2022年10月中旬、都内を走る青梅線が一部区間で終日運休のバス代行運転になりました。その理由は、中央快速線にグリーン車を走らせるために必要な、青梅駅の改良工事です。かなり大規模な工事になっています。

青梅駅、なぜ改良が必要?

 JR東日本が2022年10月15日から16日にかけ、青梅線青梅駅で線路切り替え工事を実施。これに伴い15日には河辺〜青梅〜日向和田間が終日運休し、バスによる代行輸送になりました。その前日に青梅駅へ赴くと、ふだん見かけない大型の“鉄道重機”がスタンバイしており、いかに大規模な工事であるかがうかがえました。

 工事はそもそも何のためかというと、中央快速線などで運用しているE233系へのグリーン車を導入するにあたり、青梅駅のホームを延伸する必要があったからです。


青梅駅構内で待機する鉄道クレーン車「KRC810N」(深水千翔撮影)。

 JR東日本では2024年度末までに、中央快速線と青梅線を走るE233系を現行の10両編成からグリーン車2両を入れた12両編成にする計画を発表しており、これに対応するためグリーン車運行区間に当たる東京〜大月(山梨県)間と 立川〜青梅間の全44駅、ならびに車両基地などで、ホーム延伸を含めた駅改良工事や線路改良・信号改良工事を行っています。

 この一環で、すでに青梅線内では拝島駅において1番線の五日市線ホームを延伸するための線路切り替え工事を2021年11月13日から15日にかけて実施しています。そして今回は、青梅駅において1・2番線ホームの延伸を目的とした、線路の配線変更と既存ホームの撤去・拡幅工事を行ったのです。

 これは現在の青梅駅の構内配線では、2番線の線路が邪魔をして1・2番線ホームの延伸が難しいからで、構内の一部の線路を撤去し、新しい線路を敷設することによって、ホーム延伸を可能にするというもの。新しいホームは、奥多摩方面に向かってやや曲がった形になる計画で、2番線の線路もそれに沿ってカーブを描く線形になる模様です。

激レア車両「鉄道クレーン車」なんと2両も!

 工事前日の10月14日には、線路脇に置かれた2つのトラバーサー(長尺物を平行移動させる装置)の下にそれぞれ新しい分岐器(ポイント)が置かれていることが確認できました。一方で、奥多摩方面には3番線ホームに沿って新しい線路も用意されており、工事当日に向け準備万端という雰囲気でした。

 このトラバーサーは、JR東日本の東京建設プロジェクトマネジメントオフィスが運用する鉄道クレーン車「KRC810N」が線路などを吊り上げる際に使用するものです。青梅駅の工事では2台のKRC810Nが立川方面と奥多摩方面にそれぞれ分かれ、一気に線路の敷設作業を行うことで工期の短縮を図っています。なお、線路の切り替えが終わった青梅駅では今後、1・2番線ホームの延伸工事が行われる計画です。


青梅駅構内に留め置かれた真新しい分岐器(深水千翔撮影)。

 ちなみに青梅駅の線路切り替え工事で活躍した鉄道クレーン車KRC810Nは、2015(平成27)年の導入以来、拝島駅の線路切り替え工事や品川駅の改良工事など数多くの現場で活躍しています。同車両が装備するクレーンの最大吊り性能は73.5t、自走最高速度は30km/hとのこと。なお、吊荷のまま自走できるほか、架線下の狭い空間で重量物を吊り上げる作業を行うため、水平吊りで大きな能力を発揮できるようになっています。

 このような優れた施工能力を持っている鉄道工事に特化した特殊車両KRC810Nが、2台揃って間近で見られる機会はそうそうありません。筆者(深水千翔:海事ライター)なりに2両揃った理由を推察してみると、青梅駅なら施工場所での留置が可能で、上下両方向で分岐器と線路の交換を伴う大規模工事を1日で施工するという条件が揃ったからでしょう。

 なお、前述したように中央快速線のグリーン車は2022年10月現在、2024年度以降にサービスを開始する予定となっています。よって、それまでの間、グリーン車導入に向けた改良工事が断続的に青梅線などで行われると思われます。