日米共催ツアーであるTOTOジャパンクラシック(茨城県・太平洋クラブ美野里コース)を制した稲見萌寧は、優勝によって「新しい未来が切り拓かれた」と口にした。新しい未来とは、今大会の優勝者が得られるアメリカLPGAツアーへの挑戦権だ。

「来年行くかどうかは、もちろん、自分ひとりでは決められない。ずっと日本で戦ってきたので、(基本は)日本っていう感じなんですけど、自分の今の気持ちだけで決めるのは違うと思うので、チームで話し合って決めたい」


TOTOジャパンクラシックで優勝を飾った稲見萌寧。photo by Getty Images

 2018年にプロテストに合格し、2019年にツアー本格参戦を果たした。以来、毎年勝利を重ね、2021年には年間8勝を挙げたうえ、東京五輪でも銀メダルに輝いた(2020−2021シーズンの賞金女王の座にも就いた)。

 だが、昨年8月のニトリレディスで勝って以降、13勝目は遠く、実に434日ぶりの戴冠だった。デビューから5年連続で優勝を遂げ、傍目には24歳で順調なキャリアに見えても、賞金女王経験者にとって約1年2カ月の未勝利期間はやはり苦悩があるものだ。

「今年のスタートはよかったけど、4月から6月にかけてはゴルフも、体調も悪くて......。6月(のサントリーレディス)以降、予選落ちこそないですけど、優勝争いはなかった。ほんと苦しい時間が続きました。モヤモヤしたまま(今季を)終わりたくないと思っていました」

 練習しても意味がないんじゃないか――そう思ったこともある。そのたびに、練習あるのみ――と自身に言い聞かせてきた。

「新しく何かを取り入れるとか、チャレンジするということは、私にとっては練習したくなる要素。今年の前半だけで、4回もスイング改造して、よくなったり、うまくいかなかったりを繰り返してきました。今週は、トップにいくまでに体が回りすぎていたので、なるべく耐えるように意識したことが(今回の優勝には)大きかったと思います」

 さらに、前週からは得意のパッティングでプロになった時から続けてきたクロスハンドを順手に戻していた。

「左に出るミスがどうしても嫌で。先週、『もしかしたら......』と思って試したところ、ミスがなくなった。それを今週も続けた感じです」

 最終日は首位の桑木志帆と畑岡奈紗に1打差の3位スタートだった。12番パー5で2オンに成功し、イーグルこそ逃したものの、バーディーを奪い、このホールでボギーを叩いた桑木を逆転。16番をホールアウトした時点では、ペ・ソンウに並ばれていたが、17番のロングホールで再びバーディーを奪って、そのまま逃げきった。

 茨城県にキャンパスがある通信制の高校、大学を卒業した稲見にとって、縁ある地での13勝目となった。

「国体も茨城代表で奈紗さんと出て、優勝した。その時の監督も来てくれていた。優勝できてうれしいです」

 気になるのは、米ツアーへの挑戦だ。その可能性を問われた稲見は、短く、こう答えた。

「50%です」

 悩める時期を過ごしてきた稲見にとって、うれしい悩みがひとつ増えた。