大台到達も“ケセラセラ”。サッカー大好き人間の伊東輝悦、先の見通しは?「49歳にしてノープラン。『なるようになるさ』って感じだね」
Jリーグ発足から日本サッカー界の様々な変遷をピッチ上から見続けてきた49歳の現役Jリーガー・伊東輝悦(沼津)。彼は来年の8月31日に50歳の大台を迎える。
50代で現役を続けている日本人選手は、56歳のキング・カズ(三浦知良=UDオリヴェイレンセ)、50歳でコーチ・通訳兼任の村木伸二(FC大阪)だけ。伊東にもその領域に到達してほしいという期待は高まる一方だ。
「到達したいかどうか...まあ、49も50もそんなに変わんねえな、っちゃ変わんねえかもしれないけど、確かに響きとして50歳でサッカー選手っていうのは、なんか面白しろいなと思うけどね。でも俺がやりたいと言っても、やらせてもらえるかどうか分かんないし」と本人は苦笑していたが、多くの人から届く応援の声には背中を押されるという。
「『伊東選手の頑張りにエネルギーをもらえます』といった声をたまにもらうんですけど、それが僕の励みになってますね。そう思ってる人がいるんだなと。ホントに嬉しいですよね」と伊東は顔をほころばせる。
ただ、今後のキャリアについては、まったく白紙だと本人は強調する。
「先の見通し? ノープラン。49歳にしてノープラン(苦笑)。『なるようになるさ』って感じだね。今はピッチに立ちたいって気持ちしかないけど、人間、誰でも絶対、どっかで辞めるでしょ。そういう時は必ず来るよね。その時になったら、また何かやりたいことが出てくるかもしれないから」と、彼は率直な思いを吐露する。
アスルクラロ沼津に残るか否かは、J2昇格争いの行方、来季以降の陣容やチーム構想次第と言えるだろう。ただ、プレーすることが至福の喜びである彼なら、Jリーグにこだわることなく、下部リーグに身を投じる可能性も少なくない。
稲本潤一や今野泰幸が所属する南葛SCなどを筆頭に、地域リーグにも元日本代表クラスの選手が数多くいる時代になっているだけに、伊東の「50歳で現役」というのは何らかの形で実現するのではないか。
【PHOTO】編集部が厳選! ゲームを彩るJクラブ”美女チアリーダー”を一挙紹介!
去就はともかく、サッカー大好き人間の伊東は必ずサッカーに関わり続けるはず。
約10年前に取得したJFA公認B級指導者ライセンスを今もコツコツと更新し続けており、上位ライセンス取得の意欲も持ち合わせていることから、将来的にはコーチ業に身を投じる可能性も少なくない。
一方で、マンチェスター・シティを筆頭にプレミアリーグの豊富な知識を有効活用し、解説の仕事に就くことも考えられそうだ。
日本代表だった20代の頃、口数の少ない伊東は「メディア泣かせ」と言われていたが、間もなく50歳になろうかという今、トークのスキルは確実にアップ。人を笑わせるのも上手くなった。
「慣れもあるだろうし、やっぱり歳を重ねりゃ、多少は変わるもんじゃないかな。立場も変われば人も変わるしね」と本人は笑っていたが、確かにかつて無口だった日本代表の前田遼一コーチなども、今ではコミュニケーションを堂々と取れる指導者になっている。そういう意味でも、今後の伊東の動向が楽しみだ。
そういった近未来はさておき、今はとにかく沼津のJ2昇格のために、できることをすべてやるしかない。
「今は団子状態だし、他の選手たちも『まだイケるんじゃないか』って考えてるはず。あんまり先のことを考えても意味がないから、1試合1試合に集中して、最後に大きな良い結果が得られればいいかなと思うよね。
その舞台に自分が出るかどうか? そこはあんまり期待しないでください(苦笑)。でもベテランとして、しっかりした立ち振る舞いはしたいと思ってはいるけどね」
そう語る伊東の脳裏に浮かぶのは、清水エスパルス時代の大ベテランだったサントス。16歳年上のボランチは、どこまでもタフで逞しかった。
「サントスは身体もメンテナンスをキッチリやって、ピッチでも、ものすごく走っていた。その姿を見てるから、年長者の影響力は自分なりに分かっているつもり。俺の行動や振る舞いを周りの選手は確実に見ているし、良いも悪いも伝播していくと思うから、良い影響を与えられるように頑張りたいですよ」
大ベテランらしい言い回しを見せた伊東。ただ、彼は単なる生真面目な男ではない。若い頃からパチンコ好きで知られているが、羽目を外す時は思い切り外す。そうやってメリハリをつけながら、自分なりのペースを保ちつつ、ベストパフォーマンスを出し続けてきたから今がある。やはり49歳までキャリアを続けるというのは並大抵のことではない。
数々の歴史を作ってきたレジェンドが今一度、ピッチで異彩を放つ姿を、我々は心待ちにしたいものである。
※このシリーズ了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
50代で現役を続けている日本人選手は、56歳のキング・カズ(三浦知良=UDオリヴェイレンセ)、50歳でコーチ・通訳兼任の村木伸二(FC大阪)だけ。伊東にもその領域に到達してほしいという期待は高まる一方だ。
「到達したいかどうか...まあ、49も50もそんなに変わんねえな、っちゃ変わんねえかもしれないけど、確かに響きとして50歳でサッカー選手っていうのは、なんか面白しろいなと思うけどね。でも俺がやりたいと言っても、やらせてもらえるかどうか分かんないし」と本人は苦笑していたが、多くの人から届く応援の声には背中を押されるという。
ただ、今後のキャリアについては、まったく白紙だと本人は強調する。
「先の見通し? ノープラン。49歳にしてノープラン(苦笑)。『なるようになるさ』って感じだね。今はピッチに立ちたいって気持ちしかないけど、人間、誰でも絶対、どっかで辞めるでしょ。そういう時は必ず来るよね。その時になったら、また何かやりたいことが出てくるかもしれないから」と、彼は率直な思いを吐露する。
アスルクラロ沼津に残るか否かは、J2昇格争いの行方、来季以降の陣容やチーム構想次第と言えるだろう。ただ、プレーすることが至福の喜びである彼なら、Jリーグにこだわることなく、下部リーグに身を投じる可能性も少なくない。
稲本潤一や今野泰幸が所属する南葛SCなどを筆頭に、地域リーグにも元日本代表クラスの選手が数多くいる時代になっているだけに、伊東の「50歳で現役」というのは何らかの形で実現するのではないか。
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去就はともかく、サッカー大好き人間の伊東は必ずサッカーに関わり続けるはず。
約10年前に取得したJFA公認B級指導者ライセンスを今もコツコツと更新し続けており、上位ライセンス取得の意欲も持ち合わせていることから、将来的にはコーチ業に身を投じる可能性も少なくない。
一方で、マンチェスター・シティを筆頭にプレミアリーグの豊富な知識を有効活用し、解説の仕事に就くことも考えられそうだ。
日本代表だった20代の頃、口数の少ない伊東は「メディア泣かせ」と言われていたが、間もなく50歳になろうかという今、トークのスキルは確実にアップ。人を笑わせるのも上手くなった。
「慣れもあるだろうし、やっぱり歳を重ねりゃ、多少は変わるもんじゃないかな。立場も変われば人も変わるしね」と本人は笑っていたが、確かにかつて無口だった日本代表の前田遼一コーチなども、今ではコミュニケーションを堂々と取れる指導者になっている。そういう意味でも、今後の伊東の動向が楽しみだ。
そういった近未来はさておき、今はとにかく沼津のJ2昇格のために、できることをすべてやるしかない。
「今は団子状態だし、他の選手たちも『まだイケるんじゃないか』って考えてるはず。あんまり先のことを考えても意味がないから、1試合1試合に集中して、最後に大きな良い結果が得られればいいかなと思うよね。
その舞台に自分が出るかどうか? そこはあんまり期待しないでください(苦笑)。でもベテランとして、しっかりした立ち振る舞いはしたいと思ってはいるけどね」
そう語る伊東の脳裏に浮かぶのは、清水エスパルス時代の大ベテランだったサントス。16歳年上のボランチは、どこまでもタフで逞しかった。
「サントスは身体もメンテナンスをキッチリやって、ピッチでも、ものすごく走っていた。その姿を見てるから、年長者の影響力は自分なりに分かっているつもり。俺の行動や振る舞いを周りの選手は確実に見ているし、良いも悪いも伝播していくと思うから、良い影響を与えられるように頑張りたいですよ」
大ベテランらしい言い回しを見せた伊東。ただ、彼は単なる生真面目な男ではない。若い頃からパチンコ好きで知られているが、羽目を外す時は思い切り外す。そうやってメリハリをつけながら、自分なりのペースを保ちつつ、ベストパフォーマンスを出し続けてきたから今がある。やはり49歳までキャリアを続けるというのは並大抵のことではない。
数々の歴史を作ってきたレジェンドが今一度、ピッチで異彩を放つ姿を、我々は心待ちにしたいものである。
※このシリーズ了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)