「まったく嫌疑がない」ゴーン氏弁護団が会見 半年以上保釈が認められない可能性も - BLOGOS編集部

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※この記事は2019年01月09日にBLOGOSで公開されたものです

会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された日産のカルロス・ゴーン前会長(64)の弁護団が8日、都内の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。元東京地検特捜部長で主任弁護人の大鶴基成弁護士は「まったく嫌疑がない」とゴーン氏の無実を訴えた。【文・石川奈津美、撮影・田野幸伸】

会見には日本のメディアに加え、英米やフランスなど海外メディアの記者も多く詰め掛け、事件の国際的な注目度の高さをうかがわせた。

ゴーン氏の最初の逮捕は昨年11月19日。以降、ゴーン氏はすでに2ヶ月近く東京拘置所に勾留されている。

大鶴弁護士はゴーン氏の現在の様子を「顔が非常に細くなっておられます。体重もかなり減っているのだろうと思います」と語る。勾留されている拘置所では、以前よりも広い部屋に移ることができ、寝具もベッドで寝ているというが、家族との接見はいまだに禁止されているという。

「まったく嫌疑がない、犯罪の容疑がない」

ゴーン氏が昨年12月21日、会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕されたことについて大鶴弁護士は「為替スワップの損失を日産に付け替えて、損害を与えたという事実については、私たち弁護団は、まったく嫌疑がない、犯罪の容疑がないと考えています」と主張する。

為替スワップ契約の主体をゴーン氏から日産に変更した後も、差額の損の支払いは引き続きゴーン氏が負担し、反対に利益が出たときにもゴーン氏が得るということを日産、銀行、ゴーン氏の3者の合意で決められていたとし、「損失は日産に付け替えられるはずがありません」とする。

さらに、「最初はゴーンさんの話しか聞いていなかったので、実は必ずしも確信していたわけではありませんでした。しかし、日産の取締役会議事録の内容を、ゴーンさんを通じて、つまり検事がゴーンさんにその内容を教えて、それをゴーンさんが我々に教えてくれて知ったことで確信に変わりました」と断言した。

リーマンショックで銀行から追加担保を迫られる

ゴーン氏は8日、勾留理由の開示を求めて東京地裁に出廷。法廷で約10分間、英語で意見陳述し、その際、為替スワップ契約の経緯についても言及したという。

大鶴弁護士は、ゴーン氏は、当初日産からドルでの報酬支払いを望んでいたが、日産から円でしか支払うことができないと伝えられたため、やむを得ずドルを固定的な為替レートで円から替えられるように、為替スワップ契約をすることにしたとし、ゴーン氏が投機目的で契約をしたのではなく、ドルとしての報酬額を確定することが目的だったと説明する。

一方、2008年のリーマンショックによって為替レートがそれまでの1ドル110円台から80円台にまで急騰。同時にゴーン氏は日産の株価連動債を担保に入れていたが、株価がこれまでの6分の1位に急落したため、担保が足りなくなり、その結果、銀行から追加担保の請求を受けることになったという。

大鶴弁護士は、「そのときまでにゴーンさんは日産から退職慰労金を40億円程度もらうことが確定しており、ゴーンさんがこの時に日産を退職すれば、この退職慰労金をもらい、それを追加担保として提供することはできたというが、ゴーンさんによれば『船長が嵐の最中に船から逃げ出すようなことなのでできない』という判断をしました。

それでゴーンさんは自分の知人などから担保を提供してもらうよう頼み、その提供を受けられるまでの間、日産に金銭的な損失を負わせないようにしたうえで、一時的に担保を貸してもらうよう要請しようと考えました。

そして契約相手の銀行にこのことを相談したところ、『取締役会で必要な議決を得れば、大丈夫だ、問題ない』と言われたので、この契約を行ったとのことです」と正当性を主張した。

さらに、大鶴弁護士は、ゴーン氏への信用保証で協力したとされるサウジアラビアの実業家について、検察がゴーン氏の逮捕前に取調べを行っていないことについても指摘。

「支払われた先から話を聞かずにゴーンさんを逮捕するのはまったく異例だと思います。これまでの特別背任の事件では、金が支払われた先の人から話を聞いて、支払われる理由があったのか、なかったのかということを慎重に判断してから事件に着手するものだと思います」と元東京地検特捜部長の経験から検察の捜査手法を批判した。

初公判まで保釈が認められない可能性も

弁護団は、8日中に勾留の取り消し請求を行い、仮に勾留期限である11日に起訴された場合には、保釈請求する方針も明らかにした。

大鶴弁護士は、今後について「第1回公判(初公判)がいつということはわかりませんが、仮に金商法違反の起訴と今回の特別背任だけであったとしても、非常に難しい、かつ証拠も英語・日本語が混在していますので、裁判が開かれるまで半年以上はかかるかもしれないという状況にあります」とし、

「一般的には特別背任を全面的に否認していると、少なくとも第1回公判までは保釈を認めないケースが多かろうと。それは一番弁護人としても懸念していることですし、その話はゴーンさんにも説明しています」と話した。