カーリングのパンコンチネンタル選手権(以下PCCC)がカナダ・カルガリーで行なわれた。

 これは、昨季までアジア太平洋王者を決めるパシフィックアジア選手権と、北米王者を決めるアメリカズチャレンジが統合された新設大会で、上位5カ国には世界選手権の出場権が与えられる。

 同大会にカーリング女子日本代表として出場したのは、5月の日本選手権を制したロコ・ソラーレ。北京五輪を経て、世界的にも多くのチームが選手の入れ替えなどをするなか、吉田夕梨花、鈴木夕湖、吉田知那美、藤澤五月、石崎琴美という5人のメンバーを動かさずに新シーズンを迎えた。

 北京五輪で銀メダルを獲得し、「銀メダルだったからこそ、世界一になってみたいという気持ちは強くなっている」と吉田夕が率直に語れば、鈴木は「チームとして、決勝の経験が少ない」と分析していた。

 さらに、「本当に強いチームは、序盤で黒星がついても、調子が悪くても、アイスが読めなくても、最後はファイナルの舞台に立っている」とは、吉田知の言葉である。

 ファイナル慣れ――それが、女子日本代表である同チームの、今季のテーマのひとつだ。

 そこで、アジアのライバルに加え、カナダやアメリカといった強豪国が出場するこのPCCCでも、まずはファイナルに進むためには何が必要か。それを考えたうえで、ラウンドロビン序盤はアイスリーディング(氷を読むこと)に注力した。

「アリーナ独特のゴミが多い、(石がアイスに)噛みやすかったり、石のクセが出やすいアイス」と鈴木がチェックしたように、アリーナアイス特有の変化やトラブルの可能性をチームで共有。シートごと、ラインごとの滑り具合や曲がり幅の確認を繰り返した。

 初戦のアメリカ戦を落として黒星スタートとなったが、「決勝に行くには敗戦も必要だなと思っていた。ちゃんとトライしての失敗をすることができた」とは吉田知の弁。敗戦さえも、むしろ収穫かのように捉えていたことは象徴的だった。

 ラウンドロビン最終戦でカナダにも敗戦してしまうが、翌日の準決勝で再び対戦した際にはしっかりとリベンジを果たし、目標としていたファイナル進出を決める。

 一度負けている相性の悪い相手に対して、「先攻の時にどう戦う、後攻の時にどういう気持ちで戦うか。今までやってきた相手(カナダ代表のチーム・エイナーソン)の作戦であったり、JD(ジェームス・ダグラス・リンド)コーチが過去の試合を振り返って、『こういう戦い方がいいんじゃないか』とみんなで共有した」(藤澤)という、JDリンドコーチの後方支援も大きな支えとなった。

 結果的に韓国と対戦した決勝では、アイス、石の情報がそろっていた状態で迎えることができ、終始有利な局面を作り続けた。終盤、極端に重くなるアイスに戸惑って追い上げられる場面もあったが、延長戦の末に8−6で勝利した。

 10エンドで相手に1点を与えてもやむを得ないと冷静に判断したこと。続くエキストラエンドでは、ミスが出ながらも浮き足立たずにシンプルなショットを選択し、クリーンな展開をファイナルの大舞台で作れたこと。そのうえで、勝ちきったこと。これらは、かなり大きな収穫となった。


パンコンチネンタル選手権を制したカーリング女子日本代表

 大会後のオンライン会見で、藤澤は「予選で得た(アイスの)情報プラス、決勝戦だからこその新しいアイスの情報で、次の大会に臨んでいる気持ち」と、大会終盤の心境を振り返ったが、ラウンドロビンで出たミスを伏線にし、敗北すら吉兆へ昇華させるチーム力の高さを示した。"負けられる強さ"を得て、またチームはひとつ階段を上ったことになる。

 今大会の結果によって、日本は3月にスウェーデンのサンドビーケンで開催される世界選手権の枠を獲得した。1月末に北見市常呂町で開幕する日本選手権の優勝チームが世界選手権に出場することになる。

 もちろんロコ・ソラーレは、女子日本代表のまま世界選手権初優勝を目指すために、まずは日本選手権の連覇を狙う。また、それとは別に、チームにはワールドツアーの上位タイトルであるグランドスラムのチャンピオンズカップ(2023年カナダ・レジャイナ)の招待状が届くはずだ。グランドスラム初制覇も同時に視野に入った格好だ。

 宿願の世界一へ。彼女らの可能性は広がり続けている。