筑豊電気鉄道の西黒崎駅が4年ものあいだ休止になっています。バイパス道路工事に伴う措置ですが、「日本一短い駅間」のひとつとして知られる同駅の妙な立地も、休止に関係しています。

そもそも立地が不思議な西黒崎駅

 北九州市内のある駅が、2021年10月から休止になっています。筑豊電鉄の西黒崎駅です。休止は4か年続くとされています。


西黒崎駅(奥)を通過した筑豊電鉄の電車(乗りものニュース編集部撮影)。

 同駅は、起点である黒崎駅前からの駅間距離がわずか200mしかありません。筑豊電鉄は車両こそ路面電車タイプのものが使われるものの、軌道ではなく鉄道に分類されており、駅間距離200mの黒崎駅前〜西黒崎間は、松浦鉄道の中佐世保〜佐世保中央間とともに鉄道の「日本一短い駅間」として知られています。

 ただ、その立地は少々不思議です。周辺は、国道3号、筑豊電鉄、JR線、そして国道3号の「黒崎バイパス」がそれぞれ東西方向に並走しており、西黒崎駅にアプローチできるのは、国道3号からの細い道1本のみ。乗り場は踏切をはさんで南北にありますが、北側には、JR線との間のスペースに筑豊電鉄の車庫があるのみです。

 ちなみに、隣の黒崎駅前駅の筑豊電鉄のりばは、バスターミナルを併設した複合施設「コムシティ」の中にあります。東西に長いこの建物のほぼ隣に西黒崎駅があるものの、コムシティから西黒崎駅へは行けません。

 こうした立地もあってか、西黒崎駅の2019年度における1日あたり利用者数は151名で、筑豊電鉄のなかでは最も利用が少ない駅でした。

 そして休止中の現在は、国道3号から続く細い道にも「西黒崎駅休止中」の掲示が複数あるほか、「関係者以外立入禁止」の看板が立っています。

安全確保のための駅休止

 西黒崎駅の休止は、黒崎バイパスの「黒崎西ランプ」建設工事によるものです。高架のバイパスから、JR線、筑豊電鉄線をまたぎ、国道3号を越え国道200号へと接続するランプで、西黒崎駅付近にはすでに橋脚の一部も立っています。

 筑豊電鉄によると今後、車庫の一部が工事ヤードになる予定で、現在はその準備工事中。ホームも一部取り壊しているそうです。国道3号から西黒崎駅へ通じる唯一の道は、大型車の通り道になるため、安全を確保するうえで、駅を休止しているのだそう。ただ、電車は停車しないものの、上下ホームを隔てる踏切は大型車対応のため拡幅されています。

 では、もともと西黒崎駅は何のために造られたのでしょうか。


西黒崎駅へ通じる唯一の道には「休止中」の看板が複数(乗りものニュース編集部撮影)。

 この駅は1992(平成4)年に開業。当時、筑豊電鉄と直通運転を行っていた西鉄の路面電車「北九州線」の駅として開業しました。

 このとき西鉄北九州線は黒崎駅前以東が廃止になったため、その代替バスのターミナルへの乗換駅として西黒崎駅が設けられたのです。なお当時、筑豊電鉄の起点駅は西黒崎の西隣にあった熊西でしたが、のちに黒崎駅前〜西黒崎〜熊西間は西鉄から筑豊電鉄に引き継がれています(第二種鉄道事業区間)。

 ただ2001(平成13)年には、前出の複合施設「コムシティ」と西鉄黒崎バスセンターが開業し、バスターミナルの機能もそちらへ移転したため、西黒崎駅は乗り換え駅の役目を失ったのです。駅前のバスターミナルは、単に車庫機能のみが残っています。筑豊電鉄によると、バイパス工事完了後は西黒崎駅を再開する予定とのこと。

 なお、国道3号から西黒崎駅前へ通じる道は、踏切前でもう1本の道と交わっていますが、この道はコムシティから車庫へ通じるバス専用道路です。