃社長(以下、諸沢) 通勤電車から「気は抜けない」と緊張しています。ただ2年前に社長の打診を受けてから準備はしてきましたし、バイトや社員といった分け隔てがあまりない会社なので、そこまで大きなギャップはありません。

今日は社長風の格好で来ましたが、いつもは7年前にバイト代を貯めて買ったリュックを背負っていつでもお店で働ける格好でいます。
 

――社長をオファーされるまでの経緯を教えてください。

諸沢 高校1年生のときにCoCo壱番屋アルバイトに応募して、自宅の近所だった弊社の店舗に採用されたのが最初です。そこから接客の仕事にすっかりハマって部室のようにお店に入り浸るようになり、高校2年生のときにはCoCo壱番屋チェーンの全国接客コンテストに出場しました。

高校卒業後もアルバイトスタッフを続け、20歳のときに、全国の店舗から選ばれる接客スペシャリストに認定されました。当時はまだ全国で15名だけで、私は最年少で16人目でした。そのお祝いの席で創業社長で現会長の西牧から社長のオファーをもらったんです。

――お小遣い稼ぎのアルバイトにそこまでハマれたのはなぜだったのでしょうか。

諸沢 アルバイトは、私にとっての部活、青春でしたね。放課後17時~21時の勤務でしたが、毎日シフトに入っていました。入っていなくても休憩室に遊びに行ったり、カレーの匂いがする仲間たちと近くのイオンに遊びに行ったりしていました。オフの日に集まってディズニーも行ったなあ。

通っていた高校は風紀が乱れているというか、ルーズな雰囲気でちょっと肌に合わなかったんですが、仕事では気持ちよく挨拶してよく働くと評価してもらえるので、とにかく楽しかったです。思えば、自分が大切にしたいことと、弊社が大切にしていることが一致していて、気がつくと同じ感覚を持った仲間ができていたんですね。

天職は身近にあった

――高校卒業後、バイト仲間が辞めて行く中で、なぜ諸沢さんはお店に残ったのですか?

諸沢 西牧への恩ですかね。弊社では自社アプリで日報を書いて、コメントし合うことでコミュニケーションを図っていますが、社長だった西牧も毎日読んでくれていて、心配なときはお店まで話に来てくれたんです。

――高校卒業後に社員にはならなかったのですか?

諸沢 私には誰かのために動きたいという目標があって、それでボランティアを始めたんです。なのでアルバイトのままでした。

ボランティアでは募金活動などに参加しましたが、人との関わり方が間接的で、やりたかったことと一致しませんでした。私は相手が喜んでいる顔が直接見たい、私と出会ったことで人が変わる瞬間を見たいんだなと気がついて。

ボランティアには求めていたものがなく、進学をしなかったことを後悔して落ち込んでいたとき、バイトの日報から私の変化を感じ取って西牧が話を聞きに来てくれたんです。それで「身近な人のために働くのも素敵なんじゃない、そのためにお店を使っていいよ」と提案してくれて、こんなに近くにやりたいことがあったんだなとスッキリしました。

私は10代のころに具体的な夢がなくて、それがコンプレックスだったのですが、職業だけではなく「どうありたいか」も夢なんじゃないかと気がついたんです。ちなみに、西牧の夢は「モテたい」だったそうで(笑)。実際それで人を助けているから、それはそれでいいのかなと思って。

他の人にできない、社長の仕事ができる人

――会長との密なコミュニケーションが原体験としてあるのですね。やはり“お気に入り”だったんでしょうか?

諸沢 確かに私だけかどうかはともかく、お気に入りの子を強くフォローしているのでは? と思っていました。でも社長へのオファーを受けて西牧に同行するようになってわかりましたが、社員全員に同じようにフォローしていたんです。

日報のフォローはもちろん、店舗を回って全員に必ず「困ったことある?」と聞いていて。特に、元気そうで自分からは悩みを言ってこなさそうなスタッフにも聞くということに驚きました。「窓口を広げておかないと言ってこられない人もいるんだ」と。

商品で差を出せないフランチャイズでは、人材や店舗運営で差を出さなければならないので、こういう細やかなフォローが社長として大きな仕事なのだなとわかりました。私も社員全員と関わりがある社長でいたいと思っています。

実は社長就任前に店長経験をするために、3ヶ月間弊社で一番忙しい店舗で店長をさせてもらったんです。あまりにつらくて、泣きながら調理してヘトヘトで帰って「自分が一番できないのに店長ってなに?」と考える毎日でした。その経験があるから、もっとスタッフの気持ちに気がつけるようになりたいです。

一番身近な母を喜ばせることができた

――ところで、古参の社員を抜いての社長への抜擢、社内の反応はどうでしたか?

諸沢 はい、もっと反対意見が上がってくると思いました。でも今まで特に感じたことはなくて、むしろなにもできない私をサポートしてもらっています。

広報 みんな納得しました。西牧がやってきた人材フォローをできる人は他にいませんでした。「接客スペシャリスト」もみんな取っていないわけですしね。

信用できる人に社長の仕事を教えるほうが、他の会社からベテランを引き抜いてくるよりも、早くて安心だと西牧が言っていて、それには私も共感しました。

諸沢はとにかくマメなんです。400人以上いる社員の日報のコメントを全部読み、コメントもしています。

諸沢 照れますね(笑)。私は他の人と違うと思ったことはなくて、ただ楽しいことを自由にやらせてもらってうれしいだけなんですよね。

――これからの目標はいかがですか。

諸沢 弊社の理念に共感して働いてきたので、同じ思いで働いてくれるスタッフを増やし、店舗を増やしていきます。具体的なところでは、CoCo壱番屋フランチャイズの店舗数では弊社が3位なので今後10年で1位を目指しています。

――諸沢さんご自身の目標はありますか?

諸沢 夢がなかったと言いましたが、社長就任を伝えたときに母が「莉乃は小さいとき『お母さんに毎日ハンバーグと唐揚げを毎日食べさせる社長になる』って言ってたよ」と言っていました。一応メニューにはあるので叶えたことになりますね(笑)。

でも私にとっては社長がゴールなのではなく、より多くの人を喜ばせるための道の途中なんです。一番身近な母を喜ばせることもできたので、さらに多くの人のために汗をかくことを追求していきたいです!


取材・文/宿無の翁 写真/集英社オンライン編集部