さらばジョイフルトレイン JR北海道「ノースレインボーエクスプレス」 旅を楽しくした30年
JR北海道のリゾート車両「ノースレインボーエクスプレス」が30年の生涯に幕を下ろします。「北の大地は全周視界」をコンセプトに、2階建て車両や天窓などがウリでした。ラストランはリバイバルとなる特急「ニセコ」です。
2023年春に引退を予定
JR北海道は、1992(平成4)年から運行していた「ノースレインボーエクスプレス」を2023年春に引退させると発表しています。「ノースレインボーエクスプレス」は同社6番目のリゾート車両として登場し、「北の大地は全周視界」の考えのもと造られました。
「ノースレインボーエクスプレス」(画像:JR北海道)。
JR北海道は国鉄末期の気動車(ディーゼルカー)リゾート車両を継承し、次々と新たな同種の車両、いわゆるジョイフルトレインを生み出して来ましたが、なかでも「ノースレインボーエクスプレス」は気動車最後のリゾート車両といえるでしょう。前代の「アルファコンチネンタルエクスプレス」などとは違い完全な新車として造られ、車両形式としてはキハ183系に属します。
抜群に眺望の良いリゾート車両
そもそも北海道のリゾート車両は、札幌や新千歳空港から道内のリゾート地までを結ぶ列車用に造られたものです。どの車両も外観は斬新なデザインとされたほか、北海道の車窓を楽しめるよう内装も充実しています。
「ノースレインボーエクスプレス」の先頭車では、先頭部を斜めにカットしたデザインとして展望に配慮され、客室から乗務員室を介して前面展望が楽しめる造りになっています。また前面展望が難しい客席でも、車内の各所に設けられたモニターに前面の映像が映し出されます。登場当時はモニターがブラウン管テレビでしたが、のちに液晶ディスプレイに交換されました。
客室は5両編成のすべてが普通車で、3号車を除いてハイデッカー構造を採用。床を90cm上げたことで、見晴らしの良い車窓を楽しむことができるのです。また窓が高いのも特徴で、ほとんどの客席に天窓があり、明るい車内に仕上げられています。
JR東日本管内を走行したことも
3号車は、ディーゼルカーでは珍しい2階建てとなっています。客席は2階。ほかの車両と内装や車内設備が揃えられており、眺望の良さに変わりがありません。
1階にはラウンジがあり、ソファが設置されたフリースペースになっています。また簡単な厨房設備もあり、かつては客室乗務員がカウンターで、車内販売も行っていました。
リゾート車両は外観が個性的でした。「ノースレインボーエクスプレス」では各号車で車体塗装を変え、窓周りは1号車から順にラベンダー、ブルー、ライトグリーン、オレンジ、ピンクとされています。加えて、この5色を用いたロゴマークもデザイン。なおベースの色はライトグレーのほか、車体の裾にガンメタルグレーをした2色に塗られています。
性能面では北海道内での高速化に対応し、最高速度130km/hで走行可能です。
「ノースレインボーエクスプレス」は登場時3両編成でしたが、半年経たずして現在の2・3号車を連結し5両編成となりました。当初は「はこだてエクスプレス」として函館〜札幌間で使用されたほか、函館〜弘前間の臨時特急「さくらエクスプレス」としてJR東日本管内に乗り入れたこともあります。なお、この際は青函トンネル通過にかかる防火上の理由で、青森〜函館間では電気機関車によってけん引されました。
ほかにも、夏季には「フラノラベンダーエクスプレス」(札幌〜富良野)、冬季には「流氷特急オホーツクの風」(札幌〜網走)で使用されるなど、道内各地を走行しました。
運行終了が発表されてからは、メモリアル運行として「はこだてエクスプレス」、「まんぷくサロベツ」(札幌〜稚内)、「流氷特急オホーツクの風」(札幌〜網走)、「ニセコ」(函館〜札幌:小樽経由)が設定され、2022年11月27日の「ニセコ」をもって引退しました。なおラストランとして2023年4月に、旅行会社専用の団体貸切列車が運行される予定です。
後継車両は、JR北海道の主力車両に成長した多目的車両「はまなす」「ラベンダー」編成として使われる、キハ261系(5000番台)です。