若きタレントたちが次々に登場している日本女子ツアー。近年はそこから、世界へと羽ばたいていく選手も少なくない。そして2024年も、日本ツアーを代表するトッププレーヤーたちが米女子ツアーに参戦する。2023年11月に行なわれた日米共催ツアー、TOTOジャパンクラシックを制した稲見萌寧(24歳)に、2023年12月の米ツアーQシリーズ(最終予選会)を突破した西郷真央(22歳)、吉田優利(23歳)らがそうだ。はたして、彼女たちは世界最高峰の舞台でも活躍することができるのか。その可能性、期待度について、永久シード保持者である森口祐子プロに話を聞いた――。


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吉田優利(よしだ・ゆうり)
2000年4月17日生まれ。千葉県出身。2023年ツアー優勝1回。メルセデスランキング7位。獲得賞金9716万5228円(8位)。身長158cm。血液型O。

 吉田優利さんは、2022年のメルセデスランキングが6位、2023年が同7位。2023年には国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップで優勝を飾りました。そうしたなか、同い年の古江彩佳さんや西村優菜さんが米ツアーに参戦していることも意識にあったと思うので、今回の挑戦はいいタイミングではないかなと思います。

 吉田さんはグリーン周りのショットが得意で、2023年シーズンのリカバリー率は1位。サンドセーブ率は2022年シーズンの1位から2023年シーズンは14位へと後退しましたが、それでもバンカーショットは彼女の強みだと思います。

 ピン位置をグリーンエッジ近くにセッティングしてくる試合も多い米ツアーでは、グリーンを外した時のバンカーショットやアプローチがスコアメイクに大きく左右します。その点、バンカーショットが得意な吉田さんであれば、アメリカでもリスクを恐れない攻め方、果敢にピンサイドを狙うショットが見られるのではないでしょうか。

 アプローチに関しても、辻村明志コーチの指導をともに受けている上田桃子さんから、芝質の違いに関するアドバイスなどを得ていると思います。このオフにはそれらの対策も施してくるはずです。

 辻村コーチに言わせると、トレーニングも手を抜かない吉田さん。ハードな移動を強いられる米ツアーでもうまく乗りきってくれると思います。



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西郷真央(さいごう・まお)
2001年10月8日生まれ。千葉県出身。2023年ツアー優勝1回。メルセデスランキング14位。獲得賞金6775万4742円(18位)。身長158cm。血液型AB。

 2023年シーズンには、海外の試合にも積極的にチャレンジした西郷真央さん。難しいセッティングや環境のなかで身につけてきたショット力の向上は、その成果と言えるでしょう。

 パーオン率は、2022年シーズンの71.3564(10位)から2023年シーズンは74.8264(4位)とアップ。その結果、平均バーディー数も2022年シーズンの3.4675(11位)から2023年シーズンは3.8594(6位)へと上昇し、積極的なゴルフができていた印象があります。

 2023年シーズンのドライビングディスタンスは245.81(22位)でしたが、彼女の体格からすれば、十分に飛ばせていると思います。ただそれに関して、米ツアーで戦うなかで西郷さんがどう感じるか。

 海外では、「ハァ〜」とため息をついてしまうほど飛距離が出る選手がいますし、地域によっては乾燥した気候でボールがより飛んだりするので、選手によって「自分ももっと飛ばそう」と思って"振り出す"ようになることがあります。そこは、注意すべきポイントでしょうね。

 西郷さんはパーオン率がよくて、アイアンのショット力には自信があるわけですから、飛距離は気にせず、その部分で勝負する気持ちでやってもらいたいです。

 2023年に海外のゴルフ場を数多く回ったことで、芝質の違いへの戸惑いも比較的少ないかもしれません。もはや課題は絞れていることでしょうから、早い段階で結果を出してくれることを期待したいですね。


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稲見萌寧(いなみ・もね)
1999年7月29日生まれ。東京都出身。2023年ツアー優勝1回。メルセデスランキング16位。獲得賞金8891万3694円(9位)。身長166cm。血液型A。

 海外への意識は「ない」と言っていた稲見萌寧さん。その彼女が米ツアーへのチャレンジを表明したのは、もちろんTOTOジャパンクラシックを勝って得たチャンスを生かしたかったからでしょうが、オリンピックのことも頭にあったのかもしれません。

 というのも、2024年パリ五輪の出場権は前回の東京五輪同様、およそ過去2年間の成績が反映されるオリンピックゴルフランキングによって決定します。それを考えた場合、2023年シーズンで出遅れた稲見さんは、2024年シーズン序盤で巻き返す必要があり、ポイント数の高いアメリカでプレーしたほうがその可能性は増すからです。今回の選択には、そんな意識もあったのではないかな、と思っています。

 いずれにせよ、東京大会でオリンピックの銀メダリストとなった稲見さん。その称号はよくも悪くも、今後の彼女について回ります。そこは自信にして、アメリカでも頑張ってもらいたいです。

 稲見さんのアイアンショットはインパクトでフェースを長く押していく打ち方で、ボールをフェースに乗せる時間が長い分、スピン量や弾道が安定します。この打ち方は、日本の高麗芝や野芝のように葉が太くて硬い芝質では球が浮いた状態で打てるのでいいのですが、海外のバミューダやティフトンなどの洋芝では球が沈んでしまうため、インパクトで芝の影響を受けやすく、ヘッドが持っていかれる心配があります。

 この問題に、稲見さんはどう対応するのか。それも、興味深いところです。

 2023年6月の試合の際、予選落ちが続いている稲見さんに練習場で「少し休むとかは考えないの?」と声をかけました。その時、「考えてみます」といった答えが返ってくるかと思いきや、「でも私、トレーニングが大好きなんですよ」という思いもよらぬ返答が。その言葉にたくましさを感じたので、ハードな米ツアーでも頑張ってくれると信じています。