フロントマスクを一新するなど現代的にアップデートされ再発売(写真:トヨタ自動車)

「プラド」の後継モデルである「ランドクルーザー250」とあわせて、2023年8月に国内復活が公言された「ランドクルーザー70」。

そのとき発表されたのは内外装のデザインとパワートレインだけであったが、価格を含めた全貌がついに明らかにされ、11月29日より発売となった。

ガソリン+MTからディーゼル+ATへ

ランドクルーザー70シリーズは、1984年に登場して以来、40年近くにわたって生産が続く超ロングセラーモデルだ。日本では2004年に販売を終了しているが、30周年を記念して、2014〜2015年に期間限定で復活。今回、8年ぶりに日本国内市場に戻ってきたことになる。

30周年時に販売されたモデルからの変更点は、以下のとおりだ。

・商用車から乗用車(1ナンバーから3ナンバー)仕様に
・法規とトレンドに合わせた内外装のデザイン変更
・エンジンがV6 4.0Lガソリンから2.8Lディーゼルに
・トランスミッションが5速MTから6速ATに
・トラクションコントロールなど電子制御システムの採用
・先進安全支援機能「Toyota Safety Sense」の採用
・KINTOでのサブスクリプション販売も用意

前回の復活時はマニュアル・トランスミッションの商用車仕様(初回2年/継続1年車検)だったが、今回は燃費にも優れたディーゼルエンジンにオートマチック・トランスミッションを組み合わせた乗用車仕様(初回3年/継続2年車検)になったため、より手にしやすくなったといえる。

さらにレトロなデザインを大きく変えないまま、電子制御システムや先進安全支援機能が搭載されたことも、うれしいポイントだ。

ひと目でランクル70だとわかるデザインは、よく見ればボンネットまわりが新しくなっていることがわかる。


丸型LEDヘッドライトにTOYOTAロゴが新型の特徴(写真:トヨタ自動車)


こちらが30周年時のモデル。ライトやグリルだけでなくボンネット形状も違うことがわかる(写真:トヨタ自動車)

グリルのエンブレムは、トヨタCIからTOYOTAロゴに変わり、ヘッドライトが丸型のLED式(デイタイムランニングライトつき)になっていることも新しい。

インテリアは新旧が入り交じる世界

30周年時に販売されたモデルは、モダナイズされたデザインが特徴であったが、最新作は逆にレトロテイストを昇華させた形となったのだ。

リヤまわりでは、コンビネーションランプがバンパーに移設されているが、これは法規対応のためである。インテリアに目を移すと、そこには長く販売されてきたモデルならではといえる、新旧入り交じった不思議な世界が広がる。


新旧が共存する不思議な世界観のインテリア(写真:トヨタ自動車)

スクエアなボディ形状ゆえの奥行きの短いダッシュボードの建付けは、1980年代から変わらない。しかし、ダッシュボードのデザインは30周年時のモデルから採用された丸形の吹き出し口や助手席エアバッグにより、モダナイズ。

さらに今回のモデルでは、オートマチックの採用により「RAV4」や「ハリアー」と同形状のシフトレバーが備わり、ステアリングホイールもスイッチが付いたトヨタの最新デザイン(しかも木目調)に。


商用車仕様から乗用車仕様への変更にともない、乗車定員が4名から5名に(写真:トヨタ自動車)

さらに、メーターは4.2インチのデジタルディスプレイがついた、オプティトロン(自発光式)となっている。USBソケットやToyota Safety Senseのスイッチもつく。

それでいてデビュー当時から変わらないレバー式のエアコン操作盤や、ボディ外板が露出するドアなどが残されているから、おもしろい。ロングセラーモデルならではの、世界観がそこにある。

モード燃費は6.6km/Lから10.1km/Lへ

V6ガソリンエンジンから変更された2.8リッターの直噴ターボディーゼルエンジンは、最高出力150kW(204PS)/最大トルク500N・m(51kgf・m)。

WLTCモード燃費は10.1km/Lと決して良好な数値とはいえないが、V6ガソリンエンジンのときは(より条件のいい)JC08モードで6.6km/Lであったから大幅改善である。


タフなオフロード走行を支えるラダーフレーム式のシャシー(写真:トヨタ自動車)

プラットフォームに関しては、高いオフロード走行性能と堅牢性を持つラダーフレーム式のシャシーを継承。サスペンションは、「快適な乗り心地をさらに追求」したという改良を施す。

また、悪路走破のための前後・電動デフロックに加え、ビークルスタビリティコントロール(VSC)、アクティブトラクションコントロール(A-TRC)、ヒルスタートアシストコントロール(HAC)、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)といった駆動力・制動力制御システムを採用し、オン/オフロードともに安全/安定性を向上させている。

先進安全運転支援機能のパッケージであるToyota Safety Senseには、歩行者(昼夜)や自転車(昼)に対応するプリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート(LDA)、オートマチックハイビーム(AHB)、ロードサインアシスト(RSA)、発進遅れ警告(TMN)が含まれる。

このレトロなスタイルのオフロードカーに、(法規的な対応が必要とはいえ)これだけの現代的な機能が搭載されているとは、驚くほかない。

KITNOでのサブスクリプション購入も可能に

ボディカラーはベージュ、スーパーホワイトII、アティチュードブラックマイカの3色。

この中でカタログの表紙も飾っているベージュは、1980年の「ランドクルーザー60」から採用されるランドクルーザーを象徴するヘリテージカラーで、「当時の製造方法を継承することで、独特な風合いを再現しています」としている。


カタログで使われる写真も多くがベージュとなっている(写真:トヨタ自動車)

グレードは「AX」のみの1タイプで、価格は480万円(税込み)となるほか、KITNOで月額4万5760円〜のサブスクリプション購入も可能だ。

30周年時のモデルは期間限定販売であったが、その人気は衰えることなく、今も中古車市場では新車時と同等かそれ以上の価格で取り引きされることもあるほど。


さまざまなアクセサリーも用意され、自分仕様を作り上げるのも楽しみの1つ(写真:トヨタ自動車)

今回、期間限定ではなく継続販売となることで、そしてディーゼル+オートマチックというパワートレインとなったことで、より多くの人が“ナナマルの世界”を味わえるようになったのではないだろうか。

ただし、プレスリリースに月間販売目標などの表示はなく、KITNOのWEBサイトには「納期目処:12ヶ月以上」とある。


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つまり、生産状況が見えづらいということだ。グレードやボディカラーのラインナップが少ないのも、生産性を考慮してのことだろう。

「ランドクルーザー300」や新型「アルファード」「ヴェルファイア」などと同じく、当面は“プレミア価格必須”といえそうである。欲しいと思ったら、早めにディーラーに相談するのがよさそうだ。

(木谷 宗義 : 自動車編集者)