【テレワーク普及で雇用は二極化】いま企業が取るべきウイズコロナ&アフターコロナ戦略とは - 大関暁夫
※この記事は2020年06月12日にBLOGOSで公開されたものです
現下の新型コロナ危機は、政府の緊急事態宣言解除以降、県ごとに自粛要請が緩和に向かい、最初の感染ピークは過ぎたというのが一般的な世間の認識ではないでしょうか。
しかしこの先、まだ第二波、第三波が起こる可能性は高いと言われており、ビジネス界でビフォーコロナ状態への後戻りはないということはもはや常識になった感が強いです。
すなわち、今後各企業は「ウイズコロナ」をキーワードとしたニューノーマル(新常態)を受け入れつつ、これに対応していくことが求められてくると言えます。では企業は、この先の流れをどのように読みいかなる対応をするべきなのか、探ってみたいと思います。
新型コロナが引き起こした逆戻りできないパラダイムシフト
まず、なぜビフォーコロナ状態への後戻りはないのでしょう。コロナ危機が終息に向かいアフターコロナ期に入るためには、集団免疫の獲得かあるいはワクチンや治療薬が世界中に十分行き届いた段階と言われており、疫学専門家の意見の大勢はそこに至るまでには1年では無理、早くとも1年半から2年、あるいはそれ以上かかると指摘されています。
この期間を現在一般的にウイズコロナ期と呼んでいるわけなのですが、企業マネジメントで考えると1年半から2年は、短期でなく十分中期と言える長さになるわけなのです。
すなわち短期であるなら企業戦略も対症療法が可能ですが、中期となれば企業はそのビジネス姿勢から考え直していく必要があるわけで、後戻りはできないわけなのです。
もうひとつ、ビフォーコロナ状態への後戻りはないことの大きな理由があります。近代以降におけるビジネス上の変革の歴史を紐解くと、産業革命以降インターネットの登場に至るまで、これまでのビジネス領域でのパラダイムシフトは全て技術革新が先行し、それに合わせて構造改革が迫られるというケースでした。
しかし、今回のコロナ変革は、新型コロナの感染拡大によりまず先に構造改革に迫られ、その構造改革をいかにうまく運んでいくかという観点で技術革新が求められていくという流れであり、言ってみると近代ビジネス界が未経験のパラダイムシフトなのです。
構造改革が先行するゆえ、逆戻りのない世界規模での大きなパラダイムシフトが起きると言えるのです。新型コロナがもたらすビジネス界の変革は、戦後最大のものになるだろうと言われる所以はここにあります。
成果主義導入が進み雇用は二極化
では、コロナとの共存がもたらすパラダイムシフトで、一体何が変わるのでしょう。既に起こりつつあるところからの流れに沿ってアフターコロナ期の世界に至るまで、想定されるいくつかの変化をあげてみたいと思います。
まず、既に変わりつつある点から見渡せば、コロナ感染防止に端を発したリアルの人と人の接点を減らすという中で、急激な広がりをみせるテレワーク化、オンライン化の流れです。この潮流はもはや止められるものではなく、やはりコロナが終息したからと言って元に戻ることはないでしょう。
その影響で変わることとして分かりやすいのは、企業と従業員の関係が大きく変わるということです。テレワーク化が進めば在宅勤務が当たり前になり、従来の時間拘束型の雇用契約は成り立たなくなり、成果契約を基本とした雇用関係あるいは委託契約関係がごく当たり前になっていくでしょう。
それに従い、人材は雇用側から従来以上に選別され、二極化が進みます。優秀な人材は複数社と高額で成果契約しワークシェアリングを実現することになるでしょうが、期待される成果を上げられない人材は、定型業務を低賃金で引き続き時間拘束契約で雇用される、という二極化につながることが想像に難くありません。
テレワーク化と同じ理由で、セールスのオンライン化も進みます。対消費者向け小売は従来以上の伸びでEC比率が高まっていくでしょう。さらに注目しておくべきは、これまで対面を原則としてきたBtoB営業も、オンラインセールスへの移行が大きく進むであろう点です。
ファストマーケティング社が5月におこなったアンケート調査では、既にオンライン商談を始めたという企業が4割弱あり、今後アフターコロナ期に向けオンライン商談を進めていきたいと回答した企業は6割を超えています。
今後のビジネスの拡大に向け各企業は、BtoB営業においても早期にオンライン商談の環境を整える必要がありそうです。
オフィス規模、人員の縮小で有事に強い体制構築へ
テレワーク化、オンライン化の進展はさらに、ダウンサイジングという動きにもつながります。ひとつはオフィスのダウンサイジングです。
テレワーク化、オンライン化により、リアルのオフィスは従来の半分以下でも機能させることが可能になります。付き合いのある従業員50人規模の企業では、業務のテレワーク化、商談のオンライン化を進めた結果、7月から現状の約3分の1のオフィススペースへの転居を決めました。
また、オフィスだけでなく人員のダウンサイジングも進みます。テレワーク化によりワークシェアリングが進めば、業務のアウトソーシングは環境が整い大きく進展します。
アフターコロナ期に向けては、考えうるダウンサイジングによるコスト削減、効率化により、いつ何が起きるか分からない有事発生に強い体質をつくるということも重要になるでしょう。
変革に消極的な者は敗れ、積極的に前進する者が生き残る
上記を踏まえて産業的な観点で見渡せば、コロナのダメージが大きい一部業界ではプレイヤーの入れ替わりが起きそうです。
いや業界問わず、新型コロナ危機に対応できない企業は退場を余儀なくされ、替わってウイズコロナ、アフターコロナのニューノーマルである、オンライン化、ダウンサイジング化、ワークシェアリング化、キャッシュレス化などを踏まえ、新たなビジネスモデルをもった者の業界新規参入があるでしょう。
変革の時代には、古いものに固執する者、前進に消極的な者にはピンチが訪れ、前向き、先取り姿勢の者には大きなチャンスが訪れるのです。人も企業も二極化が進み、二極の下位は淘汰され、上位は市場の活動領域を広げていくことになるでしょう。
以上を踏まえ、いま企業経営者に一番心してほしいことは、ビフォーコロナへの逆戻りはないという認識の下で、上記のニューノーマルを理解しそれに合わせて自社の戦略をゼロベース姿勢で見直しに取り組むべきということです。
今回の変革は生やさしいものではありません。心すべきは、大企業も中小企業も同じです。いやビジネスマン個人もまた同じことでしょう。
何もせずに流れに身を任せるという姿勢では、二極化の下位に追いやられてしまうという意識をもってアフターコロナに立ち向かう必要があるでしょう。変革の時であればこそ、いち早くニューノーマルに立ち向かった先には大きなチャンスが開かれるはずです。