「好きです」「不倫は駄目です」から“最強の変人タッグ”が誕生した『グレイトギフト』第4話<ネタバレあり>
<ドラマ『グレイトギフト』第4話レビュー 文:くまこでたまこ>
主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。
2月8日(木)に放送された第4話では、藤巻達臣(反町)と久留米穂希(波瑠)の“最強の変人タッグ”が殺人球菌「ギフト」による負の連鎖を断ち切るべく、反撃を開始する様子が描かれた。
◆“好き”の種類は人それぞれ
人は誰しもコンプレックスを抱えている。私の場合は、声が小さいことだ。記者として、ライターとして、「それはどうなの?」と思う人もいるだろう。
突然なんのことやらという感じだが、私は自分の声がどうして小さいのかという理由を知っている。それは、自信がないからだ。
そのことに気付いたのは、『グレイトギフト』の感想をSNSで拾っていたときだった。何気なく目に入った「藤巻先生、声小さい」「ぼそぼそ喋りすぎ」というコメントではっとした。
藤巻は常に自信がなかった。誰と話すときも、間違ったことを言いたくないし、自分が言っていることが正しいのかといつもぐるぐると頭で考えながら話していれば、声は小さくなる。それは周りに見下されたことで、どんどん自信をそぎ落とされた結果だった。
しかし、第4話ではそんな藤巻が自信に満ち溢れ、大きな声で発言することになる。そのきっかけは、久留米からのストレートな言葉だった。
第3話では、久留米と藤巻は恋に発展するのかと考えていたが、それは大きな間違いだった。
久留米が藤巻に好意があると告げると、藤巻は「不倫は駄目です」「忘れてください」と優しく諭す。しかし、久留米の好意は恋愛の意味ではなかった。
その事実を知った藤巻は早とちりだと気が付き、恥ずかしそうにするが、久留米はそれを馬鹿にはせず、自分が藤巻に思っている好意の意味は「人間として好き」だと明言する。
自分に自信がもてない藤巻は、久留米の言葉で自信をもてたのか、表情が明るく、久留米と話すときだけは声が少しだけ大きくなっていたように感じた。
自分のことを信じ、人間として好きだと言ってくれる人がいること。藤巻にとってどんなにうれしかったのだろうか。
「好き」「好意がある」という言葉が男女間で交わされただけで、恋に発展するなど、考えが甘いなと反省した。藤巻にとっての久留米の存在は、私にも現れたらいいなとほっこりとした気持ちになった。
また、「好き」にはいろいろな種類があり、決めつけで判断してはいけないと学んだシーンとなった。
◆特効薬の開発を進める藤巻と久留米
その後、居酒屋のシーンでは、藤巻ははじめて友達ができたかのように久留米に話しかけていた。食に興味がないことや新婚時代の自分の話など、暗い藤巻など存在していませんよというほどに、笑顔を見せる。
藤巻はどこでどう自信を削られてしまったかはわからないが、この笑顔を忘れさせた見えない敵を恨みたくなる。一方で、その輝くほどかわいらしいその笑顔に、「守りたいこの笑顔」と思ってしまうのは私だけではないはずだ。
居酒屋での食事で、藤巻は久留米と協力関係になり、2人で殺人球菌「ギフト」の特効薬の開発を進めることに。敏い人であれば、「なぜすぐに作らない?」という考えに行きついていただろうが、私は考え付かなかった。いや、藤巻にはできないと思っていたのだ。
これまで、私は藤巻を“自信がない仲間”として見ていたため、どこか自分と重ねていた。だからこそ、自信みなぎる白鳥稔(佐々木蔵之介)らに、素直に従う藤巻の姿に共感しながらも自分を棚に上げて、藤巻に少しだけ苛立つこともあった。
藤巻は久留米という光のおかげで変わった。藤巻は自信をもち、白鳥に進んで反撃しようと抗う姿勢を見せたのだ。その成長ぶりに、人は信じてくれる人がいることで、変わることができるのだと実感した。
前回のレビューで「藤巻が推し、殿堂入りです」と言っておきながら、本ドラマに登場する人物同様に藤巻は「変われない」「抗えない」と勝手に決めつけ、下に見ていることに気が付いた。藤巻に心から謝罪をしたいと思う。
殺人球菌「ギフト」を培養できる藤巻だけが、終止符を打てる。自信をつけた藤巻の反撃に期待が高まった。
◆藤巻と本坊、のほほんコンビが好きだったのに…
権力渦巻く『グレイトギフト』で、好きなコンビがいた。もちろん、藤巻&郡司博光(津田健次郎)の同期コンビや藤巻&久留米の都市伝説コンビも好きなのだが、私が一番好きなのは、権力の下でほのぼの生きている藤巻と本坊巧(筒井道隆)だ。
本坊は他の登場人物同様に、藤巻を下に見ていたが、口調はいつも穏やかで、病院内の事情に疎い藤巻がわからないことをそれとなく教えてくれたりした。しかし、そんな本坊は政財界の重鎮たちが通う会員制ラウンジ「アルカナム」のオーナー・安曇杏梨(倉科カナ)が絡むと、的外れな発言で藤巻をよく困らせていた。
一方、藤巻も比較的、本坊とは喋りやすそうにしていたので、同じ匂いを感じていたのかもしれない。シリアスなストーリーの中で、藤巻と本坊よる「アルカナム」のシーンを毎回楽しみにしていたのだが、第4話ではそれが崩壊した。
杏梨に頼まれ、本坊は藤巻の研究室にボイスレコーダーを忍ばせていた。そればかりではなく、殺人球菌「ギフト」の存在を知り、偽物と入れ替え、売りさばいている衝撃の事実が発覚する。
あまりの衝撃に、ぽかんとしてしまったが、すべては杏梨を手に入れるためというブレない本坊に思わず拍手してしまった。藤巻からしてみれば、拍手で済む話ではないのはわかるのだが、藤巻を顎で使うことや殺人球菌「ギフト」を入れ替えたこと、人が死ぬことに対して悪びれることもない本坊の姿にすがすがしさを覚えた。
殺人球菌「ギフト」を使い、「闇の皇帝となって杏梨さんを手に入れます!」という発言には、完全に死亡フラグが立った気がする。しかし、本坊の「闇の皇帝」期間は、郡司の手によって早くも散る。それは儚く、一瞬だった。
その不憫は雰囲気から、なんとなく、本坊は生き残る気がした。願うことならば、死亡フラグが消え、ネタ枠として、残していただきたい。
◆新たな皇帝の誕生
これまで、アニメ、漫画、ゲームなど、私の推しはことごとく、死んでしまっていた。なので、第4話も郡司が死なずに、生き残ったことを心の底から喜んでいた。
そんな私の心配と喜びをよそに、郡司は死亡フラグを立てまくる。気のせいだろうと言われてしまえばそれまでだが、白鳥を裏切った時点で不安しか感じない。相手があの白鳥なのだから、ただでは済まないだろう。
それだけではなく、郡司は「皇帝」になった。「皇帝になった」というと言い過ぎかもしれないが、郡司は白鳥にも刃を向けることを宣言し、藤巻と本坊の弱みをがっちりと握り、自分に従うことを約束させるのだ。
本坊が盗み出したことも含め、すべてを把握した上で、白鳥には言わずに本坊が殺人球菌「ギフト」を売ろうとしていた人物を手にかける郡司。第4話では人を人とも思っていない郡司の狂気的な姿が美しくも恐ろしく、郡司はこの先どこへいってしまうのだろうかと心配になる。
その一方で、もし『グレイトギフト』の応援上映があったら、郡司の「皇帝は誰だ?」という問いに、「郡司先生です!」と言えるなと思ってしまった。新たな『グレイトギフト』の楽しみ方を郡司によって教えてもらった気がする。
第5話では郡司が見られる喜びとともに、黙っているとも思えない白鳥の動向が気になる。また、自信をもち、久留米という仲間ができた藤巻ならば、どうにか白鳥と郡司の戦いにうまいこと入り込み、事件を解決に導くことができる希望の光も見えてきた。
第4話では藤巻の笑顔が増えたことや、郡司による白鳥への反旗など、さまざまなことが起きた。バーゲンセールのように新たな展開が組み込まれたことで、おもしろさが膨らみ、今から第5話が待ちきれない。