コロナ禍を経て、観客の熱狂が再び戻ってきたスポーツの舞台。多くのスタジアム、アリーナに、熱いファンたちが集っています。

 

そのスポーツ観戦の文化に、新たな潮流を生み出そうとしている企業が、パナソニックです。同社は、チームとファンをつなぐライブメディアプラットフォーム「CHEERPHONE」(以下、チアホン)を開発。スタジアム限定のラジオを“聴きながら”スポーツを観るという、新たな文化を醸成する挑戦をしています。

 

スタジアムで「聴きながら観る」という新たな文化

テレビや動画配信サービスを通してのスポーツ観戦には、実況や解説の存在が不可欠。ときには、彼らが放った一言が、名実況・名解説として、後々まで語り継がれることもあります。家でのスポーツ観戦は「聴きながら観る」のが当たり前なのです。一方、スタジアムなどの現地での観戦は、独特の興奮がある一方で、実況や解説がありません。

 

チアホンは、現地観戦でも「聴きながら観る」の選択肢を与えるサービスです。これは、スマホでQRコードを読み込むだけで、ラジオ配信が聞けるというもの。アプリのインストールをせずともブラウザから聴けるうえ、遅延が約0.3秒と少ないため現地観戦をしながら聴いてもタイムラグを感じることなく楽しめます。チアホンによる配信を聴くのに必要なのは、スマホとネット回線だけです。

↑チアホンの配信画面。中央にある「いいねボタン」はユーザーの声を取り入れて実装したもので、何度でも押すことができます

 

チアホンには、QRコードを読み込んだ人なら誰でも聴ける形式のほか、GPS情報によりスタジアム内にいることが確認できた人に限って配信をするなど、視聴者を限定できる機能がついています。現地でしか聴けない、スタジアム観戦に付加価値を加える放送が可能です。

 

また、配信者が複数の場所に散らばっていても問題ないという特性があります。放送席からの配信に、グラウンド付近からのリポートを時折混ぜるといった形式にも対応します。観戦席からでは見えない緻密なリポート、チーム関係者によるディープな解説や、観戦初心者向けの放送など、多様なコンテンツが放送できます。

 

野球やサッカーなどの現場に導入。チーム関係者やファンから好評を博す

チアホンは、すでにスポーツ観戦の現場に導入されています。サッカーJリーグのガンバ大阪、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスや日本ハムファイターズ、ラグビー・リーグワンのサントリーサンゴリアス、リコーブラックラムズ東京などの試合で、配信が行われています。これまでの利用事業者数は40社以上、配信回数は125件以上にのぼります。

↑ガンバ大阪では、ホーム試合でチームOBなどによる放送を実施

 

チアホンの評判は高いといい、配信を実施した会場では、チーム関係者とファンの双方から、支持を集めています。チーム側からは「試合中の配信を以前からやりたくて試したが、遅延が大きくてうまくいかなかった。チアホンならほぼタイムラグがない」「テレビでもラジオでもない新しいメディアだと思う。スポーツを見るときにはこれがないと寂しいと思えるようになるといい」といった声が寄せられているそうです。

 

チアホンを利用した観客へのアンケートでは、90%の人が「スポーツ観戦がより楽しくなった」と回答しており、聴きながら観る楽しみへの好感度が表れています。複数シーズンにわたって導入しているチームでは、リピート来場者数が30%増えたというデータも出ているといいます。

 

またチアホンの登場により、いままでファンにオープンにされてこなかったコンテンツにも光が当てられるようになりました。自転車のジャパンサイクルリーグでは、コースを走る選手やチーム間の無線をチアホンで配信。白熱のレースに、新たな楽しみ方を加えました。

↑チアホンは、クラウドを介して配信を行うので、海外での配信にも対応。すでにタイで利用された事例があります

 

いまでも現地でのスポーツ観戦には、応援する、静かにじっくり観るなど、色々な楽しみ方があります。これからはそれらに加えて「聴きながら観る」というのも、新たな形態として定着するかもしれません。