寝具D2C キャスパー 、非上場後は「マットレス小売」に特化:新小売戦略による店舗デザインも発表
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。D2Cマットレスブランドのキャスパー(Casper)は、現在は非上場企業となった自社の成長戦略を洗練するため、新しい店舗デザインの運用を開始する。
キャスパーは2024年1月、カリフォルニア州コスタメサにある初のリニューアル店舗を公開した。この新しい店舗には「スヌーズバー(Snooze Bar)」があり、顧客は「睡眠専門家」と呼ばれる従業員に、自分のニーズやライフスタイルに基づいた最良の枕やマットレスについて質問できる。また、顧客がキャスパーの枕を試すことができる枕専用のラボや、寝室のデザインサービスを提供するスペース、子ども向けの「バンクハウス体験(bunkhouse getaway)」も新設した。
この新しいコンセプトは、特に2021年に株式を非公開にしたあと、キャスパーのメッセージングが年を追うごとにどのように進化してきたかを示している。店舗のデザインは、いくつものカテゴリーにおいてキャスパーの製品イノベーションを強調することを意図している。また、PRの視点では、D2Cブランドに突き付けられることが多い、「デジタルマーケティングを活用するのが上手なだけの会社」だという批評に反論することも目的である。
「キャスパーに入社する前の私自身も含めて、多くの人々は、キャスパーが、箱詰めしたベッドの流通と配達を行うためのアイデアと方法を見いだしたマーケティング企業にすぎないと考えていた。しかし、実際はそれ以上の企業だ」と、2023年5月に入社したベイリー氏は語る。
「シャイニーオブジェクト症候群」に苦しんだ低迷期
キャスパーは、ベンチャー支援によるD2Cスタートアップ時代の初期に成功した会社のひとつで、複数の資金調達ラウンドを経て評価額11億ドル(約1617億円)を達成した。その後2020年に株式を公開し、同時にウォール街の注目を集めるというより大きな野望を明らかにしはじめた。自社を「睡眠業界のナイキ(Nike of Sleep)」と呼び、マットレスや枕に近い分野として、グミや高性能目覚まし時計などの製品の販売を開始した。
しかし、公開市場においては、キャスパーは利益を出すことができずに低迷しはじめ、D2Cの有望株だった初期と比べて成長も鈍化した。2020年度の収益は13%増加したが、純損失は約9000万ドル(約132億円)だった。そして2021年、デュレーショナルキャピタルマネジメント(Durational Capital Management)によって株式が非公開にされた。
非上場企業に戻ったキャスパーは現在、実際の使用例やディスプレイによって自社の製品イノベーションを強調することに重点を置いているようだ。2022年、同社の社長兼CEOのエミリー・アレル氏は、キャスパーがこれまで「シャイニーオブジェクト症候群(新しくて魅力的なものに飛びつくこと)」に苦しめられていたと、イーテールボストン(eTail Boston)のステージで語った。つまり、睡眠関連の新製品に手を出しすぎていたということだ。今後は「マットレス小売業者である」ことに焦点を絞っていくと同氏は話す。
ベイリー氏によると、新しい店舗デザインはキャスパーラボ(Casper Labs)部門の着想によるもので、この部門は「マットレスに投入できる最先端でもっとも優れたテクノロジー」を見つけることが目的だという。
一般的に、人々が睡眠について感じる問題は、感触、サポート、温度管理の3つに集約されるとベイリー氏。このためキャスパーラボのチームは、マットレスに新しい素材を使用することで、温度管理にどのような影響があるかをテストする予定だ。
卸売にも注力
キャスパーが2018年に最初のマットレス店をオープンしたとき、マットレスを購入する際の時代遅れな体験を改善することに多くの労力が注がれていた。キャスパーの最初の店舗の主な特徴は、同社が「ハウス」と呼ぶ、プライベートに仕切られた空間でマットレスを試すことができるという環境にあった。
新店舗ではこの体験をもう少し「格上げ」し、「半分の壁やカーテン、あるいは似たようなものを使って、よりソフトで大人向けに見えるようにしたい」と、ベイリー氏は話す。
新店舗では、キャスパーの製品の専門知識も重視されている。キャスパーは、スヌーズバー(Snooze Bar)をAppleのジーニアスバー(Genius Bar)のように説明している。ピローラボも新しく、買い物客が低反発枕や羽毛枕などさまざまな選択肢を比較しやすくすることを意図したものだ。
エムジーツー(MG2)のプリンシパルで、実験的リテールスタジオのザ・ライオネスク・グループ(The Lionesque Group)の創設者でもあるメリッサ・ゴンサレス氏は、キャスパーのような新興企業が成熟するにつれて店舗デザインを進化させるのは普通のことだとメールで話した。「キャスパーのような企業はブランドとして大きく成長してきたが、進化し続ける消費者のトレンド、行動、ニーズを常に把握し、それを店舗での体験に確実に組み入れることもまた重要だ」。
「顧客が体験に何を求めているかをより深く掘り下げて理解することも重要で、そうすることで可能な限り意図的にそれを提供することができる。たとえば、顧客が製品を店舗で試すとき、どのような疑問への回答を求めているのかといったことだ」と、同氏は付け加える。
ベイリー氏は最高販売責任者として、キャスパーの小売と卸売事業を監督している。今後重視する点のひとつは、キャスパーが2024年1月末に発売し、今後の展示会でお披露目する予定の新商品のラインアップだと、同氏は話す。卸売事業を成長させることも優先事項だ。現在、キャスパーの製品はノードストローム(Nordstrom)やターゲット(Target)、レイモア・アンド・フラニガン(Raymour & Flanigan)などの小売店で販売されている。
「キャスパーは伝統的にD2C、すなわちeコマースと自社の小売店舗によるビジネスだった。この数年間は、消費者が望むところであればどこでも当社の製品を購入できるように、卸売に力を入れ、より深く参入しようとしている」と、ベイリー氏は語った。
[原文:Casper tests a new store design as it rethinks its retail strategy]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)
Image via Casper
