小池百合子知事

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 家のポストに見慣れない白い箱――。開封すれば、笑みを浮かべる東京都の小池百合子知事(71)の写真が目に飛び込んでくる。目下、都民にポスティングされているという不思議な“プレゼント”は、いったい誰の為のモノなのか。

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【写真を見る】小池都知事から各家庭に配られた「謎のプレゼント」

 都内の全世帯約750万戸を対象に、都が今年3月までに配布完了を目指しているのが、二つの防災ハンドブックである。

 一つ目は、来るべき首都直下型地震などへの事前の備えや避難行動についての解説が掲載された「東京防災」だ。初版は2015年、舛添要一知事時代に刊行されたが、関東大震災から100年という節目を迎えた昨年9月に全面改訂。二つ目は18年初版「東京くらし防災」の改訂版である。これらが2冊セットの形で箱詰めされて、昨年11月から順次、都民に無料で配られている。

小池百合子知事

「露骨な事前運動にしか見えない」

 だが、現物を受け取った都内の50代自営業男性は、

「封を開けると、〈都民の皆様へ〉と題した小池都知事の写真付きメッセージのチラシが入っていてね。久しぶりに小池さんのご尊顔を拝した気分になりましたが、都民のために仕事しています、というアピールを感じてしまうよね」

 50代主婦はこうも言う。

「防災ブック自体は参考になったけど、小池さんのチラシは“よく読んでくださいね”といったたわいもない内容だし、わざわざ税金でカラー印刷して同封する必然性を感じませんでした。前回の舛添知事の時も同じように顔写真付きのメッセージが添えられていたけど、特に今は選挙も近いし、小池さんの露骨な事前運動にしか見えませんよ」

「強く抗議する」

 実際、2期目である小池知事の任期満了に伴う選挙の告示は6月20日、投開票は7月7日と決まった。知事選まであと4カ月となり、彼女は政治活動を活発化させているのである。

 都政担当記者によれば、

「昨年12月、前区長が公選法違反事件で辞任したため行われた江東区長選を皮切りに、先月の八王子市長選でも小池知事が推す候補が当選しています。八王子では逆風にあえぐ自公推薦候補の応援演説にサプライズで登場。地元選出で自民党都連会長を務める萩生田光一前政調会長に恩を売りました」

 さらには今月2日、岸田文雄総理や自民党の茂木敏充幹事長と会談している。

「表向きは子育て支援の話し合いだと小池知事は説明しますが、買収容疑で起訴された柿沢未途衆院議員の辞職による東京15区補選が4月に控え、国政復帰も視野に会談したとの臆測が飛び交っています」(同)

 当の小池知事は自身の出馬についての態度を一切明言せず。その動向に注目が集まる中で、件のハンドブックが着々と都民に配布されているわけなのだ。

 改めて小池氏に聞くと、

「こうした取組は法的に全く問題のないもので『知事選に向けた布石』などと指摘することは、いたずらに『都民の生活と命を守る』という行政運営を妨げる行為で強く抗議する」(都戦略広報監)

 選挙が近いタイミングで世間に誤解を与える行動はあえて慎む。それが賢者の振る舞いではなかろうか。

「週刊新潮」2024年2月15日号 掲載