レンタル彼氏を始めた理由は?アルバイトの男性スタッフに働き始めた理由を直撃 - BLOGOS編集部
※この記事は2018年12月27日にBLOGOSで公開されたものです
部屋、車、服、オフィス。シェアリングエコノミー市場が伸びる中、「彼氏」をレンタルするサービスの人気が急増している。
都内を中心にレンタル彼氏サービス「レンタル彼氏PREMIUM(プレミアム)」を展開するカジュアライズによると、サービス開始当初の2012年からの約6年間で利用者が10倍になったという。
利用者の中には既婚者や妊婦もいるといい、「遊び相手が欲しい」という理由だけではないそうだ。現役キャストに話を聞いた。【石川奈津美】
「子供が生まれて母になる前に」妊婦がデートを依頼
今年、昼下がりのランチデートの依頼が寄せられた。依頼主の女性は、妊娠中だったという。
お腹ももうかなり目立っていたというその女性。夫との関係も良好だが、「子供が生まれたら母になって時間にも制約ができちゃうから、子供が生まれる前にやり残したことをやっておきたい」とサービスを利用したそうだ。
女性はランチをした後、街中を歩きショッピングをするなど約2時間のデートを楽しみ、『独身気分』を楽しんでいたという。
利用客は10~60代、既婚者は3割
同社が「レンタル彼氏PREMIUM」のサービスを開始したのは2012年7月。テレビなどでも取り上げられ話題を呼び、知名度が上がるにつれ利用者は年々増加。約6年間で累計の利用者は1万人近くにのぼる。2012年に月間30件だった利用件数は2018年には月300~400件に増加。利用者の年代も10代~60代と幅広く、職業も学生、主婦、看護師や美容師、経営者など様々だ。
キャスト経験が約4年半と最も長い里中敬浩さん(28)は「お客様のニーズとしては、『もう大人だけど子供に返って無邪気に遊びたい』という方と『周囲には見せていない自分を解放したい』という方に二分されると思います」と話す。
「キャストの僕たちの性格も『元気で明るい』や『落ち着いた雰囲気』など人それぞれなので、お客様はご自身のニーズに合わせて選んでいらっしゃいます。中にはその時々のご自身の気持ちに合わせて依頼するキャストを代える方もいらっしゃいます」。
クリスマスやお正月といったイベントが目白押しのシーズンには、やはり利用客も多く、キャストによっては1日で3人、4人と会うこともあるという。
「12月31日~1月2日の計3日間以外は営業をしています。年明けでしたら『初詣に一緒に行きたい』というリクエストもいただきますね。年末年始に東京に残る方は、『友達が帰省していてさびしいから』という理由で会う方もいらっしゃいます」
デートの場所は、「カップルが行く定番スポット」がやはり多いのだという。
「クリスマスの時期だと遊園地のイルミネーションが人気ですね。あとはこちらもデートの定番ですが、ディズニーランドもよくご依頼いただきます。
数年間利用してくださる方がいるのですが、その方とは累計で30~40回くらいディズニーランドやディズニーシーに行っていますね。『自分の母親よりミッキーを見ているのではないか…』と思います(笑)。
また、水族館デートも定番でよくリクエストされるので、魚の種類はかなり覚えました(笑)」。
レンタル彼氏になったきっかけは
まるで少女マンガに出てくるワンシーンのようなピュアなデートに付き合ってくれる「彼氏」たち。彼らは一体どのようなきっかけでキャストを始めたのだろうか。里中さんにたずねてみた。
「僕は23歳のときに始めました。ずっとお芝居の勉強をしていたのですが、『エンターテイメントで魅せていろんな方に感動を与える』仕事をしたいと思っていたんですね。
ネットでこの仕事があることを知ったのですが、『1対1で限られた時間の中でお客様を喜ばせられる』と書いてあって、自分がやりたいことと共通する部分があるのではないかと思い働き始めました。
今でも映像関係のお仕事は少しさせてもらっているのですが、この仕事を本業にしています」
どんなときにやりがいを感じるのだろうか?
「お客様にも色々な方がいらっしゃるのですが、恋愛経験のない方で『男性への接し方を教えてもらいたい』といって相談を受け、そういった方がどんどん成長していく姿を見るとこの仕事をやっていてよかったなと思います。
例えば、以前、20代のお客様を担当させてもらったことがありました。初回は目もあわせてくれず、ずっとスマートフォンをいじっていたのですが、少しずつ会話を重ねていくうちに、ハイタッチできるくらいになってくれて。
10回目くらいに会ったときには『彼氏ができたよ』と報告をもらいました。“卒業”してしまいもう会えなくなってしまう方もいるので寂しさはありますが、力になれてよかったなと思います。
また、『結婚できない』とか、『残業ばっかりでつらい』とか『上司にパワハラを受けている』というストレスを打ち明ける方もいらっしゃいます。『友達に言うと暗くなっちゃう』とおっしゃる方が多いですね。
僕たちは友達でも家族でも、職場の同僚でもない、いわば“他人”です。なので、僕たちに思いっきり自分の本音を話すことで、自宅にそのストレスを持って帰らなくても良いということもあるのかもしれません。僕もレンタル彼氏を始めてみて驚いたのですが、初めての方でも『いままでこんな話を誰かにしたことなかった』とおっしゃる方も結構いらっしゃいます」
「女性が安心して楽しめるエンタメが少ない」
レンタル彼氏のビジネスはどのようにして始まったのだろうか?同社の代表に聞いた。
代表は、「女性が社会進出してお金を稼ぐようになり、色々なエンターテイメントを楽しめるような経済力をつける中で、『女性が安心して遊べる娯楽が少ないな』と思ったのがきっかけでした。
レンタル彼氏と比較した場合、ホストクラブは『結局いくら取られるのか分からず怖い』『室内は入りにくい』ということが挙げられると思います。そのため、このレンタル彼氏のサービスは、時間単位でいくらという明朗会計にしました。
また、レストランや居酒屋の個室などは例外ですが、“外で会う”ため、良い意味で周りの目もあり『個室でトラブルになったらどうしよう』という不安も少ないと思います」と話す。
娯楽からリアルな恋愛につなげて欲しい
さらに、このサービスを娯楽で終わらせるだけではなく、リアルな恋愛など、日常生活でのコミュニケーション力アップにつなげてもらいたいという願いもあるという。
「恋人がいない未婚男性は7割、女性は6割に上るというデータが示すように、日本社会において恋愛ベタ、つまりコミュニケーションベタの方は本当に増えているなと思っています。
ただ、それを解決する糸口があまりにも個人の責任になってしまっているのではないでしょうか。
よく言われることですが、その背景には、やはり対面のコミュニケーションを取る機会が減っていることが挙げられると思います。
仕事では一日中パソコン、プライベートでは暇さえあればスマホ。ネットを介してのコミュニケーションが中心で、人と会って何かをする機会が減っています。
ましてや、お付き合いしたことがほとんどないという人であれば、年齢が行けばいくほど恋愛に踏み込むのを難しく感じるんですよね。本来、恋愛の経験を重ねていくスピードや回数も人それぞれなはずですが、『いまさら経験がないとか恥ずかしくていえない』とか『いまさらぎこちなかったらどうなの』と。
いま、出会い系サイトやアプリなどの利用者も増えてきており、出会いの入り口はあふれているように見えますが、こうしたサービスでは、相手が自分を必ず受け入れてくれるとは限らないので、結局恋愛ベタな人たちにとってはハードルが高いままです。
一方、レンタル彼氏は、100%受け入れるわけですからハードルが低いですよね。そういうところから少しずつ慣れていって欲しい。私たちのサービスの切り口は「恋愛」ですが、そこから発展して、周囲の人とのコミュニケーションを苦痛に感じるのではなく、楽しいと思えるような社会に少しでもしていけたらと思っています」(代表)