ブンデスリーガ第14節、フランクフルトはホッフェンハイムをホームに迎え、4−2で勝利した。フル出場した鎌田大地は、ジブリル・ソウの先制ゴールをアシストするなど、好調ぶりを見せている。

 日本代表の攻撃的MFのポジションは、タレント揃い、激戦区とされてきた。森保ジャパンも発足当初は中島翔哉、南野拓実、堂安律の"三銃士"が活躍。その後は若きタレント久保建英やスピードスター伊東純也も加わった。そんななか、最後の最後にその中心で存在感を発揮しているのが鎌田大地だった。

 今年5月、所属するフランクフルトでヨーロッパリーグ(EL)優勝を果たすと、「僕自身は、フランクフルトクラスもしくはそれ以上のクラスでプレーしている日本人は2、3人しかいないと思っていて、代表に選ばれて当然の環境でプレーはしてると思う」と、強気の発言をした。

 当時はまだ代表では主力とは言えず、「クラブでは活躍するけれど代表では何か物足りない」という評価も少なくなかった。実際、昨年9月から始まったW杯アジア最終予選では、全10試合中3試合出場にとどまっていた。それでも、クラブで自信と実績をつけた鎌田は「自分を選ばないなんてあり得ないでしょう」とでも言いたげだった。

 その後、6月と9月に行なわれた親善試合で、なくてはならない存在であることを証明し、W杯メンバー入りを果たした。背番号は15だが、「10番がふさわしい」という声もあるほど。この半年間で、代表でもそこまでの地位を確立することとなった。


ホッフェンハイム戦にフル出場し勝利に貢献した鎌田大地(フランクフルト)

 そんな鎌田だから、1日の代表メンバー発表に、なんの不安もなかったと言う。ドイツ時間で朝6時に行なわれた発表も特にチェックすることなく、周りから「おめでとう」と言われて気づいたという。

 この日はちょうどチャンピオンズリーグ(CL)第6節スポルティング・リスボン戦当日で、すでにリスボン入りしていた。その夜は自らゴールを決め、クラブ史上初のCL決勝トーナメント進出に貢献。特別な1日になった。

「自チームの延長戦がW杯」

「今は自分にとってすべてがうまくいってると思う。ブンデスリーガでもいい位置につけて、個人としても数字を伸ばせている」

 鎌田はこの日のゴールでCLでは3試合連続得点。ブンデスリーガでも、第14節を終えすでに7得点4アシスト。その活躍ぶりにはひとつの曇りも見当たらない。

 ただし、代表に対しての特別な気負いはないと、あらためて強調する。

「これもずっと言ってますけど、ワールドカップのシーズンではあるけれど、ワールドカップのためにはまったくプレーしてない。自チームでの延長戦がワールドカップだと思っていて、今、とてもコンディションもいいし、数字も残してきて、ある程度自信もあるというのは、チームでのプレーにフォーカスしたからこそだと思っています。だからこそ代表にうまく行けると思うし、これが自分のやり方で、間違ってないかなというふうに思います」

 チームで全力を尽くすからこその代表。それは自身のパフォーマンスについてだけでなく、CL決勝トーナメントやブンデスリーガでの上位争い(第14節終了時点で4位)という環境に身を置くこと自体がW杯につながっているというのだ。

「ドイツとスペインの代表選手はCLに出てるような選手しかいないので、そういう意味では同じ土俵にいられるというのはいいことだと思います」

 CLがドイツ代表、スペイン代表の基本レベルだとすると、日本は海外組が増えたとはいえ、まったく及ばない。今季CLに出場した日本人は6選手いるが、決勝トーナメントに進出したのは結局、鎌田と長谷部誠だけだった。その意味では、現在の欧州のトップレベルを肌で知る数少ない貴重な選手でもある。

「僕自身はいつも言ってますが、ワールドカップもそうですけど、個人の目標として、CLの決勝トーナメントにいつも出るような大きなクラブでやりたいという目標がある。僕的にはもう26歳で、常にこういうチャンピオンズのような舞台でプレーしないとダメだと思います。個人的にもそれはすごく大事なことです」

 フランクフルトは鎌田がイメージするような欧州のビッグクラブとまではいかない。一瞬ではなく、常にこの舞台で戦うことを目標にしているのだ。

 鎌田は今、フランクフルトでの自らのポジションについて「チームで自分が絶対的な選手だってわかっている。数字も重ねてきているので、たとえPKを外しても誰も文句を言えないと思う」とまで言うほどの自信を持っており、実際にそれだけの信頼を勝ち得ている。

 W杯までリーグ戦は13日のマインツ戦を残すのみ。鎌田の力はドイツ、スペインといった強豪相手にどう発揮されるのか。カタールで躍動する姿が楽しみだ。