妻が浮気…壮絶な裏切りに遭った藤巻を救う“医者としてのプライド”『グレイトギフト』第5話<ネタバレあり>
<ドラマ『グレイトギフト』第5話レビュー 文:くまこでたまこ>
主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。
2月15日(木)に放送された第5話では妻の裏切りに闇落ち仕掛けるも、立ち直る藤巻達臣(反町)の姿が描かれた。
◆ただ一人を愛し抜いた女性の悲しすぎる最期
第5話では、片山萌美演じる鶴下綾香が犠牲になった。
郡司博光(津田健次郎)を愛しただけの彼女は、本当に殺されるべき人だったのかと、見終わってからずっと考えている。
彼女がはじめて登場したときから、いつか暴走してしまうだろうなとは思っていた。郡司が特別扱いしている藤巻の妻・麻帆(明日海りお)に嫉妬心をむき出しにし、郡司に直接、麻帆とは何もないことを確かめていた姿からどこか不安定さを感じていた。
すべては郡司を愛しているからゆえの行動だったと思う。彼女は郡司以外とは男女の関係もなかっただろうし、郡司だけを求めていた。不倫というモラルに反したことはやっているが、殺されるべきだったとは思わないし、思えない。
第5話でも、郡司への愛はあふれていた。
郡司が麻帆と付き合っていることを知った彼女は、静かに怒っていた。このまま彼女は白鳥稔(佐々木蔵之介)と手を組み、郡司を殺害する展開になるのかと思ったが、彼女は愛する人を殺すという考えを持っていなかった。
よく浮気した恋人ではなく、浮気相手に敵意を向けると聞くが、彼女はまさにそうだった。郡司の裏切りに怒りを覚えても、それ以上に郡司を愛していたし、郡司よりも麻帆が憎かった。
夫婦仲は冷めていたが夫もいて、子どももいて、自分よりも多くの幸せをつかんでいる麻帆。そんな麻帆は郡司の元恋人であり、現在も関係があると知ったとき、彼女は何を思ったのだろうか。
郡司を一度手放した女のくせにと思ったかもしれないし、その心は彼女にしかわからない。殺人球菌「ギフト」を使用し、麻帆を排除できたと思ったときの彼女の顔は幸せに満ちあふれていたように感じる。
その後、白鳥によって彼女は殺害されてしまう。郡司だけを愛した彼女の悲しすぎる最期に、胸がずきずきと痛んだ。
◆妻と娘からのひどすぎる仕打ち
私は幼い頃に両親が離婚し、血のつながらない父親が大学まで出してくれた。父親とは言い合いを繰り広げることはあっても良好な関係を築いているため、藤巻に対する麻帆や娘・あかり(藤野涼子)の態度が理解できなかった。
そんななか、第5話では、さらに理解しがたいことが発生する。麻帆と郡司が付き合っていたのだ。うすうす感じてはいたが、本当に藤巻を裏切っていたと知り、驚がくした。
どうして結婚したままで誰かと付き合うという選択ができるのか。また、被害者ヅラができるのか。理解に苦しみ、心の底から怒りが込み上げてきた。麻帆の話を静かに聞く藤巻に代わり、麻帆の頬をビンタしたくなったのは私だけではないはず。
また、あかりも麻帆と郡司の関係を知っており、麻帆から相談を受けていたという。さらに、あかりは経済的な面で支えてくれた藤巻に感謝はしているが、母にこれからは自由にいきてほしいと吐き捨てるのだ。
藤巻が家族にどのくらい苦労をかけ、失望させたかはわからない。でも、あかりの態度には、「遅めの反抗期ですか?」とツッコみたくなるし、もっと早くに藤巻と別れる決断ができなかった麻帆には、ずるいという感情しかなかった。
藤巻から離れたいと思った時点で行動すればいいものの、さまざまな言い訳をして離れないという決断をしたのはあかりと麻帆だったはず。自分たちの決断さえも、藤巻のせいにするのだから、人間は本当に醜い生き物だなと思わせてくれた。
それでも、家族の情が少しだけでもあればいいのにと願うが、それは一切なかった。浮気された藤巻が「可哀想」なのだろうか、いいや違う。浮気をする麻帆やそれを許すあかりの方が「可哀想」なのだ。
この家族の着地点はまだわからないが、藤巻に対して、麻帆やあかりが謝罪する日を待ちわびている。
◆ブレない男・藤巻がすごすぎる
怒る私とは対照的に、藤巻は至極冷静だった。藤巻だけが何も知らない空間で、ひどい扱いを受けたのにもかかわらず、藤巻はその場で怒りをぶちまけることをしなかった。
麻帆から離婚を切り出されてもただ冷静に、最後の最後まで、グッと感情を押し殺していた。わたされた離婚届を持って狂ったように走る姿には、闇落ちルートかなと心配になったが、藤巻はブレなかった。
守るものがなくなった藤巻は、研究室にこもることに。研究室のひどいありさまに、部屋の乱れは心の乱れという言葉を思い出した。
落ち込む藤巻に声をかけたくなるが、彼は自分の入館カードを見て、自分が何のために医者になったのかを思い出す。目に光が宿り、もう一度立ち直る姿があまりにかっこよく、誰よりも誇らしく思えた。
うだつの上がらないと馬鹿にされても、どんなにひどいことをされても藤巻は絶対にブレない。
正直、殺人球菌「ギフト」があれば、白鳥、郡司も殺害できてしまうだろう。でも、藤巻はそんなことは絶対にしない。
外科医のように手術をすることもない病理医。一見、誰も救えないと言われがちだが、それは違う。藤巻は亡くなった人の死因を調べ、研究し、同じような病気になった人を救う、命をつなぐ仕事をしているのだ。医者としてのプライドが藤巻を救った。
どんなに強い敵がいても、「誰かを救いたい」という思いが藤巻からなくならない限り、藤巻は何度でも立ち上がる。
ブレない男・藤巻はスーパーヒーローではない。だからこそ、これまでも大きな反撃はなかった。それでも、藤巻は彼なりに、一歩一歩前を向き、前進しようともがき続けるのだ。
それは誰にでもできることではない。藤巻だからこそできる反撃の仕方で、物語の結末まで駆け抜ける姿を見守りたい。