まずは地下アイドル本人から!? 交流会以前に新型コロナウイルスの感染チェックを! - 渡邉裕二
※この記事は2020年02月22日にBLOGOSで公開されたものです
「天皇誕生日の一般参賀の見送り」「東京マラソン一般参加選手の出場中止」、さらには「嵐の中国・上海公演の中止」…。中国・武漢から拡大した新型コロナウイルスは日本でも各方面に大きな影響を及ぼし始めている。
「一般参賀」の行事は、昭和23年(1948年)から始まったが「ウイルスの流行」を理由に見送られるのは、前代未聞のこと。まさに「非常事態」だろう。
今回の見送りについて社会部の記者は、
「一昨年の12月23日に行われた上皇さまの誕生日を祝う一般参賀には、8万2850人が訪れました。もちろん天候にもよりますが、今回は、令和になって最初の天皇誕生日ということもあり、全国から前回を上回る参賀が見込まれていました。しかし、現時点の感染状況を考えれば、やはりリスクの方が大きいと判断したのだと思います」
イベント自粛の流れは3月1日の「東京マラソン」にも波及。主催者側は「都内で複数の感染者が確認される中、一般ランナーが参加する本大会を実施することは困難」と判断し、〝有料〟で参加するはずだった一般ランナー抜きで実施することとなった。
今回の大会は、残り1枠の「東京五輪代表」の選考会も兼ねていることから、男女のマラソン、車いすマラソンのエントリー選手約200名のみが参加するレースに変更された。
もっとも、今回は事情が事情だけに「仕方がない」と大多数の一般ランナーは納得しているようだが、出場ランナーが支払った参加料1万6200円については、返金せず、いわば〝没収〟されることになった。トラブルを避けるためだったのか、主催者は参加料を返金しない代わりに「来年の出場権」を担保することを明らかにしたのだが…。
担保したのは「参加権」だけで、何と「参加料は別」。走りたい場合は、もう一度「参加料を支払え」と言うことらしい。これにはさすがに「考え方がセコい。あり得ない対処」とランナーの間からは不満の声も出ていた。
いずれにしてもこういった、春の〝2大イベント〟が見送られたことで、一気に日本中が自粛ムードに陥ってしまった感じだ。
来週27日から3月1日までの4日間、神奈川・横浜市のパシフィコ横浜で開かれる予定だったカメラ機器の展示会「CP+(シーピープラス)2020」についても中止が発表された。主催するカメラ映像機器工業会は期間中、約7万人の来場を見込んでいただけに、開催に向けて準備を進めてきた関係者もショックを隠しきれない様子だった。
自粛ムードは芸能界にも――。
芸能界でもイベントの中止が相次ぐ
今春、人気グループの嵐が中国で予定していた「北京公演」を中止したことは前述した通りだが、ジャニーズ事務所は、この他にも1月にCDデビューしたアイドルグループの「SixTONES(ストーンズ)」と「Snow Man(スノウマン)」が、2~3月に予定していた〝ハイタッチ〟のスペシャル・イベントを延期することを明らかにした。さすがにイベントの対処についてはジャニーズは素早い。また、アイドルグループの「AKB48」も握手会を延期。東京・秋葉原を中心にライブ活動を続けている〝地下アイドル〟の「仮面女子」も恒例にしてきた「無料ハイタッチ」を中止した。
「仮面女子は、いわゆる〝アキバ系〟と言われる地下アイドルのトップランナー的な存在ですが、その他にも、秋葉原周辺には何百組と言われる地下アイドルが存在し、連日に亘って〝対バン〟(複数のアイドルが入れ替わる形でステージで共演すること)形式のライブを行なっています。
しかも、そこでは必ずハイタッチや握手会、それにチェキ会というファンとの交流会を開いています。彼女たちにとっては、交流会が収入源となっているので、自粛というのは彼女たちの存在意義にも影響してくる。極端な言い方をすれば死活問題なのです。
しかも、この新型コロナウイルスの感染がニュースになってからはファンの足も遠のいているようで、今月に入ってからは深刻な状況に陥っているライブ会場や地下アイドルが多いようです」(中年のアイドル・ウォッチャー)。
ファンとのハイタッチはアイドルばかりではない。あの宝塚歌劇団も、兵庫県宝塚市の劇場では出演者が公演中に舞台から下りて、観客とのハイタッチや握手をする演出があった。それが急遽「当面は控えていく」(劇場関係者)ことに。現在は東京・有楽町の東京宝塚劇場も含め全公演で中止している。
しかし、いくら「感染が拡大している」からと言って、過度な自粛や中止は現実的ではないことも事実。
20日、厚労省は、国内で予定されている大規模イベントなどについて、感染予防策や注意点を公表した。当初は「自粛を要請するのでは…」と心配されたが、一律での要請はなく「感染の拡大を防ぐには今が重要な時期」と協力を求める程度のものとなり、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒の設置を求めただけに過ぎなかった。
もっとも、関係者の間では「自粛の強制なんてあり得ない」との声が多かった。
「国や自治体からの補助金が出ているイベントなら多少の検討の余地はあっても、一般企業が主催している商業イベントや大規模コンサートなどの場合は経費がかかっている。延期するにしても、何らかの補償がない限り、リスクは負えません。いくら保険をかけていたとしても、適用項目に感染症なんて文言はないですからね。結局、政府が一律の自粛要請なんてできるはずがないのです」(イベント関係者)
ちなみに、日本高等学校野球連盟(日本高野連)は、「第92回選抜高等学校野球大会」について、現時点では予定通り開催する方向で準備を進める方針を示しているし、日本相撲協会でも、3月8日からの大相撲春場所(大阪場所)は、場所前のイベントは中止するが「大相撲は予定通り行う」としている。
「新型コロナウイルスについては連日、テレビのワイドショーでは長時間の特集を組んで放送しているし、ニュースもトップ項目で報じていることもあって、今や日本中に深刻なムードを及ぼしていることは確かです。感染力にしても、当初考えられていた以上に強力だと思われますが、現状では感染経路どころか、感染後の治療についても明らかになっていません。恐怖心を煽るばかりでは何も解決しません。それだけに冷静な対応が必要です」(医療関係者)。
芸能界では過去に結核騒動も
それにしても肺炎といえば、10年前に、お笑い芸人のハリセンボン箕輪はるかが、結核にかかって大騒ぎになったことを思い出す。その時は、箕輪が入院して2ヶ月間の休養を取ったが、実は箕輪は咳が出ているのに4~5ヶ月間もライブやテレビ出演を続けていて、劇場の観客も含め周囲への感染が大きな話題になった。所属事務所も『咳や微熱が続く人は検診して下さい』などと呼びかけていた。「箕輪の結核と今回のケースとは全く違いますが、ただ、現在のところ芸能界の中で感染者がいないのが不幸中の幸いかもしれません」(プロダクション関係者)。
現時点で芸能界での感染は報告されていないが、一部には「気づいていないだけかもしれません。事務所も疑いのある所属タレントの検査が必要でしょう」(芸能関係者)と不安視する。
確かに、芸能界から新型コロナウイルスの感染者が出てきたとしても不思議ではない。まずは、アキバ系の地下アイドルから検査を行う必要があるかもしれない。