得点し歓喜するイラク代表【写真:ロイター】

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ドラゴン久保のアジアカップ・日本―イラク戦分析第2回

 サッカー・アジアカップカタール大会は19日、グループリーグ第2戦で世界ランク17位日本が同63位イラクに1-2で敗れた。歴代最長の国際Aマッチ連勝記録が「10」で止まり、決勝トーナメント(T)進出はお預け。2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会で独自の解説がひそかに話題となった元日本代表FW久保竜彦が今大会も東京・中目黒のTHE ANSWER編集部を訪問し、試合を分析した。全3回の第2回。優勝候補の日本を破ったイラクについて「強かった。日本、完敗やった」と驚き、現役時代に体感した中東特有のフィジカル、そして、試合前に60秒ほどの国歌斉唱に「怖さを感じた」という理由を明かした。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 イラク、強かったね。日本、完敗やったもんな。

 中東の国のわりにはすごくまとまったし、規律があった。アフリカとかにはほとんどないけど、バラバラにならんかった。特に後半になるとそうなるもんやけど、1点取られても全然、変わらんかったから。強かったよね。

 センターバックも高いし、強いし。あそこで体を貼るのは難しいかったね。

(鈴木)隆行とか高原(直泰)でも難しかったもんね、イラク、イランあたりは。やっぱ、違うんやろな。どっしりとしとる。高原よりもっとデカくて、動けるやつがおるけん。昔はイランにアリ・ダエイみたいなやつもおったし。

(イラクなどの中東は)体の強さは全然、違うよ。ヨーロッパに近いよね。

 韓国人とも違うよね。韓国人も強かったけど、韓国は来てくれる、アタックしてくれるけん、それをうまくやれば(こちらとしても)良い部分になる。でもイラクは見て対応される感じ。見られる、予測される感じ。

 井原(正巳)さんをもっとすごくしたような。(手足が)長いし、デカいし、強いし。競ってもあんま動かんしね。難しかったと思うよ。誰がっていうことじゃなく、みんな献身的にむっちゃ頑張っとった。キワのところ全部、行っとったし。

 途中(集中が)切れるかと思ったけど、切れんかったもんね。

イラクの国歌斉唱に「戦うって、国と国が戦うってそういうこと」

 でも、イラクが凄かったんは試合前の国歌斉唱よな。顔が違うと思った。

 もちろん、日本もちゃんとした顔で歌っとるんやけど。国の情勢もあるんかな。誰かを守らんといかんとか、(単に)勝ち負けじゃない、すごい顔しとるなって。でも、戦うって、国と国が戦うってそういうことやから。怖かったもん。

 そういうのが試合に出たのかもしれんね。前の試合とかどうだったかわからんけど。ただ、試合は互角やったと思うよ。イラクもあれが続くとは思わん。決勝トーナメントでもう一度当たったら、どうなるかはわからん。

 日本からするとモチベーションの差かもしれんし、力の差かもしれんし、たまたま今のタイミングでハマったのかもしれんけど。結果は結果やけん。敗因は誰にもわからん。(イラクが)勝って、(日本が)負けた。それだけのことよ。

 ただ、今日の試合で本当は後半の頭から見たいやつがおったよね。

(第3回へ続く)

■久保 竜彦 / Tatsuhiko Kubo

 1976年6月18日生まれ。福岡・筑前町。筑陽学園高を経て、1995年に広島加入。森保監督(当時選手)とは7シーズンプレーした。2003年に横浜F・マリノスに移籍し、リーグ連覇に貢献。1998年に日本代表デビュー。ジーコジャパンとなった2003年以降は日本人離れした身体能力と強烈な左足でエースとして活躍したが、腰や膝など度重なる怪我により、2006年のW杯ドイツ大会は落選。以降、横浜FC、広島などを渡り歩き、2014年に引退。J1はリーグ戦通算276試合94得点。日本代表は国際Aマッチ通算32試合11得点。引退後は山口・光市に移り住み、コーヒー焙煎や塩作りなど、異色のセカンドキャリアを歩む。来月、初孫が誕生予定。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)