古川琴音、大学4年の“就職活動“で女優に。ゴスロリ、パリピキャラから朝ドラまで「次から次へと挑戦するものがあった」
女優デビューした2018年に公開され、多くの映画賞を受賞した短編映画『春』(大森歩監督)で初主演を務め注目を集めた古川琴音さん。
映画『十二人の死にたい子どもたち』(堤幸彦監督)、映画『今夜、世界からこの恋が消えても』(三木孝浩監督)、連続テレビ小説『エール』(NHK)、『コントが始まる』(日本テレビ系)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)に出演。たしかな演技力でデビュー以降、立て続けにドラマ、映画、舞台に出演。
現在、『幽☆遊☆白書』(Netflix)が配信中。主演映画『みなに幸あれ』(下津優太監督)が公開中。2024年2月10日(土)からポレポレ東中野で主演映画『雨降って、ジ・エンド。』(郄橋泉監督)が公開される古川琴音さんにインタビュー。
◆就活のタイミングで女優に?
神奈川県で生まれ育った古川さんは、4歳からバレエを習いはじめ、中学・高校時代は演劇部に所属。大学時代は演劇サークルに入っていたという。
「小さいときは、ちょっと恥ずかしいんですけど、目立ちたがりやな感じもありました。母から聞いたのですが、私が小さいときに転んだら周りにいた友だちのお母さんが笑ったのを見て、そのお母さんの周りで転びながら歩いていたそうです(笑)。
内気なところもあるのですが、人前に出るのはイヤではなかったみたいです。その後、バレエとピアノを習うようになって、練習よりも発表会があるときのほうが、テンションが上がって練習するタイプの子どもだったので、誰かに見られているということが好きだったのかなとは思っています」
――それでは女優さんというのはまさに天職という感じですね。
「どうなんですかね(笑)。事務所に入ったのは、大学4年生のときの就職活動の時期で、その時点では、まだはっきりと女優になりたいということは思っていませんでした。
中学、高校で演劇部、大学では演劇サークルでお芝居をずっと続けていたので、就職活動のタイミングで自分は何が得意なのかということを考えたときに、一番長く続けられてきたのはお芝居だなあと思って。見てくださったお客さんというか、友だちのお父さんとか、お母さんに褒められたことがあるのはお芝居だけだったので、お仕事にしてみようかなというチャレンジでした」
――それで、現在所属されているユマニテに?
「そうです。満島ひかりさんが好きな役者さんだったので、会ってみたいという気持ちが強くて同じ事務所のオーディションを受けました。
私は、結構オーディションが好きなタイプで(笑)。何か実験の場に近いというか。オーディョンのときに1分間の自由演技という課題があって、未知の世界だし、すごくワクワクしていたような記憶があります」
――事務所に入られてからは?
「オーディションの話をたくさんいただいて受けていったのですが、最初に受けたオーディションが沖縄市のPR動画で受かったんです。そのあとも受けるオーディションでご縁をいただくことが多くて、いろんな作品に出られるようになりました」
――多くの作品に出演されていらっしゃいますが、まだデビューされて今年で6年目なのですね。お仕事を始められていかがでした?
「学生時代は、ずっと舞台に慣れていたので、みんなで1から作っていくという感覚が最初はあったんです。映像のカメラに行くまで、全部自分で役作りをして本番になって初めて監督とすり合わせができるということに、最初は本当に緊張していました。
それで何回も同じお芝居をするということも大変なので、なかなか難しいなとは思っていたんですけど、役作りというか、その役の基本的な部分が抑えられていれば、いくらでも新鮮に気持ちが作れるということに気づいてからは、そこまで舞台と映像の差は感じなくなりました」
※古川琴音プロフィル
1996年10月25日生まれ。神奈川県出身。2018年にデビュー。連続テレビ小説『エール』、『この恋あたためますか』(TBS系)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)、映画『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督)、映画『偶然と想像』(濱口竜介監督)、映画『リボルバー・リリー』(行定勲監督)、CM、舞台に出演。Netflixで『幽☆遊☆白書』が配信中。主演映画『みなに幸あれ』が公開中。2024年2月10日(土)に主演映画『雨降って、ジ・エンド。』の公開が控えている。
◆ゴスロリ姿は楽しかった
古川さんは、デビュー間もない2018年に撮影した短編映画『春』(大森歩監督)が「京都国際映画祭2018」をはじめ、多くの映画祭で賞を受賞。古川さん自身も「第2回 渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保2018-19」の主演女優賞、「第20回 TAMA NEW WAVE」ベスト女優賞を受賞した。
――とてもいいスタートでしたね。
「そうですね。でも、新しいことにいっぱい、いっぱいでした。次から次へと挑戦するものがあったので、あまり実感がなかったというか。賞を獲るということも、いまだにあまり実感がないんですよね。賞をいただいたときには、もう違う作品を撮っている最中ですし…。
だから、『賞を獲ったんだ。恵まれた環境でお芝居できてありがたかったな』とか、後になってから気づくことがたくさんありました」
2019年、古川さんは、映画『十二人の死にたい子どもたち』に出演。この映画は、それぞれの理由で安楽死をするために閉鎖された病院に集まった12人の少年少女が、そこいるはずのない13人目の少年の死体を見つけたことから、死体の謎と犯人をめぐり、嘘とだまし合いを繰り広げることに…という展開。古川さんは、12人の中のひとりで、大ファンのバンドマンを崇拝するゴスロリ少女・ミツエ役を演じた。
「キャラクターとしても個性の強い役をいただいたので、ゴスロリ姿も新鮮で楽しかったです(笑)。メイク室に誰よりも早く入って、誰よりも遅く出るという感じでした。カツラをつけて、コンタクトレンズをつけて…変身願望もあるほうなので本当に楽しかったですね」
――完成した作品をご覧になっていかがでした?
「『十二人の死にたい子どもたち』は、自分の中でいろいろと反省点がある映画だったので、どうしても客観的には見られなかったです。
いろんないいスパイスになる設定をいただいたのですが、演じることに精いっぱいで、ゴスロリ姿や、方言などをもう少し活かせれば良かったと思います。まだ経験が浅いこともあったので、アップアップになってしまっていたような記憶があります」
――見ている側からすると、振幅の大きい役でしたし、とても印象的でした。
「イメージをはっきり持って挑むほうなので、自分ではそこ(自分が思い描いたイメージ)に届かなかったかなという思いがあるのかもしれないです」
2019年には、映画『チワワちゃん』(二宮健監督)に出演。この映画は、SNSが普及した東京を舞台に、若者たちの青春を描いたもの。若者グループのアイドル的存在・チワワ(吉田志織)がバラバラ遺体となって東京湾で発見される。残された仲間たちは、毎日つるんでバカ騒ぎをしていたチワワの本名も素性も知らないことがわかり…。
「私が初めて参加した映画は『チワワちゃん』だったんです。仕事をして6年目になりますけど、6年間振り返ってみても、あんなに派手な現場はなかったなって思います。共演した人たちも言っていたのですが、劇中でこんなに遊んだことはないというくらいでした。あの映画では、一生分遊んだなというくらい、いろいろ遊ばせていただきました(笑)」
――すごかったですよね。劇中、「600万円を3日で遊んで使っちゃった」と言っていましたが、あれだけ派手に遊べばそうだろうなと思いました。
「はい。本当に派手なシーンがたくさんあって、体力勝負でした。撮影では、とにかく体力勝負だったことが印象に残っています(笑)」
◆「朝ドラ乗り切ったぞ!」
2020年には、連続テレビ小説『エール』(NHK)に出演。このドラマは、昭和という激動の時代に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田正孝)とその妻・音(二階堂ふみ)の物語。古川さんは、裕一と音夫妻の愛娘・華役を演じた。
「朝ドラのオーディションは、最初は違う役でオーディションを受けさせてもらったのですが、あとで華さんでと声をかけていただいて」
――撮影はいかがでした?
「主演の二階堂(ふみ)さんと窪田(正孝)さんからエネルギーをいただきましたし、学ぶことがたくさんありました。私はふたりの娘・華ちゃん役なので、途中から(撮影)現場に入ったのですが、そのときに輪の中に率先して入れてくださったのは、二階堂さんと窪田さんでした。
朝ドラは、途中から出てくる役も多いし、途中でいなくなる役も多いので、そういうことも含めて、このふたりの家なんだなという印象があったんですよね、撮影所に入るときに。
だから、気持ちの構え方というのは、そういうキャストを迎え入れる気持ちでやらないと、ヒロインと主人公は務まらないんだなというのは、初めて実感したことでしたね」
――すでに出来上がっているところに入っていくのは、なかなか難しいですものね。
「そうなんです。なので、スッと入ることができてすごくありがたかったです」
――撮影自体はスムーズでした?
「そうですね。すべてがきっちりしているというか、本当に皆さん、プロフェッショナルな方々なので。どの現場もそうですけど、とくに朝ドラはそういう形だというものがしっかり決まっていて、そこの安定感というのでしょうか。安心してこの中に入っていけばいいんだというのはありました」
――ご自身でオンエアをご覧になっていかがでした?
「とくに印象に残っているのが、私と私の旦那さんのアキラ(宮沢氷魚)がふたりでお父さん(窪田正孝)とお母さん(二階堂ふみ)にあいさつをするシーンでした。
二階堂さんと窪田さんが若かりし頃に結婚を申し込んだときと同じ構図にしたいと監督がおっしゃっていて。私も華ちゃん役が決まる前に見ていたシーンだったので、すごく印象に残っていたんですよね。ハートフルでありながらテンポも早いし、コミカルだし。だから、それをやってほしいと言われたときはすごくプレッシャーでした。
でも、そのプレッシャーを乗り切ったというか、OKが出たときに、監督に『良かったよ』って言っていただいたのがすごくうれしかったです。『朝ドラ乗り切ったぞ!』って、そこで思ったのかなと(笑)」
『エール』で広く演技力の高さを認知された古川さんは、『この恋あたためますか』(TBS系)、『コントが始まる』(日本テレビ系)、映画『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督)など話題作出演が続いていく。次回は撮影エピソードも紹介。(津島令子)
スタイリスト:藤井牧子
ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER)