80代夫婦のお金の使い方とは? 紹介するのは、スパイス料理研究家の吉山武子さん(81歳)のケースです。現在、福岡県久留米市でスパイス屋を営みながら、85歳になる夫の介護も。使えるお金は決して多くないですが、心を豊かにするためにいつも考えていることがあるそう。詳しく聞きました。

お金の使い方は常に考えてきた

「クレジットカードは持っていますが『掛け』で買うのは好きじゃないの」と笑う吉山さん。「掛け」とは売掛、つまり「ツケ」(借金して後払い)。商売の世界で育ち、生きてきただけに「借りる」のはイヤなのです。

【写真】寄付が縁で陸前高田の子どもたちとの交流も

「基本は現金払い。商売のしくみはわかってますから、踊らされません(笑)。洋服は品質の良いもので長く着られるものを、季節の変わり目のセールで買ったりするぐらい」。運転免許も返納したので、買い物はコープの宅配が中心です。

今もっともお金がかかっているのは、夫・進夫さんの介護費用。「施設に預けてしまえば、身体的にも楽でしょう。でも、精神的には辛くなる。わがままかもしれないけれど、できるだけがんばりたいんです」。キッチンには夫婦それぞれのおくすりカレンダーを貼って投薬や通院の管理をしています。

介護生活に入って大きく減ったのは「被服費」

「この6年間、よそいきの服なんて一着も買ってません」と話す吉山さん。人前に出る機会の多かった若い頃は、月に何万もかかっていましたが、今は夫婦で1万円ほどになったという被服費。ほとんどが肌着や靴下、ご主人のパジャマが中心です。

「誰でも年を取ります。今後、家族を、自分をどう世話したいのか。何ができるかを常に考え続ける毎日です」。

儲かったら人が喜ぶことにお金を使う

商家育ちの吉山さんは「儲かったら独り占めしない」教育を受けて育ちました。初めての寄付は10歳のとき。筑後川大洪水の被災者への支援金でした。

料理教室を始めて20周年のときには、スパイスの産地・インドの子どもたちに遊具を寄贈。東日本大震災への寄付が縁で陸前高田の子どもたちとの交流も。今もそのときのご縁は続いています。

陸前高田の子どもたちの様子が伝わる、新聞記事。当時、現地の保育園に勤めていた佐々木美津子さんとは、寄付活動が終わった今も交流が続いています。

 

『ゆとりある日々を過ごしている人の素敵なお金の使い方 2024年度版』(扶桑社ムック)では、今回紹介した以外にも、自分らしいお金の使い方で幸せに暮らしている人たちを紹介。そのほか、年金のもらい方、老後の安心な住まいなど、プロのアドバイスも満載です。