【スペシャル鼎談】中村俊輔×中村憲剛×佐藤寿人「俊さんにどうしても聞きたかったこと」
中村憲剛×佐藤寿人 meets 中村俊輔
特別編「日本サッカー向上委員会」
「今、誰に会ってみたいですか?」
webスポルティーバで大人気の連載対談『日本サッカー向上委員会』で初めての鼎談企画。中村憲剛氏と佐藤寿人氏に鼎談相手の希望を聞いたところ、返ってきた答えは「俊さんにお会いしたい」。
もちろん「俊さん」と言えば、中村俊輔選手をおいてほかにはいない。日本サッカー界が誇るピカイチの「レジェンド」である。
恐る恐る打診してみた......すると、中村選手は快く鼎談企画を受けてくれた。そして当日、対面するやいなやスタートから3人のクロストークは止まることなく大盛り上がり。いったい、どんな話題が彼らのサッカートークに火をつけたのか?
11月14日(月)に集英社より刊行される『ケンゴとヒサト サッカー人生以外にも役に立つサッカーの話』より一部抜粋してお届けする。
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中村俊輔選手を特別ゲストに迎えたスペシャル鼎談が実現!
―― ふだんは『日本サッカー向上委員会』というwebスポルティーバでの連載対談で憲剛さんと寿人さんにいろんな話を聞いているのですが、今回は特別編ということで俊輔さんにご参加いただきました。経験豊富な俊輔さんにふたりが話を聞く、という形で進めていければと。
俊輔 いや、俺のほうがふたりに聞きたいことがありますよ。憲剛はJ2の時からフロンターレにいて、キャプテンもやって、クラブを大きくしたレジェンドだし。寿人もサンフレッチェでそういう存在だった。どうやってチームの中で振る舞ってきたとか、ボランチの動きとか、FWの動きとかもわからないし。そういうのって現役中は聞けないから、知りたいよね。
寿人 いやいや、今日は僕らが俊さんの話を聞きに来たんですよ(笑)。
―― 代表の時はあまり話さなかったんですか?
俊輔 寿人とはしゃべってないんじゃない?
寿人 いやいや、話しましたよ。絶対に覚えてないと思ってましたけど(笑)。僕はあの時に俊さんに言われた言葉は今でも忘れませんよ。それこそ広島の青山敏弘が結果的に成長できたのも、僕からすると俊さんと憲剛くんがいたからなんですよね。
俊輔 なんで?
寿人 2007年にヨーロッパ遠征があったじゃないですか。その時に地元のクラブと練習試合をして、僕は3点取ったんですよ。俊さんからパスをもらって決めたゴールもあったので、褒められると思ったら、ダメ出しされたんです。「お前さ、俺が出せる状況になってから動いてるじゃん」って。
たしかにその時の僕はそういう感じだったんですけど、それだと世界には通用しないということなんでしょうね。「お前がほしいタイミングでほしい場所に動いて、それに対して出すか出さないかは俺が決めるから、自分発信で動いてくれ」って。それがものすごく衝撃的でしたね。
俊輔 怖い先輩だな。そんなこと言った?
寿人 言いましたよ(笑)。それで、クラブに持ち帰って、青山に俊さんに言われたことを伝えたんです。「自分のタイミングで動くから、最終的に出すか、出さないかはお前が決断してくれ」って。それを意識させたことで彼は徐々によくなっていったんです。
あと、俊さんと憲剛くんのプレーの映像を見てほしいとも伝えていました。あのふたりはゴールに直結するパスを出せる選手だからって。だから、青山が成長できたのは僕の要求というよりも、ふたりの存在があったからなんですよね。俊さんは覚えていませんでしたが(笑)。
憲剛 見事に覚えていなかった(笑)。
俊輔 俺、そういうこと、いろんな選手に言ってるのかな?
憲剛 たぶん、そうだと思いますよ。
俊輔 自分の生命線だからね、FWは。ヤナギさん(柳沢敦)が俺にそうさせてくれた。何かを言ってくるわけじゃなくて、何回も、何回も動き回る。動き出しが速いし、駆け引きもずっとやっているから、こっちが常に見ていないと動きが把握できない。そこで成長させてもらったよね。
―― 憲剛さんと俊輔さんのファーストコンタクトは、どんな感じだったんですか?
憲剛 僕は俊さんの桐光学園時代から見ていますからね。学年的には僕が1年生時の3年生で。もちろん対戦したことはありませんけど、ワールドユースも見ていたんで、こちらからするとテレビの中の人ですよ。2個上でこんな人がいるのかと。苗字が同じなので、勝手に意識していた部分もちょっとありました。そこを目指すという意味では、勝手にライバルだとも思っていましたね。
俊輔 面白いね、そういう話。今まで聞いたことなかったから。代表の時に言ってくれればよかったのに。
憲剛 なかなかあの時は言えないですよ(笑)。僕が代表で俊さんに初めて会ったのは、2007年3月のペルー戦だったんですよ。Jリーグでの対戦経験はなかったので、その時に初めて「中村俊輔」と会ったんですよね。高校の時に見て以来、ずっとテレビの中の人だったので、初めて会った時は、ずっと緊張してましたよ。あまりしゃべらない人だと思っていたので、話しかけづらかったですし。
俊輔 しゃべらないね。
憲剛 インタビューとか見ていても、無骨な方なのかなと。
俊輔 暗いからね。
憲剛 いや、暗いとかじゃなくて、多くを語らないという意味です(笑)。こっちはずっと緊張してたんですけど、試合をやるわけだからコミュニケーションを取らないといけないじゃないですか。
俊輔 しゃべったっけ?
憲剛 初日のホテルでちょっとだけ話して、その時にフロンターレのこと知ってくれていたのはうれしかったですね。
俊輔 優しかった?
憲剛 優しかったですよ。
俊輔 よかった。「お前のプレーはさ」みたいな偉そうなこと言っていたかなと。
憲剛 いや、大丈夫でした。俊さん、どれだけ気にしているんですか(笑)。あの試合は僕が途中から出たので、ほとんど絡みがなかったんです。ちゃんと一緒にプレーしたのは、アジアカップくらいからですね。でも、サッカーの話をした記憶はほとんどないんですよ。