雨が降ろうが晴れようが、小売業者の業績不振の理由が常に天候のせいにされていることが判明している。

インベスターズクロニクル(Investors’ Chronicle)は1月、小売企業が四半期ごとの財務報告書において天候について引用した最近の事例を23件発見した

なかには肯定的な事例もあったが、大半の企業は売上の低迷を天候不順のせいにしていた。

ドクターマーチンは「季節外れの暖かさ」で売り上げが鈍化?



たとえば1月にはブーツメーカーのドクターマーチン(Dr Martens)が、ブーツの売上不振の理由として、昨年秋の全米の気温の高さを指摘している。

同ブランドの2023年度第4四半期の売上高は、前年同期比で21%減だった。ドクターマーチンは前年も同様の理由を挙げており、2022年秋の「季節外れの暖かさ」のせいでブーツの売上が伸び悩んだとしている。

また同月には、スニーカー小売のJDスポーツ(JD Sports)が、穏やかな天候と大規模なプロモーションがホリデーシーズンの売上に打撃を与えたとして、利益警告を発表した。

ブランドに影響を与える気候変動



たしかに悪天候が小売業の業績予想の期待を台無しにすることはある。新しい服や靴を買うとき、天候は人々の意思決定に影響を与える。ファッションブランドやアパレルブランドは、春には水着を、秋にはコートを人は買い求めるだろうと予測して、季節にあわせた購買動向を計画している。そしてその購買のサイクルが、季節外れの暖かさや寒さのおかげで狂ってしまうことがあるのだ。だが通常、天候不順だけが企業の売上不振の理由ではない。時には、ほかの根本的な経営問題を責任転嫁する際の口実に利用されることもある。

とはいえ、気候変動が季節に大きな影響をもたらす状況が続けば、人々はこれまでとは異なる時期に商品を購入しようとするかもしれないので、ブランドは計画サイクルを適応させる必要があるかもしれない。

小売業者によるこうした最新の業績警告は、冬が訪れるよりずっと前からはじまっていた。たとえば昨年9月、ファッションブランドのH&Mはすでに、米国からヨーロッパにかけての季節外れの暖かい秋の天候が秋から冬にかけての売上を低迷させたと指摘していた。同社は、昨年9月の売上は前年同期比10%減になると発表している。

当時H&MのCEOを務めていたヘレナ・ヘルマーソン氏は、ロイター(Reuters)に対して、「売れ行きに遅れがみられるのは、より厚手の秋物商品であることは明らかだ。1カ月で大きな決断が出せないことはわかっている」と語った。

昨年9月から11月にかけて、H&Mの売上高は2022年の同時期と比べて4%減少している。

天候が売上を後押しすることも



グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターであるニール・サンダース氏は、一般的に気候は特定の商品需要に対して非常に直接的な影響を与えると米モダンリテールに語った。「暖かかったり寒かったりという天候は、人々が決まった種類の衣類をどれだけ必要とするかに影響する。したがって、(気候が)季節的な基準から大きく逸脱している場合、小売業者がその点を指摘するのは妥当である」。

しかしサンダース氏は、天候を「言い訳にするのは非常に簡単」であり、小売業者のそうした訴えは適切に検討されなければならないとも付け加えている。「時には、誤った投資判断やそのほかの不手際を隠すために利用されることもある」。

H&Mの場合、天候による売上不振の正当化は、競合他社であるZARA(ザラ)の業績と矛盾する。昨年8月1日から9月11日のあいだ、ZARAを所有するインディテックス(Inditex)の売上高は前年同時期の14%増を記録した。同様にデニムメーカーのトゥルーレリジョン(True Religion)にとって、2023年の夏が長引いたことがむしろ有利に働き、9月末まで半袖のトップスやショートパンツが売れ続けた。

天候はまた、顧客が買い物に行く回数を減らす要因として小売業者がよく挙げている。BBCによると、2023年3月は「1836年以来6番目に雨の多い3月」だった。その結果、英国の小売企業の多くは、その月に店舗を訪れた買い物客が減少したと報告している。

同じような動きが、先月の「ずぶ濡れの2月(soggy February)」にも見られている。店舗、パブ、レストランへの客足は減少した。しかし雨天のおかげで人々は家でくつろいでいたため、テイクアウトやファストフード業界を後押しした。

その結果、食品と非食品消費を合わせた2月の英国小売売上高は前月比1.1%増となった。これは1月の前月比1.2%増、12月の前月比1.7%増を若干下回っている。

悪天候に適応することが求められる小売企業



冬が終わりに近づくにつれ、小売業者は顧客を呼び込むために気温上昇に期待している。だが2月末に春の兆しが見えはじめたにもかかわらず、西海岸の猛吹雪がほかの地域の好天を台無しにし、米国全体では依然として客足は低調だった。

TDコーウェン(TD Cowen)によると、2月第4週の米国小売トラフィックは前年比0.9%増と、前週の1.6%増から減少した。TDコーウェンのマネージングディレクター兼シニアエクイティリサーチアナリストのオリバー・チェン氏は、この期待外れの数字を強調した指摘のなかで、3月の暖かく雨の多いスタートが引き続き店舗への客足に悪影響を及ぼす可能性があると話す。米国西部では雪と風、東部ではにわか雨が続き、店舗への客足は伸び悩むだろう。しかしチェン氏は、「米国中部と東部の暖かい春の気温は、アパレルのような春商品には好都合だろう」と語った。

気候が小売企業の活動にさらなる影響を与えることが予想されるなか、企業はたとえ悪天候であっても顧客を引き付けるために、マーチャンダイジングやオペレーションを適応させることが求められている。

食料品や衣料品の支出を見れば明らかなように、特定のカテゴリーは天気予報によって異なる影響を受ける。だが大自然に罪を着せている小売業者は、必ずしも具体的な証拠を提示しているわけではない。

「天候を言い訳にするならば具体的でなければならないと思う」とサンダース氏は言う。「一般的に、客足が減ったとか、全般的な低迷を天候のせいにするのは、しばしば説得力に欠ける場合が多い」。

[原文:Retailers are increasingly blaming bad weather for weak sales]

Gabriela Barkho(翻訳:Maya Kishida、編集:都築成果)
Illustration by Ivy Liu