電動キックボード「ほぼ自転車扱い」に 免許・メット不要 一部歩道OK 新区分の乗り物へ
道路交通法が改正され、新しい車両区分「特定小型原動機付自転車」が創設されます。対象となるのが電動キックボード。ほぼ自転車のような扱いになります。
免許不要でも年齢制限あり「特定小型原付」
道路交通法の一部改正案が2022年3月4日(金)、閣議決定されました。「特定小型原動機付自転車」という原動機付自転車の中に新たな車両区分が設定され、電動キックボードがその区分に含まれます。公道走行については、運転年齢制限付きの自転車なみの扱いが決まりました。
電動キックボードなど様々な電動モビリティ(中島洋平撮影)。
改正案によると「特定小型原動機付自転車」の定義は、最高速度20km/h以下で制御され、長さ190cm×幅60cm内に収まる車体であること。この規定は道路交通法の「普通自転車」の規定と変わりません。
現状で「原動機付自転車」扱いになっている電動キックボードは、最高速度20km/h以下であれば「特定小型原動機付自転車」となり、21km/h以上30km/h以下の場合は、これまで通り「原動機付自転車」になります。
では「特定小型原動機付自転車」(=特定小型原付)の運転条件は「原動機付自転車」や「普通自転車」(=自転車)と、どう違うのでしょうか。
特定小型原付は免許不要ですが、運転できる年齢は、原動機付自転車と同じ「16歳以上」と定められました。ただし、原動機付自転車では罰則の対象になっている運転中のヘルメット着用は努力義務。着用しなくても違反には問われません。
ただ今回の一部改正案で、新しく自転車乗車中のヘルメット着用努力義務を規定します。ヘルメット着用は、自転車と特定小型原付の双方で厳しく求められていく方向です。
通行できる道も自転車とほぼ同じだが、先取り要素も
特定小型原付が通行できるのは車道、普通自転車専用通行帯、自転車道の3つ。基本は自転車と同じです。しかし、車速を最高6km/hに制御した状態で、補助標識で歩道走行可などとされている区間については、例外的に自転車通行可能な歩道を通行できるようになります。速度制御の方法については別に定められます。自転車もすべての歩道を走行できるわけではないので、歩道走行の制限も自転車に準じたものです。
一方、原動機付自転車に準じた規定もあります。特定小型原付でも信号無視などの違反行為が想定されます。この場合は交通反則通告制度が、また放置駐車にも放置違反金制度が適用されます。反則金や行政制裁金の水準については法案成立後に政令や規則で制定されます。
国家公安委員長「電動キックボードの事故を強く懸念」
二之湯 智国家公安委員長(中島みなみ撮影)。
一部改正案の閣議決定を受けて、二之湯 智国家公安委員長は、こう語ります。
「いちばん懸念しているのは電動キックボードの運転。移動手段として便利であるということで警察庁も改正に踏み切ったが、自転車と同じような扱いで、そこそこスピードも出る。自転車でもルールを守らない人が見受けられる中で、電動キックボードが歩道や車道を縦横無尽に走って思わぬ交通事故に遭遇することは、本来の目的とまったく違ったことになってしまう」
今回の一部改正案では、電動キックボードの販売事業者やシェアリング事業者に対して、交通安全教育を努力義務としていますが、別の懸念もあります。
「自治体によって道路事情もまったく違う。東京のように幅広い車道、歩道が完備されている地域もあれば、私の地元の京都なんかは、クルマがすれ違うだけでもたいへんな車道(が多いうえ)、歩道といっても狭く、傾斜していたりする。そんな道路環境で事故が起きると、死に至らないまでもかなり衝撃は大きい」(二之湯国家公安委員長)
二之湯氏は法案が成立し施行までのあいだ、都道府県警察が道路管理者と相談して実態を把握、特定小型原付が有効に活用できるよう各警察を指導し、道路関係者に要望していくといいます。
新ルールは教育が不可欠
運転に免許を必要としないことから、電動キックボードの新しい交通ルール教育についても、こう語ります。
「(電動キックボードは)若者がよく利用されると思う。教育機関、学校、教育委員会、自治体、メーカーにおいても、徹底して安全教育について取り組んでもらいたい」(二之湯国家公安委員長)
こうしたことを想定して一部改正案には、悪質・危険な違反行為を繰り返す運転者に講習の受講を命令することができる規定が盛り込まれるとともに、命令違反には罰則が設けられます。違反者の交通教育については原動機付自転車と同じで、自転車より厳しく設定されています。
電動キックボードのシェアリングポート例。東京、横浜、大阪などで拡大している(中島みなみ撮影)。
ちなみに、今回の道路交通法一部改正案には、このほかにも自動運転レベル4の運転者のいない運行の許可制度、自動配送ロボットの走行方法、免許証とマイナンバーカードの連携などについても盛り込まれます。改正法案は今国会での成立を目指します。