「有名人と知り合いであること」だけが取り柄。低レベルな自慢を繰り返す女がついていた、ヤバすぎる嘘
マウンティング。
本来は動物が「相手よりも自分が優位であること」を示そうとする行為のことを言う。
しかし最近、残念ながら人間界にもマウンティングが蔓延っているのだ。
それらを制裁すべく現れたのが、財閥の創業一族で現在はIT関連会社を経営する、一条元（はじめ）。通称・ジェームズだ。
マウンティング・ポリスとも呼ばれる彼が、今日戦う相手とは…？
▶前回：「専業主婦してて虚しくならないの？」と友人を見下すバリキャリ女子。しかし仕事に邁進する裏では…
僕は昔から、どちらかというとマイペースだと言われることが多かった。
しかしそんな僕でも、シャキッと目が覚めるような、気が引き締まるときがある。
「で、ジェームズ。最近はどうなんだ？いい子はいないのか？」
『富麗華』のテーブル席で、向かい合っている父からの一言に、僕は思わず口ごもる。
「えっ！まぁいるような、いないような…」
「誰かいないなら、知り合いの娘さんを紹介してもらって、縁談の話をつけてもいいんだぞ？」
「いや、それは大丈夫です。自分で何とかしますので」
最近、父と顔を合わせるといつもこの話が出てくる。「そんなこと言われてもな…」と思いながら、僕はある女性のことを思い出していた。
ジェームズの頭に浮かんだ女性とは…！？
Case11：知り合いマウンティング女／通報者・桜（28）の場合
久しぶりにジェームズさんから連絡をもらい、私は嬉しかった。彼とは幼少期から付き合いがあり、親同士も仲がいい。
彼の優しくておっとりした人柄が好きだなと思って、密かに恋心を抱いていた時期もあった。
けれども彼が、私のことをどう思っているのか…。いや、そもそも何を考えているのかよくわからなくて、そっと身を引いたのだ。
久々のメッセージに、私の心は踊る。それと同時に、彼に関する噂を思い出した。
◆
私は最近、ある女性との関係に悩んでいた。彼女の名は英玲奈。同じ歳で趣味も合い、背格好も少し似ている私たちは、一緒に遊ぶことが多かったのだ。
しかし最近、英玲奈は人付き合いが変わった。その結果、様々な有名経営者や芸能人とつるむようになったらしく、やたらと彼らの名前を出してくる。
「この前の飲み会に、最近上場を果たした江藤さんと俳優の拓実くんがいてさ〜。拓実くんからの連絡が、すごくしつこいの」
「そうなんだ。気に入られたの、すごいね」
「彼ってさ、実は結構遊び人で。でもカッコいいし、つい許しちゃうんだよね」
拓実くんとは、最近注目のイケメン俳優だ。たしかに、彼と遊べることは一種のステータスでもあるだろう。
しかしあまり芸能人に興味のない私の反応がつまらないのか、英玲奈は他のビッグネームも出してくる。
「桜って、江藤さんとは知り合い？」
「いや、直接的な知り合いではないけど…」
「そっか。そしたら今度紹介するね！最近上場したばかりで、この界隈じゃ有名人だから。それにいろんな人とも繋がってるし」
私に、やたらと知り合いを紹介したがる彼女。
「それに江藤さんってすごいんだよ。この前、プライベートジェットでラスベガスまで行ったらしくて。次は一緒に、って言われてるから、そのときは桜にも声をかけるね」
「う、うん。ありがとう」
本当に、私に声をかける気はあるのだろうか。でも彼らだけでは終わらない。とにかく英玲奈は、自分の知り合いを自慢してくる。
「桜って、飲食店を経営してる田中さんは知り合い？」
「あぁ、チラッとお会いしたことがあるような、ないような…」
「なんだ、知ってるのか。じゃあその田中さんと仲良しの、時任さんは？」
「いや、どうだろう…」
私の反応を気にすることもなく、彼女はしゃべり続ける。
「この前、時任さんの家へホムパで行ったんだけど。もうね、異次元の世界だった。あの界隈って、遊び方が派手でしょ？でも結局みんな繋がってるから、知り合いだらけの会になっちゃってさ（笑）」
果たして、英玲奈の目的は何なのだろうか。
なぜなら「紹介する」という餌をうまくぶら下げながら、結局は「ただ自分の知り合いが、どれほど有名ですごい人たちなのか」ということを大きな声で言っているだけ…。
― こういうのって、どう対応すればいいんだろう。一緒になって、知り合い自慢合戦に参戦することだけは避けたいし。
そう思っていると、彼女から意外な人物の名前が出てきた。
「あと、ジェームズとか。知ってる？」
「えっ！？ジェームズさん？」
「イケメンなのに、優しくて紳士的で。しかも噂だと、あの一条グループの御曹司なんだって！彼の周りに、蓮さんと瑛太さんっていう、同じようなスペックの人たちがいるんだよ。最近、仲がいいからよく飲んでて」
英玲奈の最後の言葉に、私は思わず反応する。
「そうなんだ！」
それならばと私はジェームズさんに連絡を入れ、お茶に誘い出したのだった。
これは恥ずかしい！「有名人と知り合いだ」と言いたい女が掻いた、赤っ恥とは
その翌週。私は英玲奈とともに、あるカフェに来ていた。実は今日、ジェームズさんも呼んでみたのだが、彼女はさっきからソワソワしている。
「ねぇ桜。本当にジェームズさんが来るの？」
「うん、連絡したら一緒にお茶したいって言ってたから」
「そ、そうなんだ。実は私、ジェームズさんと数回飲んだことはあるんだけど、彼は覚えていないかもで…。なぜなら、席が遠くて全然話せなくてさ」
― ん？この前は、仲良しだって言ってなかったっけ？
そう思っていると、ただならぬオーラを放つ男性が向こうから歩いてきた。遠目でも、スタイル抜群でカッコいいのがよくわかる。
「桜ちゃん、久しぶり！会えて嬉しいな〜」
「ジェームズさん、お久しぶりです！こちらこそ」
ジェームズさんの綺麗なスカイブルー色をした瞳にジッと見つめられ、落ちない人はいるのだろうか。ドキドキしながら再会のハグをし、彼が席に着いた途端、英玲奈が急に姿勢を正した。
「あの、英玲奈です」
「どうもジェームズです。初めまして」
「あれ？2人って…」
私がそう言いかけたときだった。急に英玲奈が、高速で話し始めたのだ。
「私のことなんて、覚えてないですよね。数年前に一度、吉田さんの会でご一緒させていただいたんですけど、全然話してもいなかったので。でも噂はかねがね伺っております！」
「噂？僕のですか？」
「はい♡ジェームズさん、経営者の近藤さんと仲良しなんですよね？あとはモデルのRINとか…」
早口でまくしたてる彼女を見つめ、ジェームズさんは困惑した表情を浮かべている。
「あっ…。英玲奈さん、一度お会いしていたのに覚えていなくてごめんなさい」
申し訳なさそうな彼を見ながら、私の疑いは確信に変わっていく。
「あと、近藤さんとRINさん？ってどなただろう…」
「えっ！ジェームズさんと超仲良しだ、って言っていましたよ？」
「あぁ、ナルホド。そういうの多いんですよね。一方的に知られているというか、名前だけ1人歩きしているというか…」
人はどうして、著名人と飲んだことがあるだけで「彼らと知り合いだ」と言いたがるのだろうか。
英玲奈のような人は東京、特に港区にはたくさんいる。でも実際には、彼らから認知すらされていない。
それなのに、堂々と「あの有名人と仲がいい」とまで言う人もいる。
またライバル的存在の友達への牽制として、著名人と知り合いであると公言してくることもあり、それによって自分の価値も上がったように錯覚しているのだ。
「私のほうがすごいでしょ？」と、まさにマウンティングの材料として使っているのである。
「僕、よく知らない人たちから仲良しって言われることが多いんですよね。すみません、近藤さんもRINさんも存じ上げません」
ジェームズさんと私は古くからの知り合い。本当に仲がいいからこそ、それを他の人にわざわざ言わない。
不用意に名前を出すことによって、相手に迷惑がかかることもあると知っているからこそ、ベラベラ話したりはしないのだ。
「本当に仲が良い人って、相手の立場を思いやって名前を出せなかったりしますからね。ある意味、マナーなんじゃないでしょうか」
ジェームズさんの言葉に、英玲奈は何も言えなくなっていた。
そして二度と、知り合い自慢で私にマウントを取ってくることはなくなったのだ。
▶前回：「専業主婦してて虚しくならないの？」と友人を見下すバリキャリ女子。しかし仕事に邁進する裏では…
▶1話目はこちら：未婚の37歳友人に「結婚してなくて可哀想」と言い放つ女。しかし、実は夫と…
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仁義なきバトル勃発。子どもの学校マウンティング
