『ホリック xxxHOLiC』吉岡里帆のセクシーな女郎蜘蛛はこうして生まれた
クリエイター集団CLAMPのコミックを、『ヘルタースケルター』『Diner ダイナー』などの蜷川実花監督が実写映画化した『ホリック xxxHOLiC』(公開中)で、原作ファンの間でも人気の高い女郎蜘蛛を演じる吉岡里帆。初の蜷川組で吉岡が妖艶に演じた悪女キャラの裏側について、蜷川監督が語った。
本作は、人の心の闇に潜む“アヤカシ”が視える能力に苦悩する高校生・四月一日君尋(わたぬき・きみひろ/神木隆之介)が、対価と引き換えにどんな願いもかなえるという“ミセ”の女主人・侑子(ゆうこ/柴咲コウ)と出会い、不思議な事件の数々に遭遇しながら成長していく物語。吉岡演じる女郎蜘蛛は“アヤカシ”を操り、「ほしいものは絶対にほしい」と狙った獲物を執拗に追い詰める悪女。しかし簡単に手に入ることを好まず、逃げ惑う獲物をいたぶることに快感を覚える残虐なキャラクターだ。侑子と出会い成長しつつあった四月一日の弱点を見抜き、「今のままでいい」と甘い言葉をささやいて堕落させていく。
映画版ではビジュアルもセクシーなキャラクターに仕上がっているが、蜷川監督は「衣裳合わせのときから吉岡さんの気迫を感じていた」という。「すごく難しい役だと思うんです。特に後半戦は女郎蜘蛛が物語を引っぱっていくので、女郎蜘蛛が魅力的じゃないとこの映画は終わるなって思っていて。どなたが演じるのがいいのか考える中で、役のイメージと重なる方を脳内に浮かべたこともありましたが、これまでにこういった役を演じてきていない吉岡さんにお願いしてみるのはどうかと。圧倒的に美しい方ですが、こういった露出度の高いコスチュームを着られているのを見たことがないので、そういった意味では賭けでもありました。でもそれは杞憂で、衣裳合わせのときから吉岡さんの気迫を感じたので、これはもう絶対に大丈夫だと確信しました」
原作のゴスロリ風の衣装からボンデージ風へと発展させた衣装も躊躇することなく着こなし「なんて気持ちのいい男前な方なんだろうと」と蜷川監督を圧倒した吉岡。しかし、蜷川監督が思い描く「セクシー」なイメージを表現するには、プロフェッショナルの助けが必要だった。そこで急遽、協力を得ることになったのがポールダンサー、コレオグラファー、女優として活躍するKUMIだ。
「初日に吉岡さんを撮っていた時に、セクシーでキッチュでかわいいけど怖さもあるというイメージを、ナチュラルな芝居というよりもポージングを入れてやってみたらどうかなと。それでポーズを試行錯誤していたんですけど、わたしにはセクシーポーズの手持ちのカードがそんなになくて(笑)。これは誰か入れた方がいいなと思い立ち、KUMIさんを呼んだら『何だかよくわからないけどとりあえず行きます』と言ってくれて。そこからわたしと吉岡さんとKUMIさんの3人でセクシー所作をつくっていきました。指の動きもそうですし、アカグモ(磯村勇斗)の首のチェーンの引っ張り方、四月一日を誘惑するときのクネクネした動きや抱きしめ方。KUMIさんに指導してもらうと全然違ってくるんです」
ところで、女郎蜘蛛の初登場シーンも印象的だ。無人の渋谷の交差点で四月一日と二人きりというシチュエーションだが、その意図を問うと意外な答え。「足利にある渋谷のオープンセットなんです。交差点や地下道入口など一部はあるんですが、ビルなど街並みが存在しているわけではないんですよ。女郎蜘蛛の初登場シーンを、どうやって象徴的なシーンにするのかはすごく悩みました。これは裏話なんですけど、実はCGで渋谷の街全体を描く予算がなかったんです。それを逆手にとって、女郎蜘蛛が現れた瞬間に渋谷の交差点が異空間になるというふうにしたら面白いんじゃないかと。その際、周りに何もない方がかえっていいんじゃないかと発想を転換して生まれたものです」
「あんな吉岡さんは見たことないし、常にワクワクさせられた」と蜷川監督を魅了した吉岡。蜷川監督と衣装合わせを繰り返し、ミリ単位でディテールを積み重ねて作り上げていったというハードなコスチュームも見ものだ。(編集部・石井百合子)