“パジェロ”超えのミツビシ新型「本格4WD」誕生! ランエボ+パジェロな本格オフロードマシン! 新型「トライトン」の実力とは
パジェロ由来の本格オフロード4WD
2026年に三菱の本格四輪駆動車「パジェロ」が復活するという報道が出ています。その背景には先日三菱からデビューしたピックアップトラック新型「トライトン」の存在が大きいようです。
このトライトンには「パジェロ」のDNAや当時のパリ=ダカールラリー(以下パリダカ)などの競技で得た知見、そして、4ドアスポーツカー「ランサーエボリューション」で培った四駆技術が搭載されているからです。
では、具体的にそれらはトライトンにどう生かされているのでしょうか。
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そもそもトライトンの開発責任者である三菱商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの増田 義樹さんは、以前実験部に在籍していた時代に2代目パジェロなどの開発にも携わっていたそうです。
増田さんいわく、「四駆性能、堅牢性、耐久信頼性といったパジェロDNAを継承している代表格がトライトン」と明言したうえで、「パジェロ由来の本格オフロード4WDです」とトライトンを紹介しました。
また、「長年にわたるラリーへの参戦や、世界中の過酷な環境下でのテストによって培われた三菱ならではの圧倒的な走行性能を有しています」とも。
さらに増田さんはパジェロのDNAについて、「パジェロはオールラウンダーというキーワードで開発していましたから、それを崩すことはできないんです。これが三菱らしさだともいえますので、過酷な道、オフロードの走破性は確実に守った上でプラスアルファを解決する。この考え方をトライトンにも当てはめています」と説明してくれました。
少し具体的な例を挙げましょう。それは「スーパーセレクト4WD II」です。
スーパーセレクト4WD IIは、高い悪路走破性とオンロードにおける快適性を両立する三菱自動車独自の4WDシステムで、道路状況に合わせて4つの走行モードをダイヤルを回すだけで選択できる、パジェロに採用されたデバイスです。
二駆(2H)、四駆(4H)、四駆のセンターデフロック(4HLc)、四駆のローレンジでデフロック(4LLc)をダイヤルで切り替えて使います。このうち、センターデフロックをオフにできる4Hは三菱独自の技術となっているのです。
通常の四駆の場合は、センターデフはロック状態になりますから、4WD時に乾燥舗装路を走行すると、ブレーキをかけたようにタイヤを止める力が働く「タイトコーナーブレーキング現象」が発生し、クルマの負荷が大きくかかり、交差点を曲がるのにも苦労します。
しかしこのシステムではセンターデフロックはフリーになっていますので、この減少が発生せず、そのまま四駆でどこでも走れるといったところが特徴です。
さらに開発シーンにおいてもパジェロの想いは引き継がれています。トライトンはピックアップトラックでありながら、パジェロと同じ“四駆のオフローダー”として開発基準を設けられました。
岡崎市(愛知県)の開発拠点に設置されたオフロードの走破性を確かめるコースにおいて、四駆のオフローダーは「これぐらいの過酷な走行に耐えなさい」という基準が指定されており、その試験内容はパリダカ等で培った経験をもとに決められているのです。
トライトンはそれをクリアしています。同時に4WDの制御によって、悪路・オンロードの両方を、いかにスムーズに道を走れるかというのが四駆のエンジニアの腕の見せ所。
これもパジェロで作られた基準をクリアしていると実験部のエンジニアは強調していました。
そのほかにも、新開発のラダーフレームやサスペンションの考え方も、むやみに剛性を上げるだけでなく、しなやかさや力の“逃げ”部分も含めて開発されているため、明らかにトラックではなくSUV的な視点に立った仕上がりになっています。
ですから、実際に乗ってみてもむやみにごつごつした不快さはみじんもなく、非常に乗り心地のいいクルマに仕上がっていました。
ランサーからも引き継ぐ走りの良さ
そのほかにも三菱といえばランサーエボリューションを思い浮かべる人も多いでしょう。そこから派生した技術もトライトンには搭載されています。
そのひとつが「アクティブヨーコントロール(AYC)」です。「もう少し曲がってほしい時にこの技術がサポートします」と増田さんは説明します。
具体的には、常にヨーモーメント(クルマを上から見たときに左右に曲げる力)をクルマがモニタリングしており、この情報を元に、ドライバーが操作するステアリングの舵角スピード、タイヤの切れ角、そして車速などから本来欲しい理想的なヨーモーメントを自動的にクルマが計算。
実際のヨーモーメントと、理想的なヨーモーメントとの乖離が大きくなった時にイン側のフロントブレーキを少し作動させることで、曲がりやすくするものなのです。
ただし、ランサーエボリューションの場合はトルクベクタリングによってトルクを積極的に左右に配分していましたが、トライトンではこちらは搭載されませんでした。
もうひとつ、三菱ならではのネーミングも付けられました。「GSR」というグレード名です。
初代「ランサー」や「コルトギャランGTO」で初めて採用されたもので、三菱の高性能グレードにこぞってつけられました。
「往年のこのグレード名を聞くと当時の思い出がパーッと蘇るでしょう。トライトンはそういう歴史も繋いでいってもいるのです」と増田さんはコメントしていました。
ある開発エンジニアの一人は、トライトンを開発するにあたりパジェロを開発してきたレジェンドエンジニアたちから様々な話を聞いたそうです。
フレームを持つクルマの場合、モデルチェンジなどの期間が長いため開発スパンも当然長くなります。
そうすると、当時のエンジニアたちは部署が変わったり定年で退職したりする人たちも多く出てしまいます。
そこで立場が変わる前にたくさんの教えを請いながら、また当時の企画書を見せてもらいながら、そこに込められた開発意図や思いをスペックから読み取っていったそうです。
トライトンにもこうした開発のプロセスを受け継がせて作り上げたと語っていました。従って、見方によってはパジェロを超えたオフローダーがトライトンともいえるのです。
最後に少し夢物語を付け加えておきましょう。パジェロといって印象に残っている1台に「パジェロエボリューション」がありました。
1997年に発売されたこのクルマは、ダカールラリーにおいてT2クラスという市販車改造クラスにエントリーするマシンのベース(ホモロゲーションモデル)となるものでした。これを開発したのも増田さんなのです。
ここからは想像になりますが、増田さんの頭の中にはこのパジェロエボリューションのノウハウや歴史が入っています。つまり、いつかはトライトンエボリューションも夢ではないともいえるのです。
このように、これまでのパジェロをベースに作られたのがトライトンだということが分かります。あとはボディを乗せ換えるとパジェロの出来上がり、と簡単にはいかないとは思いますが、ベース自体はもうすでに出来ているということなのです。