米アップルのタブレット端末「iPad」の最新シリーズで、充電、データ伝送規格「Lightning」が姿を消す。スマートフォン(スマホ)「iPhone」でも、今後LightningからUSB-Cに移行するのだろうか。

2022年10月19日に予約受付を開始した新型iPad(第10世代)は、「USB Type-C」コネクタを採用している。他機種「iPad Pro」「iPad mini」「iPad Air」ではすでにUSB-Cを導入しており、iPadシリーズ内では規格が統一されたかっこうだ。

EUのUSB-C統一法がカギ

アップル以外のスマートフォンや周辺機器で広く採用されているUSB-C。互換性や充電の速さといったメリットから、インターネット上の報道ではiPhoneにもUSB-Cの採用を期待する向きがたびたび浮上する。しかし、22年9月16日発売の最新機種「iPhone 14」「14 Pro」シリーズはLightning規格を採用している。

ITジャーナリストの三上洋氏に取材した。今後のiPhoneは、USB-Cに移行せざるを得ないと分析する。2023年秋に新機種が発売されれば、採用されるのではないかとの予想だ。

根拠は、EU(欧州連合)で進められているUSB-C統一法だ。EU内で発売される全てのスマホやタブレットに、USB-Cポートを装備するよう義務づける法律で、法案は22年10月4日に欧州議会で採択された。各スマホメーカーは、2024年末までに対応しなければならない。

三上氏によると、EUはアップルにとってiPhoneを売り出すスマホ市場として無視できない存在。同社も統一法への対応を行うとみる。

EU向けにのみUSB-Cを搭載したモデルを製造し、他地域では従来通りLightning搭載モデルを販売するという手法も考えられる。しかし生産コストがかさみ効率的ではないため、全地域でiPhoneの規格をUSB-Cに一本化するのではと三上氏は話す。「Ligtningケーブルは無くなるのだと思います」。

Lightning採用から10年

Lightningは2012年発売の「iPhone 5」に搭載されて以来、「iPad」「iPod touch」といったアップルの主要な「iOS」(基本ソフト)端末に次々と採用されていった。

転機は、2018年発売のiPad Pro「11インチ」モデルと「12.9インチ」(第3世代)モデル。両モデルでLightningではなくUSB-Cが採用されたのを皮切りに、iPad Airシリーズでは2020年発売の第4世代で、iPad miniでは2021年の第6世代でも移行がなされた。

上述のiPad mini(第6世代)と同時に発表された、無印の「iPad」(第9世代)ではLightning「続投」となったが、今回の第10世代でついにUSB-Cへの移行が決まった。

iPhoneに先んじてiPadでUSB-Cが導入されたのは、バッテリー容量の関係ではないと三上氏は推測する。iPhoneよりも大型なiPadでは、大容量のバッテリーが採用されている。一般的にUSB-CはLightningよりも高速な充電が可能なため、iPadではUSB-Cを搭載するメリットが大きかったのではないかとした。