ひとつ操作を間違うだけで大変なことに。

汚水が逆流するくらいだったらマシなほう? 昔の潜水艦

 しばらく海中に潜り続けていることもある潜水艦。海に出ている間は密閉空間という性格上、数々の問題が過去にはありました。現在は改善されたものの、トイレ事情は特に切実でした。


女性自衛官がお試し乗船するほどトイレが快適な海上自衛隊の「うずしお」(画像:海上自衛隊)

 潜水艦というのは、その隠密性を確保するために、船員は長期間に渡り船内で生活することになります。現在でこそ排水の技術が発展しトイレの問題はなくなっていますが、第2次世界大戦中の各国の潜水艦では、かなりの問題でした。

 潜航中にトイレが使用できないタイプの潜水艦もあり、その場合はフタ付きのバケツで用を足すこともあったそうです。旧日本海軍の場合はその面では恵まれており、潜航中でも使用できたそうですが、排泄物を一時貯めておくタンクに高圧空気を注入して海中に排出する方法をとっていたため、トイレ内の圧力が低いとタンクから逆流することがあり、その際は悪臭で艦内が大変なことになったそうです。

 しかし汚水があふれるくらいなら、まだマシかもしれません。ドイツのU-1206という潜水艦は1945(昭和20)年4月14日に、乗組員がトイレ操作を誤ったことで潜航不能に陥りました。

 同艦のトイレ排水機構はとても複雑で、ちょっとでも操作を間違えると、すさまじい勢いで逆流する仕様になっていました。そして運悪く操作を間違ってしまい、流した汚水により、艦内には浸水が発生。潜航時に動力として使う蓄電池が汚水に触れてショートし、猛毒の塩素ガスが発生するという最悪の事態になり、緊急浮上しました。この浮上した場所が悪く、イギリス軍の哨戒機にすぐ見つかり自沈処分することに。乗組員はイギリス海軍の捕虜になったそうです。

 現在、海上自衛隊が所有する潜水艦には快適なトイレだけでなく、冷暖房完備でシャワーなどの設備も充実しています。2018年に海上自衛隊における潜水艦への女性自衛官の起用できるよう配置制限を解除したのも、このような環境の改善があったからかもしれません。