大宮アルディージャはなぜ凋落したのか 恵まれた環境とずさんなマネジメント
11月4日、J2の大宮アルディージャは敵地で清水エスパルスと戦い、4−0で敗れている。残り1試合で、降格圏の21位が確定。J3で(J2クラブライセンスのない)FC大阪が2位以内に入った場合(J3は残り4試合で、大阪は現在4位。2位との勝ち点差は6ポイント)に限り、残留のわずかな可能性は残されているが......。
かつて10シーズン連続J1で過ごし、最高順位5位だった大宮のJ3降格が決定した場合、それは「異常事態」と言える。
「練習施設などハード面の充実ぶりはJ1でも上位。数年前と比べてチーム予算は減ったが、今も売り上げや資産はJ2トップクラスだ。J3に落ちるようなクラブではない」
関係者はそろって首をひねる。なぜ、大宮はここまで凋落したのか?
清水エスパルスに敗れ、悄然とする大宮アルディージャの選手たち photo by Fujita Masato
大宮の練習場は、欧州の1部リーグクラブ並みの施設である。天然芝の整備されたグラウンド、最新のトレーニングルームや、行き届いたメディカルルームを完備したクラブハウス。安心して体を鍛え、技術を改善し、疲労を回復させられる。
そして本拠地NACK5スタジアム大宮はサッカー専用競技場で、三ツ沢や柏のサッカー場に似た味わいがある。ピッチは観客席と近く、選手は沸き立つ熱気に幸せを感じられるだろう。メインにしか屋根がないのは、観客にはマイナスポイントだが。
「恵まれている」
ひと言で言えば、そんな印象のクラブだ。もっとも、そこに罠があった。
「甘えという表現が適切かはわからない。ただ、"残留争いするチームじゃないよな"と外の人たちは思っていて、内部の人も周りにそう言われると、"負けているけど、たぶん大丈夫"となっていた」
2021年シーズン、21位で最下位と同勝ち点だった大宮を率い、最後は16位まで巻き返して残留に成功させた霜田正浩監督はそう言って、「危機感の欠如」に警鐘を鳴らしていた。チームに負け癖が染みついていたのだ。
「そこで僕は、"大丈夫の根拠は何?"というところから話をしました。『僕らは絶対に落ちない。でも、条件はあるよ。戦わないといけないし、どうやって勝つかをちゃんと作っていかないと勝ち点はとれない』と。監督の話をもらった時に何試合か見て、みんな元気がなかった」
【場当たり的なチームスタイルの変更】
「まず、やるべきはメンタルの改善でしたが、負け続けていたチームに自信を持たせるのは難しい。いきなり『自信を持ってやれ』と言っても、なかなかできない。小さな成功体験を積み上げ、"自分たちがやっていることは正しい、これなら降格圏を脱して残留できる"という、明確な道筋を照らす必要があった」
チームは、腰を据えた戦いをすべきだったのだ。
しかし、霜田監督は2022年5月には20位と成績不振で、解任の憂き目に遭っている。改革の途上だった。その後、相馬直樹監督は19位でシーズンを終えたが、2023年も留任した。サッカーの内容は何も改善せず、むしろ凡庸だった。留任理由が不明確だっただけに、2023年は低空飛行に入った。そして5月に最下位で解任となる"皮肉な必然"が起きた。
誤解を恐れずに言えば、大宮はずさんなクラブマネジメントで凋落したのだ。
何年間も、場当たり的なチームスタイルを掲げてきた。年ごとに、攻撃重視と守備重視の戦いを交互に打ち出す。それぞれの基準で集められた選手は、その都度、あぶれることになった。監督のクビをすげ替え、外国人獲得も失敗を繰り返し、そうした効率の悪さで億単位の予算をドブに捨てた。同じ監督でも考え方が変わり、スタイルは根づかず、結果だけが物差しになった。
2017年で、大宮はJ2に降格した。2018年はJ2で大前元紀が得点王になってJ1参入プレーオフを戦い、2019年もJ1に近い状況で踏みとどまっていた。しかし、チームとしての戦い方は朝令暮改で定まらず、戦力は消耗。2020年は15位となって急速に力を失い、J1よりJ3のほうに近づいた。2021年はシーズン途中にGK南雄太が加わって16位と残留にこぎ着けたが、2022年はクラブ史上最低の19位だった。
つまり、降格のカウントダウンは始まっていたのだ。
今シーズン終盤の第36節から第39節まで、大宮は4連勝している。チームとしてのポテンシャルの高さは証明した。一時は奇跡の残留の可能性も見えた。
「残留してほしい、それだけを願っています。大宮はJ3に落ちちゃいけないクラブですよ。崖っぷちではありますけど、開き直った感じで、選手の顔つきも変わりました。希望はあるはずなので、自分もできる限りのサポートはしたいですね」
すでに現役引退を発表していた南は、そう言って後輩たちを叱咤激励していたが、終盤に意地を見せるのが精いっぱいだった。もはやクラブ全体が、"甘さ"を奥深くまで取り込んでしまっていたのだ。
「たぶん大丈夫。どうにかなる」
そのゆるさは、最悪の事態に結びついた。
11月12日、大宮は最終節をホームで戦う。相手は昇格を争っている東京ヴェルディ。順位が確定している大宮に"懸けるもの"はない。だがそういう一戦でこそ、クラブの生き様は問われるのかもしれない。