“最強の味方”の裏切り…藤巻が絶望のどん底に突き落とされた『グレイトギフト』第3話<ネタバレあり>
<ドラマ『グレイトギフト』第3話レビュー 文:くまこでたまこ>
主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。
2月1日(木)に放送された第3話では、藤巻達臣(反町隆史)が絶対的な権力者の白鳥(佐々木蔵之介)に抗おうとする姿が描かれた。
(※以下、ネタバレを含みます)
◆最強の味方は最強の敵
藤巻は伊集院薫(盛山晋太郎(見取り図))が白鳥によって殺害されたことに、責任を感じていた。これ以上、自分が作った殺人球菌「ギフト」を使わせないよう、培養中の全ての殺人球菌「ギフト」を廃棄すると白鳥に告げる。
しかし、白鳥がそんなことを許すはずがなかった。殺人球菌「ギフト」の生み出した犯人の罪が証明できなくなることや手術を控えている藤巻の妻・麻帆(明日海りお)の話を持ち出し、藤巻を追い詰める。
藤巻が言い返せたのは、「妻の手術が終わるまでです」という言葉だけ。誰かに頼ればその人物が殺される可能性があるため、誰にも頼れず、一人立ち向かおうとする。
そんな藤巻の前に救世主として現れたのは藤巻の同期であり、麻帆の担当医・郡司博光(津田健次郎)だった。
郡司はすべてのことを知ったうえで、白鳥に人殺しをしてほしくないと話す。そして、医学系大学連合会議の議長の座を狙う白鳥が、悪名高き副議長・大泉篤(西岡紱馬)をターゲットにしているはずだと打ち明ける。
さらに、白鳥は大泉から軽井沢の別荘に招待されており、そこで殺そうとしているかもしれないという。大泉を守るため、郡司は一緒に別荘に来るように告げ、そして「俺とおまえで命を救うぞ」と訴えるのだ。郡司からの提案は、言葉にできないほど心強く、藤巻でなくとも最強の味方に思えてしまった。
しかし、気になるのは予告にあった「おまえが育てたギフトだろ!」という郡司のセリフだ。誰かが犠牲になり、藤巻のために叱ってくれているのかと思っていたが、それは思い違いだった。そのセリフには続きがあったのだ。
何事もなくゴルフを終え、安心するなか、白鳥が急用でいなくなり、3人だけが別荘に向かうことに。そこで大泉がワインを口にした瞬間、事件は起こった。
大泉が飲んでいたワインには、郡司によって殺人球菌「ギフト」が入れられていたのだ。藤巻は助けようとするが、大泉は帰らぬ人となった。
郡司は液状検体を抽出して調べるように指示。絶望で動けない藤巻に、「おまえが育てたギフトだろ!最後まで責任もって見ろ」と言い放つ。郡司は藤巻のことなど思ってはいなかったし、そのあまりの鬼畜ぶりに唖然とするのは私だけではないはずだ。
郡司はどこまでいても白鳥の味方であり、白鳥を裏切ることはしない。考えれば当たり前にわかりそうなこの事実に気づくどころか、「わーい!郡司先生が仲間になった!」と思っていた自分の浅い考えに頭を抱えてしまう。
藤巻にとって最強の味方だと思った郡司は、藤巻の最強の敵となって、さらに藤巻を苦しめていく。救いのない展開に絶望さえ覚えたが、「もしかして味方なのでは…」と思わせた郡司を演じる津田の説得力ある表現には拍手を送りたい。
◆一瞬でも神林を疑ってしまった罪悪感
尾上松也が演じている警視庁警務部厚生課・職員相談支援センターの警部補・神林育人は勘も鋭ければ、目も鋭い。正直、怖すぎて画面越しに目をそらしてしまった。
これまでさまざまな場面でそう感じてきたが、第3話はとくにそう思った。伊集院が死亡した件について、神林が藤巻に話を聞くシーンでは、口調は優しいが目が常に情報を得ようとしていた。
人と目を合わせて話すタイプであればこの目線には耐えられなかったはず。その証拠に、見ているだけの私の手には冷や汗があふれていた。しかし、藤巻は人と目を合わせるタイプではないために、この局面を堂々と乗り越えられた。
この場を藤巻は乗り切ったが、神林が彼を疑っているのは明らかだった。神林は遠くなる藤巻の背を見守りながら、伊集院が飲んだ水筒を鑑定に回すよう指示。さらに、藤巻の飲んでいたカップを睨み付け、それも一緒に出すよう告げるのだった。
その結果がどうなったかわからないなか、神林は病院で白鳥と出会うが、彼を疑っていた神林の姿はそこにはなく、ニュース媒体に取り上げられている白鳥を誇らしいと発言した。
娘の前だからというのはあるだろうが、疑っている人物をそこまで褒めることができるかと言われると、それは難しい。私には無理だ。
神林は大人だなと思ったが、神林は刑事の勘で動いていただけのこと。妻・麻帆の命と引き換えに複数の命が失われたことで、落ち込む藤巻の前に神林は現れる。思わず身構えてしまったが、神林の口調はいつもと一緒の優しいものだった。
藤巻の指紋を勝手にコーヒーカップから採取したことや、白鳥を褒めちぎり、わざと携帯を渡しニュースを見せ、意図的に指紋を採取したことを明かす神林。決定的な証拠は見つからないが、白鳥が伊集院の水筒を触り、謎の毒物を入れたことが指紋からわかったと話す。
神林の刑事の勘に驚がくしながらも、父親として娘を守りたいという思いに触れ、心が締め付けられた。白鳥に娘の命を預けてもいいのかという不安に押しつぶされそうになっている神林が、同じような状況にいる藤巻を頼るのは必然だった。
一瞬でも神林が藤巻を疑い、利用しようとしていると思ってしまったこと、心の底から神林に謝罪したくなるシーンとなった。
◆藤巻を追い詰めるのは久留米の純粋さ
敵なのか、味方なのかもわからない久留米穂希(波瑠)の存在は、ある意味、白鳥よりも藤巻を追い詰めていた。久留米が「どうしてですか?」と聞いただけでも、藤巻は深く勘ぐってしまう。
会員制ラウンジ「アルカナム」に久留米が現れたシーンでは、藤巻は激しく動揺していた。久留米と付き合っているわけでもないのに、久留米に言い訳をしようとする藤巻の姿はなんだかかわいらしく、このドラマではなかなかない癒やしパートだった。
よく考えてみれば、藤巻が感情をしっかりと出すのは、久留米の前だけだったように思う。久留米もまた、藤巻にしか見せない一面があり、なんだかお似合いの2人に見えてくる。
そんな藤巻と久留米は、第3話のラストで急接近することに。白鳥と郡司にはめられ、自暴自棄になる藤巻を久留米が止めるのだ。
久留米は藤巻に向かって、自分の目を見てくださいと告げ、さらに「明日食べたいもの、したいことを考えてください」と未来に目を向けるような言葉を続ける。久留米の真っすぐな言葉は、藤巻には深く突き刺さった。
それでも、藤巻は久留米をまだ疑っていた。「本当は君が犯人だろ」と問い詰める藤巻に対し、久留米はいつも以上に冷静だった。
そして、藤巻になぜ危険なことに関わるのか理由を問われ、「私はただ藤巻先生に好意を抱いているんだと思います」と話す。それは、藤巻に伝えるようでもあり、自分にも言い聞かせているように感じた。
久留米はきっと藤巻のために、これから動き出すのだろう。彼女が、藤巻にとって最強の味方となることを祈るばかりだ。
◆反町隆史演じる藤巻は殿堂入り
前回、「推しは郡司です」と言ったが、それは反町演じる藤巻が殿堂入りした上での話だった。
幼いころから、祖父と一緒にさまざまなドラマを見てきたことで、私にとって反町は神のような存在になっている。正直、敬称もつけたいし、熱く熱く反町や反町演じる藤巻だけについて書きたいがそうもいかない。
だが、無理やり、別の人を書いていると言われることもまた違う。藤巻というキャラクターを中心にすることで、どんどん周りのキャラクターが生きてくるのだ。
第3話では、藤巻の弱さが露見したおかげで、郡司のクズ加減と裏切りが印象深くなり、より物語のおもしろさが増した。藤巻を奮い立たせるように、熱い言葉を並べる郡司が裏切るとは夢にも思わなかった。
そう思い込んでしまったのは、藤巻の表情の変化にある。藤巻は藤巻が思っている以上に、言葉ではなく、目や表情で感情を出しているのだ。藤巻が信じることを信じないでどうするという思いが動いてしまい、第3話では藤巻とともに郡司に騙されてしまったと言っても過言ではない。
藤巻は心の声でこちらにいつも情報を共有してくれる。何を考え、どうしたいのかもすべて教えてくれる藤巻を推さないわけがない。これから先もきっとそのスタイルは変わらないはず。今はまだ白鳥や郡司にいいように使われている藤巻が、いつか報われる日までイチ視聴者として見届けていきたい。