高樹沙耶氏が考える“医療大麻”をきっかけにした社会変革「日本のこの空気を変えよう」 - BLOGOS編集部

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※この記事は2018年12月25日にBLOGOSで公開されたものです

10月、カナダが先進国として初めて嗜好品としての大麻利用を合法化したことが大きな話題になった。医療用大麻に限って言えば、海外では多くの国で利用が認められ、先進国の中にも健康保険が適用される国がある。

日本でも大麻について報道されるケースが増え、大麻解禁についての議論が以前に比べてオープンになりつつある。こうした状況について、ドラマ「相棒」などにも出演した元女優で、大麻取締法違反で逮捕された経験を持つ高樹沙耶さんは「今、まさに大きな変化が起こっている」と話す。現在は石垣島でエコスタイルの宿を経営する傍らで、大麻についてのツイッターなどで情報発信を続ける同氏にインタビューを行った。【取材:島村優】

SNSで大麻の情報を日々発信

-今日はよろしくお願いいたします。高樹さんは、現在どのような活動をしているのでしょうか。

今は執行猶予中なので、自分の経営する宿をやっているというのがメインです。有罪判決が出た後に行った記者会見で「第一線からは退きます」と言ったんですけど、現在の世界の状況を見て、また医療大麻については最後まで見届けたいという気持ちがずっとありました。そこで、合間を見ては大麻の法改正を目指す活動をする方の援護射撃になればとの思いで、日々SNSなどで情報発信をしています。

日本の中では逮捕や社会的な制裁が怖くて、顔を出してはモノも言えません。私は逮捕もされて、あれだけ報道され隠せない立場だからこそ、大きな声で「経験したことがありますよ」と顔を出して、ちゃんと考えを伝えていきたいなと思っています。

-Twitterでの発言が度々話題になっています。

そう。でも、ニュースに取り上げられる時でも、1度も取材はありませんでしたよ。この間のツイート(※)も、私は全く記事について知らなかったんですけど、また何か話題になったのかなって、後でわかって。

※11月18日に投稿した「神よ何故あなたは地上にに大麻草をお与えになったのでしょうか! 私達をエロス、狂乱、錯覚、怠惰に陥らせるためなのでしょうか?」などと綴ったツイート(現在は削除)

なぜわかるかというと、話題になると急にSNSやブログのフォロワー数や閲覧数が増えるんですよ。それで、何かあったなと思って色々ネットニュースを覗いてみると、ああ、そういうことなのね…と。

-SNSとの付き合い方はどのように考えていますか?

SNSというツールを使い始めて、だいたい10年くらいが経ちます。誰でも個人で情報発信ができるようになったこの状況については、良いか悪いかは私の中では結論が出ていなくて、みんなが学習中という感じの状況があると思うんです。だから私もSNSとどう付き合っていくかは研究中というか、楽しみながらやらせてもらっています。

かつてテレビと新聞が中心だった時代は、大麻に限らず、いろんな決め事が国の決めた通りにしか動かなかったと思うんです。大本営発表のまま動かない。でも、世界はすごく変わってきていて、私は良いタイミングで情報発信することができているのかなとも思うんですね。

-良いタイミングというのはどういうことでしょうか。

かつて大麻で逮捕された人たちは、とにかく謝るしかなかったと思うんですよ。私の場合は、もちろん法律を犯したことは申し訳ないと思っていますけど、この法律がおかしいから戦ったんだよ、ということを、TVや新聞などのメディアを使わなくても多くの人に向けて言い続けられる場があるということはすごく恵まれているなと。

なぜ色々な人から攻撃を受けても頑張れるかと言うと、本当に大麻によって助かる人がいるからなんです。多くの人がこの真実を知って声を上げれば、日本の社会が変わっていくんじゃないか、とまだ信じているからですかね。

-SNSなどで様々な攻撃をされることがあるんですね。大麻についてばかり発信していると「大麻が吸いたいだけなんでしょ?」と思われてしまうことはありませんか?

それはあります。「大麻のことしか言ってないから、やっぱり高樹沙耶は大麻中毒だ」とか書かれて。ブログとかで丁寧に説明すれば、きっと理解してもらえると思うんですけど、今は毎日毎日上がってくる世界の大麻の情報を、短い言葉で機関銃のように上げているだけなので、誤解されてしまうかもしれません。

でも100人いて100人全員にわかってもらうことは無理だと思うから、わかってもらえる人だけに届けばいいかなと今は思っています。最初のうちは、Twitterで批判されるたびに嘆いていたんですけど、今は気にしなくなりました。自分でも転びながら傷つきながら学習して、面白がってSNSをやっています。

-そうなんですね。

大麻中毒だ、エロだ、頭がおかしい…と色々なことを言われましたけど、すごい汚い言葉を私に投げかけてくる人は、フォロワーも全然いなくて。大麻について批判する人は、何か大きな変化があればすぐに考えが変わる日和見の人たちなんだと思います。

大麻未経験者の意見だけで結論を出してはいけない

-大麻に賛成するにしても、様々な立場があります。大麻を研究可能な形に法律改正すべきという立場もあれば、陶酔成分のTHC(※)の数値をコントロールして限られた範囲に抑えたものは医療用として利用可能にさせるべき、などなど。高樹さんの立場はどのようなものでしょうか。

※大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノールという物質。大麻の有効成分で陶酔効果があり、多幸感を覚えるなどの作用がある

私たちの親の世代が「葉っぱ」って言っていた時代の大麻と、今の大麻ってもはや別物って言ってもいいほど、品種も摂取方法も改良が進み、効果も何倍も強くなっているんです。だから国や医療関係者がしっかりと研究していかないといけないと思うんですよね。

多くの人が声を上げないまま、理解しないまま「ダメ。ゼッタイ。」というのが今の現状で。でもアメリカやヨーロッパでは医療での利用が当たり前になり、カナダでは国家レベルで嗜好用大麻まで合法化するということが起きている中で、日本がどうするかというのは、国や厚生労働省が国民に見えない場所で一方的に決めるのではなく、今、分かっている情報をキチンと国民に知らせた上で色々な立場の方との議論をできるだけオープンに早急に始めるべきことだと思います。

-議論の必要性を訴えていると。

そう、例えば、てんかんやパーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など、現行の医療では治療が難しいとされる病を持っている人の中には、今すぐにでも大麻による治療で救われる人もいるので。

-大麻の医療目的の利用ですね。現行の大麻取締法では、そうした目的があっても大麻の研究は認められていません。

そう。でも、私は一度逮捕されているけど、大麻を全く経験した事のない人の意見だけで今の法律を維持していくというのは危険だと思います。この国では表向きは法律を守っている人、つまり大麻を見たことも触ったことも無い人が法律を決めて、運営している訳でしょ。そんな人達の集まりで「大麻を合法化しよう」なんて言えるわけない。そんなこと言ったら「お前は大麻を吸った事あるのか!」ってなりそうですよね。

現状をしっかりリサーチして、科学的な効果を研究した上で大麻がどんなものであるか、そして実際に体験してきた人の意見も取り入れたその上で、わが国ではどのように大麻を利用していったらいいのかということを真剣に考えるべき時が来ていると思います。厚労省の「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーンのように都合の悪い情報には蓋をして、一切考えることを放棄させるような事ではもう無理があると思うんです。

-大麻を大きく嗜好用、医療用、産業用の3つに分類して考えた時、世界的に医療用大麻を認める流れになっています。医療用大麻については具体的にどのような法改正が必要だと考えているか改めて教えてください。

今、医療用で解禁されている国での大麻の使われ方というのは、鎮痛剤や麻酔の代薬として使われるだけはないんです。大麻には、これまでの薬とは全く違ったシステムで多くの病を治癒したり回復させたりする事が次々に証明されています。

-人の体の中のシステムということですか?

元々、人体にはエンドカンナビノイドシステムっていう体内を健康に保とうとする調節機能があって、大麻を利用することでそのエンドカンナビノイドシステムの働きが活発になり250~300種類の疾患が治癒し、回復する効果があると言われています。実際に海外では重病の患者に使われ、臨床での治癒の報告が次々と出ているんです。

だから、日本でも使い方としてはまず漢方薬のような使い方をするってことだと思います。医療大麻の利用を法制化したカナダやアメリカ、その他の先進国では大麻ディスペンサリー(薬局)という形で、専門家が処方しているんです。日本でも医療用で解禁となれば、専門家を作っていくことになってくると思うんですけど、それを国がどう認めていくか。

医療大麻を自由化するための戦い

-イメージとしてはCBD医薬品(※)だけではなく、大麻草そのものの使用も認めるということですか?

※大麻に含まれるCBD(カンナビジオール)という陶酔作用のない物質を利用した医薬品。陶酔作用がないため、海外では医薬品以外にもこの物質を利用した様々な製品が販売されており、日本でも厚生労働省の許可を得て輸入された幾つかのCBD製品が“合法的”に入手可能である

今、食べ物や化粧品などの製品でオーガニックという分野が注目を集めています。大麻製品の中にもその分野があり、農薬や化学肥料を使わず、種もF1(※)や遺伝子組み換えでなく、原種や固定種にこだわって育成したものを使う。もちろん遺伝子組み換え技術や化学肥料、ハイドロカルチャー技術などを大麻に応用すると、より強力なものが作れてしまいます。

※雑種第一代=異なる形質を持つ親をかけ合わせて生まれた一代目の子孫のこと

しかし、そうではなく、太陽と健康な土壌で育てられた大麻をできるだけナチュラルに漢方のような使い方をすることが大麻を利用する国の中で見直されてきています。その際に大麻草、全草を使うという考え方や使用方法がトータル的な健康という視点でも有効だと認められていますので、大麻草、全てを利用できなければ医療としての効果は半減どころか、とても限られたモノになると思います。

-大麻草そのものが薬として認められるには時間がかかりそうですね。

もともと日本でも喘息の薬として薬局で販売されていた時代もありましたし、それもたった70年ほど前の話です。それにカナダやアメリカをはじめ世界での医療大麻への取り組みを知れば、日本での使用承認はそれほど時間がかからないのかもしれません。未来がどうなるかは誰にもわかりませんが、その点について私は楽観的に捉えています。でなければ、「医療大麻にご理解を!」なんてことを公約に選挙に出るなんてできませんよね(笑)。

医学的な効果については、1980年代に「マリファナ研究の父」と呼ばれるラファエル・メコーラムさんが人体にエンドカンナビノイドシステムを発見した時から、現在まで大麻の研究はあらゆる分野で進み、明らかに色々な病に対して効果があるとエビデンスが出てきているんです。そういう海外での活用方法を参考にしながら、日本でもできるだけ早く、新しい形を作っていってほしいなと。

-研究すらできない状況から一歩進んで、海外で出されているエビデンスなども利用しつつ、医療目的の利用が早く可能になってほしいということですね。

そうです。ただ、私は専門家ではないので皆様に理解して頂けるよう正しく説明できないところもあります。今、医療大麻を日本でも使えるように活動しているお医者さんが代表を務めるGREEN ZONE JAPANという団体があって、医療大麻の理解を日本で広めるためにアメリカの医療大麻のドキュメンタリー映画を日本でも上映しようと動いています。

その『WEED THE PEOPLE』という映画を見れば医療大麻の効果や多くの人が救われる凄く可能性を秘めたものだということが理解できると思います。映画を見られる機会はまだ限られていますが、興味のある方はぜひ、ネットなどで調べてみて下さい。

-法制度を整備するのも難しい仕事になりそうです。

一口に大麻医療と言っても、今や大麻の品種だけでも3000種以上あり、症状や病気の種類など、必要なモノも分量も人によって大きく違います。例えば、重度のてんかんを患っている人には効果が強いものを、ただ睡眠不足っていう人にはちょっとだけTHCが入ったものをと個人の症状に合わせていかに処方するか、といった使い方の幅の広さをどう整理するのか、そしてそこに現状の保険を適用するのか、といったことが今、世界で医療大麻を処方している国での課題になっていると聞きます。

わが国でもただ解禁したからOKという訳ではなく、医療での使用が認められてから、やるべきことは沢山あるはずなんです。これは私の個人的な理想なんですけど、ヨーロッパのように販売する大麻自体は国が管理しながら、お医者さんの処方箋や申請などの手続きをすれば自分で育てて使用してもいいという風になればいいなと思います。

-本数を限定した上で、自分で育てることが認められている国もあるようです。

そうすれば、自分の責任で自分に合った品種をそれぞれ栽培し、それを食べたり、ジュースにしたり、お酒に漬けたりといった方法で摂取できます。それによって健康を維持し、自分自身で身体を治すことができればいいなと思います。

-反対する意見の中には健康への悪影響を危惧する声があります。それに関しては、研究して身体に問題がないラインを明らかにして、そこで線引きをするべきだということですね。

もちろん小学生、中学生の若い世代が大麻に手を出すことには賛成できません。でも、現在これだけインターネット上に大麻の情報が溢れていて、NETFLIXを見れば大麻料理の番組まであると。こんな状況で子どもたちに「ダメだ、危険だ」って言うだけではもはや無理があるとは思いませんか? だからこそ、どうやって社会に取り入れていくのかはオープンな議論が必要だと思います。

健康への影響については、海外でこれだけ「悪影響はない」「医療での効果が期待出来る」とう報告があり、なおかつ使用を解禁して何年も経っている国で大きな混乱や副作用などのニュースは何も出てこないのに、どうして日本だけでは危険なのかを考えた方がいいと思います。だから今の段階で大麻を反対している人達って、大麻は麻薬で恐ろしい、「ダメ。ゼッタイ。」っていう洗脳を受け続けていて、頭が固くなっているだけだと思うんです。

-WHOの扱いでは大麻は一番危険なものにカテゴライズされていますが、これも変わる気運があるそうですね。

もしそれが変われば、その世界共通の認識に日本も従えばいいんじゃないかなと思いますけどね。でも本音を言えば、そうなる前に自分たちで調べて、自国の判断で栽培や使用を認めてほしいですけどね。元々、戦前の日本ではいたるところで栽培されていた上に、それまでは薬物乱用で問題が起こるなんて一切なく、それどころか神道や衣食住、日本人の生活全てに密接に関わりのあった大事な農業資源のはずだったんですから。

大麻の運動を通して日本が変わる

あとは大麻を禁止する事で誰が儲けているのか、そう考えるとやっぱりアンダーグラウンドの人たちが儲けているわけじゃないですか。だから、それを国が管理して、販売し税収にして、そのお金を薬物依存の人たちの病院を作ることに回すみたいな循環の仕方を考えればいいんじゃないかなと。

既にアメリカやカナダでは西部開拓時代のゴールドラッシュになぞらえて「グリーンラッシュ」という状況が起きていて、その大麻産業で得た税収を自治体や州政府が学校建設や社会福祉にあて、街が再興している例も数多くあるので決して夢物語ではありません。ぜひ参考にして頂きたいです。

-オランダやカナダは今お話に出たような考え方で大麻利用を管理する合法化=非犯罪化が行われています。他にも国によって様々な大麻利用の状況がありますが、日本の現状を一歩進めるためには、どんなことが必要だと思いますか。

誰かが声を上げないといけないとは思うんですけど、ただ誰かが声を上げたところで、すぐに動いてくれる政治家はいないと思うんですよね。だから、この国では民主主義が機能していないなとも感じることもあります。これから先、どのように国を動かしていくかの知恵は頭の良い人が考えてくれないといけないのかな。

-民主主義かどうかは別にして、以前にジャーナリストでコメンテーターのモーリー・ロバートソンさんが「アメリカでは法律が変わるまで若者たちが頑張って声をあげていた」と話していたことがあります。しかし、大麻を使うことが法律違反である今、大麻を吸ったことのある人が集まって展開する運動に拒否感を持つ人がいることも理解できます。

どうしても日本は権威社会なので、犯罪歴がある人間が言うことに説得力はないって言葉を封じ込められてしまうんです。私も「お前が言うな」とかガンガン書かれているんですけど。なのでこの先、どういう方が声を上げてくれるのかなと。

最近では先程名前の挙がったモーリー・ロバートソンさんがあるテレビ番組でカナダの合法化の問題についてコメントした際に、大麻解禁の決断に対して『英断だ』と肯定的な意見を放送していて。今までのテレビでは、どんなコメンテーターも「ダメなものはダメでしょう」と言うしかなかったんです。吸ったことある人も芸能界にいっぱいいるんだけど...。

-いっぱいいる。

経験のあるTV出演者が「俺は吸った事があるけど…」とか「私の大麻経験だと…」なんてTVでは絶対に言えませんでしたから。そんな事言えば一発で仕事を干されてしまいますからね。そんな中で初めてモーリーさんがわかりやすく話してくれたっていうのは大きかったです。そういう意見をTVがそのまま流せるようになったのは、何かが変わり始めているということなのかなと。

日本の場合は1週間くらいワイドショーで大麻を肯定的に取り上げて、医療大麻が実際に人々を癒している真実をキチンと報道すれば、みんなそちらに流れると思うんですよね。アメリカでは、CNNが重度のてんかんを持つシャーロット・ウェブという少女がてんかん発作を抑えるために大麻を使用するというドキュメンタリーを放送した事で合法化の議論に火がついたんです。イギリスでも現在は保険で医療大麻が使えますが、その大きなきっかけは小児ガンの少年の大麻利用を母親がどれだけ頑張って訴えたかっていう報道でした。

-そういう流れを大事にしつつ、大麻に関する法律を変えようというのが高樹さんの立場ということですね。

国民の意見が何も通らなくて、一方で知らない間に一部の人間にとって利益になるような悪い法律が通っている現状があって、国民が鬱々としているじゃないですか。「どうせ、俺たちがやったって何も変わらないだろう」みたいな。そういう負け犬根性があって。

文句はネット内で言うだけで、もっと大きなところには誰も出て行かないし、行ったところで先に同じことをした人が犬死にしているのを見ているので、どうせダメだろうって諦めてしまう空気が今はあると思うんですよね。

-気分的なところでの、そういう諦めはあるかもしれませんね。

だから今大麻で、市民から上がった声が力となって何かを変えていくということを私たちが一つ経験するだけで、みんなの勇気みたいになるんじゃないかなと。

-大麻の運動で日本の空気が変わる、と。

私も一度討ち死にしていますが、それでも続けているのは、みんなもっと頑張ろうよ、自分たちで歴史を一つ作ろうよ、っていう思いがあるから吠え続けていられるんです。日本のこの空気を変えようってね。

理想としては誰か立派な人の声で変わるんじゃなく、みんなの声で実現するってこと。そうなれば嬉しいなと思いますね。

-今ある大麻のイメージが変われば声をあげる人が増えて、そこから法律が変わることにつながるかもしれないし、それを目指したいということですね。

世界を見れば大麻は今、大きなビジネスチャンス

大麻って今、すごくチャンスなんです。先にも言いましたがアメリカやカナダの非犯罪化、合法化によって大麻のビジネスが新しい産業となり、大麻産業によって成功してお金を儲けている企業や人がたくさん出てきていて「グリーンラッシュ」と呼ばれるほどのムーブメントになってきているんです。

古くから社会にとって危険だからと規制されていたものを、実は間違っていましたと社会が認め、法律を変えただけで、もの凄いビジネスチャンスが大麻を見直した国で起こり始めている。

-そういう見方から大麻を勧める方法もあるんですね。

固定観念を外すことの中に、新しいチャンスがあるということを示せる面白いテーマでもあるんです。今、カナダやアメリカをはじめとした世界の状況を見て、次は日本だと海外の大麻産業を調べながら準備している方はいると思います。実際に大麻ビジネスに関する海外での記事を見ると元マイクロソフトの経営トップの方やナイキなどの世界企業のマネージャークラスの方がそれまでの地位や職業を捨て、大麻のスタートアップに参加して成功しているニュースがいくつも出てくるんです。

彼らは口々にお金が目的ではなく、社会変革の可能性がある大麻産業で世界をより良くする為に新しい産業に投資したいと言っているんです。ビジネスとしても大きな魅力がある事を多くの人が理解できれば、世の中が変わるチャンスは増えるんだと思います。

-ここまで話を聞いていると納得できるところもある一方で、大麻を経験したことがない立場からすると、自分たちの嗜好で法律違反をして楽しんでいる人になぜ合わせるのかという反論もあるかと思います。

それはイメージであって、真実からはかけ離れているから。日本の様に行き詰まった社会では、様々な場面で脳のパラダイムシフトみたいなことが必要なんじゃないかなと。縛られている常識とか、すごく多いでしょう。

大麻って実は経験者もすごく多いんですよ。私たちの親の世代と違って、今は安い金額で海外にも簡単に行けるし、留学を経験してる人も多くなりましたし、世界の現状を知っている人はものすごくたくさんいるんです。そういう人からすると、私はおかしなことを言ってないよね、っていうのはわかってもらえているようです。

-そうなんですか。

でも、やり方がまずかったね、法律を違反するのはまずいよね、ということはすごく言われました。確かに法律という面から見ると悪いことですけど、悪い事の根拠は日本で作られた幻想ですから。今、世界では真実が表に出てきているので。

だから、大麻のことをよく知っている人がこの一件を見ると、大麻についておかしなことをつぶやいている人というのは、情報を自分で取捨選択できない人なんじゃないかと。この問題は、現実を自分で確かめることができるかどうかという良いリトマス試験紙で、大麻は麻薬だとか、大麻をやる奴はバカだとか、エロにハマってるとかって言っている人は全くわかってないの!

-全部、高樹さんが言われたことですね。

そう、「アホだ」っていう人には「お前がアホだ」って私は思ってしまうんですけど(笑)。

-ただ、しつこいようですけど大義があれば法律は関係ないのか、という人が多いことも理解できます。

でもそれならば、極論だけどあなたは国が人を傷つけたり殺したりしていいという法律があったら、そうしますかってことでしょう。

-それはちょっと極端な…。

うん、これは極論すぎるか。でも、なぜその法律ができたのかという立法趣旨をちゃんと理解してから、反対の意見を言ってほしいなというのはありますよね。法律だから、すべて正しいと信じる前に。それに「大義があれば法律は関係ない」なんて思っていたら、それこそ選挙に出て法律を変えようなんて思いませんよ。

私が例えば快楽のために大麻を吸って、それによって誰か他の人を傷つけているなら許されることではないですけど、やがて高齢者になる私も自分の体の具合が悪い時に大麻の効果を知った上で利用したというだけで。そういうことを知ってもらえれば、私の立場ももう少し理解もしてもらえるのではないかなと思います。

-海外の事例や現行の法律について調べてみると、高樹さんの主張や立場にも納得出来る部分があります。

そうなの、だからこそやってみない?っていうことを問うていきたいんです。私だって参院選にまで出馬して「そういう問題があるんだよ」「今、カナダでは合法になってるよ」、だから大麻っていうのがどういう問題なんだろう、という議論が深まって欲しかったんです。

“法律を犯すやつは悪い、だからみんなで攻撃してやれ”ではない何か議論の深まりが生まれればと思いますね。

-この問題に限らず、どちらも相手方はおかしいと言い合うだけだと議論や対話は起こらないですね。

それにもし…もしもの話ですけど、大麻を解禁したくない人たちがある程度いて、その人達が利権に関わるところでお金とパワーを持っていて、そしてメディアにも影響力もあり、なにか情報をコントロールしているという...。もしそういう現実があるならとても罪深いことだなとは思います。

大麻解禁に反対している業界団体があるとすれば、の話ですね。

-なるほど。アメリカでも、かつて大麻が禁止されたのは製紙産業や繊維産業が大麻の利用に反対したという主張があります。

日本のテレビ局が、製薬会社や酒造メーカー、タバコ産業といったところから広告費というお金をもらって成り立っていて、大麻を解禁するとそれらの売り上げはダウンしますから、そういう理由で妨害しようとしているのであれば、それは残念です。

でもこの社会はそういう成り立ちで、それを悪いとも言えないし、強者が勝っていく弱肉強食の世界なので。私みたいに新しい戦い、チャレンジをするにあたっては「三国志くらい読んでこいよ」と言われちゃうかもしれない。

-え、三国志? 戦略の話ということですか。

戦いに勝つにはその戦いの要点を押さえないと上手くいかないよねってこと。大義は合っていても戦いの進め方が良くなかったなと。大きな相手と戦うのに、準備が足りていなかったし、もっと用意周到に行かないといけなかったかもしれませんね。

-戦いには勝ち筋があるということですね。

ただ、大麻の法律が変わることがこの活動のゴールとするならば、結局、私は失敗した一人なんですけど、これまで70年近く続いてきたその道のりにおいて少しくらいは貢献、できたかなとは思うんですよね。

「大麻、絶対ダメ!」と信じ込んでいた人たちにとって、私の逮捕や報道が「あれ、なんかちょっと違うかな?」って考えるきっかけになって、今まで大麻のことなんて全く無関心だった層の人が少しだけでも「医療大麻」って言葉を記憶の片隅に置くことができたのであれば、私がこれまでやってきたことも少しは意味があるのかな。と時々自分を慰めています。

人に大麻を勧めているわけではない

-高樹さんの話に賛同して「私も一度試してみたい」ってなると、それはまずいんじゃないですか。

経験しないと、わからないこともありますよ。今ってネットで何でも情報が入ってくるけど、カリフォルニアのディスペンサリーがすごくオシャレって聞いても、それは遠い世界の話で自分には関係ないんです。人って何か心を揺さぶられないと動けないと思うので、経験しないといけない。

だから私は、そういう相談を受けた時には「外国に行きなさい」って言っています。日本ではあまりにリスクが大きすぎて、そういうことは勧められないけど、そういう形でまず経験してみたらって伝えるようにしています。

-薬物の道に引きずり込んだり、日本で違法行為をさせたりしようとしているわけではなく、自分で考えるために一度経験してみたら、という提案なんですね。

一つ誤解しないで欲しいのは、私たち、大麻を法改正しようと活動している人間は「誰かれ構わずに吸え」って言っているわけじゃないんです。法律がおかしいから変えよう、害よりも益の方が大きいのであれば、今の犯罪者みたいな扱いは改めようと提起しているだけなんです。もちろん民主主義だから多くの人に知ってもらわないと変わらないから、それぞれに情報を発信しているわけで。そうじゃなければ自分たちだけで隠れて吸っています。

-過去には逮捕もされていますし、批判されることも多く、色々と大変な役回りなんだろうなと思います。

私は普通の女性に比べたら食べたいものもいっぱい食べたし、着たい服も着たし、行きたいところにも行った。だから今ではそういう欲は昔よりは少なくなって、環境問題に関わるようになってからは何か違う事でこれまで受けてきた良い事を世の中にお返しできるようになりたいなって。

結局、この歳になるまで家庭も子どもも作らなかったし、そういう意味ではワイドショーが言うように自由奔放に生きてきたんだけど。恋愛もいっぱいしたし…(笑)。

-そこは合っているんですね(笑)。

だから普通の家族を作って、自分の子どもに何かを教えていくってことができなかったので、好き勝手生きてきた最後の最後に、世の中に何か役に立つお返しが出来ればいいかなと思っています。

-最後にこの記事を読んでいる読者で、大麻について自分でも考えたいと思った人に一言お願いします。

大麻に限らず、今、私たちはスマートフォンやパソコン、インターネットを手にすることでたくさんの情報に触れることができます。だからテレビや新聞だけの情報に流されないで自分の目で見て、物事を確認するとか、自分で調べて考えるということをもっと積極的にするようにした方がいいんじゃないかなと思います。

実際に大麻についてネットで調べてみれば、良いことも悪いことも、海外の事例も沢山の情報が出てくるから、もし自分が直接経験できなくても、そういう情報の中でちゃんと自分で考える力を養わなければいけないと思います。

日本はずっと権威者のいうことを聞いていれば間違いのない国だったけど、もうそういう時代は終わったと思います。一人ひとりが、誰が言った意見なのか、どこからの情報なのか、そういったことを個人が自己の責任で取捨選択する時代に入ってると思います。

-そうですね。

だから今回の記事も「高樹はああ言っているが怪しい」とか「法律を変えてもいいのか」とこれを読んだ一人ひとりが考え、疑問に思った事、更なる興味があるのであれば自分で調べて判断して欲しい、特に次の時代を創っていく若い世代の人達には期待しています。

-本日はどうもありがとうございました。

こちらこそ、石垣島まで足を運んでいただきありがとうございました。

プロフィール

高樹沙耶

1963年8月21日、静岡県生まれ。石垣島のキャンピングロッジ 虹の豆 オーナー。1983年に主演映画『沙耶のいる透視図』で女優デビュー、以降、映画、TVドラマへ数多くの作品に出演。近年の代表作に『相棒』等がある。2002年、フリーダイビング競技の日本大会で、水深45mの日本新記録(当時)、同年11月にハワイで行われたフリーダイビングW杯で水深53mの日本新記録(当時)を達成。

2016年5月、参議院議員選挙に医療大麻の法改正を公約に新党改革より東京都選挙区で出馬するも、落選。 同年10月、大麻取締法違反(所持)の疑いで厚労省麻薬取締部に逮捕され、3ヶ月間の拘束と3度の裁判の結果、逮捕から半年後、有罪となる。著書に『贅沢な暮らし-衣食住が育む「心のラグジュアリー」』(エクスナレッジ)、『ホーリープラント 聖なる暮らし』(明窓出版)ほか。