秋季県大会の口惜しさもぶつけて桜丘、豊川に7回逆転勝ちこの日、2安打した桜丘の4番・小栗俊太君

<第147回中日旗争奪全三河高校野球大会:桜丘5−2豊川>◇30日◇準決勝◇豊橋市民

 今秋の全三河大会準決勝は、東三河勢同士と西三河勢同士の対戦となった。

 東三河私学3強のうちでも過去にセンバツベスト4などもあり、実績で上回っているのが豊川だ。この秋も東三河予選は1位で通過し、県大会でも優勝した東邦には敗れたものの、ベスト8に進出。安定したところを示した。これに対する桜丘は、この秋は東三河地区予選は1次リーグでは2位となり、順位決定トーナメントから、5位で県大会に進出した。しかし、県大会前に多くの部員が新型コロナに罹患。昨秋もコロナ禍で出場辞退となったが、今秋は大幅メンバー入れ替えで挑むことはできたものの、初戦で名古屋市の進学校・明和に大敗。やや不本意な形で秋季大会を終えてしまった。それだけに、この全三河大会で1つの成果は示したいところでもある。

 初回、豊川は桜丘の先発左腕・湯地 隆登投手(2年)の立ち上がりを攻める。先頭の束野 希空外野手(2年)が安打で出ると、バント後、四球と遠渡 真輝人内野手(2年)の内野安打で1死満塁。しかし、ここから湯地が踏ん張って後続を抑える。

 その裏、桜丘も2番・奥田 翔星内野手(1年)が中前打するが、豊川の先発左腕、鈴木 爽太投手(1年)は、併殺で切り抜けた。こうしてまずは、両左腕が、持ち味を出しながら粘るという形で始まった。

 試合は両投手の投げ合いという展開になっていった。ともに打たせて取っていくというスタイルだが、それだけに、守りもしっかりとしており、引き締まった試合になっていった。5回が終わって0対0。豊川は3安打、桜丘も2安打で、お互い突破口がつかめないという状況でもあった。

 後半になって、少ないチャンスをどちらがどう生かしていくのかというところに興味が向かった。

 豊川は6回、1死から3番・モイセエフ ニキータ外野手(1年)が左前打すると、四球と伊藤 隆成捕手(2年)の内野安打で初回以来の1死満塁を作る。ここで6番・岸本 斗壱内野手(2年)は、しぶとく一、二塁間をゴロで破り、2人がかえってついに均衡を破った。

 その裏桜丘も、1死から1番・根木 哲汰内野手(1年)が右前打で出ると、けん制悪送球で一気に三塁まで進んで、得点機を得た。しかし、後続に1本が出なかった。こうして、試合は豊川のペースで終盤へ向かっていくのかと思われた。

 豊川は、7回の攻撃で投手に代打を出したこともあって、その裏から長谷川裕記監督は、まさに満を持して…という感じでエース川口 颯太投手(2年)を送り出した。2点リードの残り3イニングでエース登場。盤石の逃げ切り態勢かと思われたが、ここから思わぬ展開になっていった。

 桜丘としては杉澤哲監督は、「実は、川口君対策しかしてきていなかったので、ようやく出てきてくれたという感じだった」と言うところで、これで打線も一気に「よしっ!」という雰囲気で活気づいた。

 桜丘は先頭の4番・小栗 俊太捕手(2年)がややボール気味の球をたたいて左前打。続く和田 聖輝内野手(2年)は四球で一、二塁。林 貴弘内野手(2年)のバントは悪送球を招いて1人帰って、なおも二、三塁。続く7番・鈴木 悠斗外野手(2年)の打球はフラフラと二塁後方に上がったがポトリと落ちて安打となり三塁走者が生還して同点。さらに、8番・小山 勝己外野手(2年)の適時打で逆転すると四球で無死満塁となり1番・根木のボテボテ投手ゴロの間に三塁走者がかえって4点目。なおもスクイズが野選となり、この回5点で桜丘は一気にひっくり返した。

 このリードを湯地がしっかり守り切った。9回は死球と失策で複数走者を背負ったものの、最後まで落ち着いていた。湯地は、背番号8だが、秋の1次予選では1番をつけていたという。「今のチームは、大会ごとに1番が変わっているのだけれども、湯地が一番安定はしている」と杉澤監督も言うように、最後まで制球を乱すことなくしっかりと投げられていた。また、守りも大きなミスがなかったというのも勝因となった。

 豊川としては、6回に均衡を破る2点を奪ったものの、7回に1番・束野が二塁打した後に、続けなかったことも痛かった。

(取材=手束 仁)