2022最優秀車両は「京急」 通勤型でブルーリボン賞 「今までになかった電車」
京急の1000形1890番台が、鉄道友の会より最優秀車両に贈られる「ブルーリボン賞」を受賞しました。同賞は新幹線車両や特急車が多いなか、今年は通勤型電車、しかも既存形式での受賞に。様々な新機軸が評価されました。
京急39年ぶりのブルーリボン賞
京浜急行電鉄の新造車両1000形1890番台「Le Ciel(ル・シエル)」が鉄道友の会から「ブルーリボン賞」を受賞し、2022年12月4日に京急蒲田駅で受賞式が開催されました。同社の車両にブルーリボン賞が贈られるのは、1983年の2000形以来39年ぶりです。
ブルーリボン賞を受賞した京急1000形1890番台「Le Ciel」(深水千翔撮影。
ブルーリボン賞とは、鉄道友の会が毎年1回、前年に営業運転を開始した新造および改造車両の中で最優秀と認められた車両に贈られる賞です。選考委員会が選んだ候補車両に対して、会員の投票結果に基づき、選考委員会が審議して選定します。今回の式典では、記念のステッカーが貼られた1000形「Le Ciel」1893F編成の前で行われ、鉄道友の会から京急電鉄へ表彰状と記念盾が、それぞれ授与されました。
1000 形「Le Ciel」は2021年5月から運行を開始しました。ロングシートからクロスシートに切り替え可能な自動回転式シート(L/C腰掛)やトイレといった設備を、同社で初めて採用したものです。
鉄道友の会の佐伯 洋会長は祝辞の中で「とても京浜急行らしい電車であるとともに、今までになかった新しい電車だと思っている」と述べた上で、「世界のビジネス都市である東京、産業界を引っ張っている川崎、ファッショナブルな横浜、三浦半島という多くの要素を結んでいるのが京浜急行。『Le Ciel』はバラエティに富んだ設備があり、こうした新しい車両こそ、本当に代表するような車両だと思っている」と話しました。
京急の川俣幸宏社長は1000形「Le Ciel」について、「通勤はもちろん、空港輸送や貸し切りのイベントも含めたレジャー輸送で、すでに沢山の人にご愛顧していただいている」と話し、「(コロナ禍を経て)少しゆったりと快適に移動することも必要なのではないかということを、皆さんも価値観として持ち始めているのではと思っている。新たな価値の中で十分に活躍できるのではないか」と述べました。
ちょっと珍しい車両選定となったブルーリボン賞 何が評価?
京急1000形(新1000形)は、形式としてはすでに誕生から20年が経過しています。様々なバリエーションが生まれており、「Le Ciel」もそのひとつです。新形式の車両以外がブルーリボン賞を受賞した点も異例といえば異例ですが、「Le Ciel」に盛り込まれた様々な新機軸が評価されました。
前出したL/C腰掛により、平常時はロングシート、座席指定時はクロスシートと運用によって変えることが出きるうえ、全座席コンセント付きです。座席幅は有料列車「ウィング号」などで使用している2100形より10mm拡幅した460mmで、京急車両の中で最も広くなっています。
長時間の乗車を想定してバリアフリー対応の洋式トイレと男性用トイレの両方を設置。さらに、1000形ステンレス車から廃止となった前面展望席も復活し、移動そのものを楽しめるような工夫もされています。
また、ウィズコロナ時代を意識し、シートは抗ウイルス効果が確認された「抗菌・抗ウイルス」座席シート地を取り入れるとともに、冬季の暖房と外気導入空調による換気を両立することで、車内換気を維持しています。
鉄道友の会の松田清宏副会長から、京急の櫻井和秀常務に記念盾を授与(深水千翔撮影)。
鉄道友の会は「Le Ciel」を「通勤・通学のみならず観光・イベントなど新たな車両用途を模索している」ことに加え、「最新水準の機器類を積極採用しつつ実績ある安定した仕様も踏襲し、チャレンジングな姿勢と堅実性を兼ねそなえたトータルバランスに優れた車両」と評価しています。
ちなみに、1958年の第1回ブルーリボン賞は小田急電鉄のロマンスカー3000形SEを選定。新幹線車両や特急型の受賞が多く、近年では小田急の70000形「GSE」や西武鉄道の001系「Laview(ラビュー)」、近畿日本鉄道の80000系「ひのとり」が選ばれています。一方で、東京メトロ銀座線の1000系や阪神電気鉄道の5700系「ジェット・シルバー5700」、JR九州のBEC819系「DENCHA」など、通勤形車両が受賞することもあります。