Vリーグ注目の若手選手

男子編


日本代表でも活躍する、パナソニックの大塚達宣 photo by 縞茉未

【日本代表でも活躍の大塚はさらなる成長へ】

 VリーグのV・レギュラーラウンドは、年が明けて男子が中盤戦、女子が後半戦に突入する。各チームの戦況を見ると、入団1年目の選手たちの活躍がキラリ。昨年末の「令和5年度天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会」でも存在感を放っていた。

 学生時代の"部活"から、"職業"としてバレーボールに励む選手たち。国内最高峰の舞台で己の武器を確かめ、それを発揮しながら一歩ずつ前進していく。そこでは壁にぶち当たることもあるだろう。だが、パナソニックパンサーズの大塚達宣(23歳)は例外と言えるかもしれない。

 早稲田大3年時の2022年1月に現役大学生選手としてパナソニックに入団し、さっそくコートに立った(シーズン終了をもって一度退団)。そこでは、当時チームに在籍していたミハウ・クビアク(ポーランド)の対角に入り、その世界で指折りのアタッカーの「技を盗みたい」と息巻いていたが、いざ試合になると「チームが勝つために、自分にできる最善は何か」という思いでいっぱいに。勝利を呼び込むファクターのひとりとして、闘志を燃やした。

 それが2021−22シーズンのこと。現在、社会人としては入団1年目だが、内定選手としてプレーした昨季も含め、パナソニックでの在籍は3シーズンを数える。

「大学3年生の時は、怖いもの知らずな面が少なからずありましたね(笑)。ですが、日本代表にも選んでもらい、自分の特徴もデータとして出ていることで相手のマークも厳しくなる中、いかに自分の数字を高めることができるか。それを大事にしています」

 そう話す大塚は今季、レギュラーに定着。天皇杯ファイナルラウンドでは、準々決勝こそコンディション不良で欠場したものの、翌週の準決勝へ向けて心身ともに充電した。準決勝ではマッチポイントからサービスエースを決め、試合後には「バレーボールができる喜び、というか......楽しかったです。自分のパフォーマンスに体がついてきました」と笑顔をのぞかせた。

 その強心臓ぶりは調子の波など感じさせないが、天皇杯の経験を踏まえて「うまくいかない時にどうするかが自分の課題。今季はそことしっかりと向き合っていきたい」と、さらなる成長を期す。

【身長205cmのミドルブロッカーが新たな境地へ】

 その大塚と、アンダーエイジカテゴリー日本代表から2022年世界選手権に至るまで、ともにステップアップしてきたのがジェイテクトSTINGSの佐藤駿一郎(23歳)だ。

 チームの同じミドルブロッカーのポジションには、福山汰一、村山豪、饒書涵(ラオ・シュハン/中国)といったリーグ屈指の選手たちが揃う。当然、レギュラー争いは激しいが、そこに対して佐藤は"絶対的な武器"で勝負している。

「自分は高さを武器にしているので、そこでは負けないように、と意識しています。日頃からパフォーマンスを上げていかないと試合で使ってもらえませんから、アピールは欠かせません」

 身長205cmの佐藤は前衛でのインパクトが十分。攻守両面でさらなる進化を目指す。ブロックに関しては、日本代表の郄橋健太郎(東レアローズ)に憧れ、動画を見て参考にしているという。攻撃面のアタックは、日本代表の司令塔でチームメイトのセッター、関田誠大とコンビを合わせる中で新たな境地を開いた。

「もともと自分は(クイックの)トスを見て、溜めてから打つクセがあったんです。でも、それでは相手ブロックも完成してしまいますし、そこを抜いたとしても、レシーブで対応されてしまう。特に今シーズンのウルフドッグス名古屋戦ではまったく通用しなくて......。それで悩んでいた時に、関田さんからアドバイスをいただきました。

 溜めるのではなく、高い打点から早くスイングするように改善して、関田さんの速いトスにも対応できるようになりました。ここ数カ月、一緒にやってきて成長させてもらった部分です」

 佐藤自身、アタック力には自信を持っていたが、周りのサポートを受けながら磨きをかけていく。

【名門チームでレギュラーのミドルブロッカーに】

 佐藤が関田によって進化のきっかけを掴んだように、パナソニックのミドルブロッカー、エバデダン・ラリー(23歳)もまた、先輩セッターに引き上げられた若手選手のひとりだ。こちらは技術というよりも、ベテランの深津英臣から精神的な面で背中を押してもらった形だ。

「深津さんから『お前には、何も気にせず(トスを)上げているよ』と言われていて、それは信頼されている証だと思っています。その分、自分も『決めなければいけない』という意識も強くなりますが、それにとらわれることなくプレーできている。素直に自信にしています」

 エバデダンも大塚と同様に、大学3年時、内定選手、そして今季というキャリアを歩み、在籍自体は3シーズン目。「大学3年生で入団させてもらった時は、まさかレギュラーに入れるとは思いませんでした。ですが、卒業してスタートラインに立った時には、コートに立つ気が満々で。『勝負するんだ』という気持ちでした」と胸の内を明かす。いざシーズン開幕を迎えると、見事にレギュラーの座を獲得。身体能力を生かしたプレーが光っている。

 ウルフドッグス名古屋との天皇杯決勝では、優勝に王手をかけた第4セットで、相手エースのバルトシュ・クレクをブロックシャット。最終的に、ブロックポイントはチーム最多となる3本を記録した。

 さらに、試合の終盤にもクイックが上がり、きっちりと決めきる場面もあった。

「天皇杯では2回戦から準決勝まで、それほど打数が多くなかったので不安もありました。ですが決勝の、しかも終盤で使ってもらえて、『多少なりとも信頼されているのかな』とあらためて感じました」

 その決勝では、試合途中から大塚がベンチに下がったことで、コート上の最年少選手に。「そのシチュエーションがいちばん苦手です。不安になるので」とエバデダンは苦笑いを浮かべたが、「いつかは慣れなきゃいけない。それは大塚もしかりだと思いますから」と口元をきゅっと締めた。

「大塚と話すんです。『お互いに自立していかないといけないね』って」

 そんな言葉が実に頼もしい。Vリーグの舞台、再び始まる代表活動も目指して。その思いをプレーに乗せ、レベルアップする姿を見せてくれるはずだ。

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