ロシアン佐藤 撮影・西邑泰和

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『元祖!大食い王決定戦』(テレビ東京系)で2008年に衝撃のデビューを果たしたロシアン佐藤。当時システムエンジニアとして働きながら、大食いタレントとしても大活躍し、「いつも美味しそうに食べる」と、多くの大食いファンを魅了してきた。2021年7月には、「競技としての大食い」の引退を宣言。現在は食への恩返しをテーマに新たなプロジェクトを設立し、YouTube配信を中心に活躍している彼女に、改めて大食いに目覚めたきっかけや、これからの活動について話を聞いた。(前中後編の中編)

【前編はこちら】大食い・ロシアン佐藤が“人前で食べられなかった”思春期を語る「ギャル曽根ちゃんの存在は革命」

【写真】大食いレジェンド・ロシアン佐藤

──大食いタレントとして活躍してきた中で、特に印象に残っているライバルは?



佐藤 全員キャラが濃くて、インパクトがありましたよね(笑)。でも一番衝撃を受けたのは、やっぱり菅原初代さんになるかな。

──魔女・菅原ですか!



佐藤 普段の菅原さんってめちゃくちゃ優しくて、すごく温厚な方なんです。菅原さんの周りだけゆっくりした時間が流れているような、そんな柔らかい雰囲気ですし。でも、それが試合になると一変するんですよね。朝からピリピリしていて、話しかけちゃいけないオーラを出していて……。試合に対して本当に真剣に取り組んでいるし、信じがたいほどにストイック。完璧なプロフェッショナル。あの張りつめた空気感は、ちょっと他の人じゃ出せないと思う。

──大食い史に残る伝説上の人物ですからね。



佐藤 あとアンジェラ佐藤ちゃんとはすごく仲がよかったです。ほぼ同期なんですけど、なんだか私にとっては妹みたいな存在でしたね。本当に天然だし、気が気でない感じ。なにせ大酒飲みですから(笑)。『大食い王』って、海外に行ったときは大会終了後にスタッフさんも交えて打ち上げをするんですね。そこでアンジェラちゃんは案の定、酔っぱらいまして。その一件からは「選手の飲酒は禁止」とルールが変更になったくらいです(笑)。

──豪放磊落な性格?



佐藤 ただ、すごく繊細な一面もあるんです。毎回、試合前になると心が折れそうになるから、「大丈夫。あなたは強いんだから、そのままでも勝てるよ」とか私も励ましていました。私も同じ大会に出るライバルのはずなのに応援しちゃっているわけで、今考えると変な話ですよね(笑)。

──素朴な疑問なんですけど、大食いのコツってあるんですか? 「自分もいっぱい食べたい!」と考える番組視聴者も多いはずですが。



佐藤 まず大前提として伝えたいのは、「食べるのを好きになってください」ということ。私が思うに、おそらく楽しんで食べているときが一番お腹にいっぱい入るんですよ。大食いって想像以上にメンタルが左右する競技ですから。チャレンジメニューに挑むときだって、「どうしよう。食べられるかな……」って不安を抱えているよりも「めっちゃ美味しそう! いっぱい食べたい!」ってポジティブな気持ちでいるほうが成績は確実に伸びます。

──そのへんはアスリートと同じですね。



佐藤 内臓を使う競技ですから。腸の動きとかはメンタルと密接に結びついているし、どれだけフィジカルを鍛えたところで精神的な部分が崩れるとダメなんですよ。本当のトップ選手……たとえば小林尊さんクラスになると、逆に一切の感情を遮断するらしいんです。完全に「無」の境地。そうなると、マシーンと一緒ですよね。だけどそれは生まれ持ったフィジカルの基礎(=体質)と圧倒的な努力・精神力によって到達できる領域。「神様に選ばれた人」ってくらい稀なことだと思います。普通の人が真似できる話ではないんです。

──普通の人がたくさん食べるコツってありますか?



佐藤 食べるときに血糖値がバーンと上がると、あまり入らなくなってしまうんです。だから血糖値が上がりにくい野菜とかから食べたほうがいいんじゃないですかね。食べ順ダイエットや食育での食べ順というのは、大食い的な角度から見ても理に適っているので。野菜やスープから食べ始め、最後は炭水化物というのがベストかもしれません。あと大食いする日の朝は、お白湯を飲んで胃腸をゆっくり休める。結局、なんだかんだ言っても身体にいい健康法的なアプローチにどんどん近づいていくんですよ。

──しかし不思議なのは、佐藤さんって大食いにもかかわらず、なぜそんなにスタイルがいいんですか?



佐藤 それよく言われるんですけど、私だって年齢とともに少しずつ太くなってきてはいるんですよ。塩分を摂りすぎると浮腫んできたりもするし、「足が太くなってきたから運動しなきゃ!」とか無駄に焦ったりもしますし(笑)。だからそこは人並みに同じ悩みを抱えているんですけど、いかんせん食べる量が人並みじゃないですからね。

──新陳代謝がいいんでしょうか?



佐藤 確かに代謝はいいほうだと思います。「食べるわりには太らない」ということに関して言うと、こればかりは体質だと思うんですよね。基本的に食べたいものを食べたいだけ口にする感じなんですけど、一応、栄養のバランスは考えているかな。逆に大食いの世界だと、太っている人は意外に記録が伸びないと言われているんです。お腹に脂肪が溜まっていると、胃の伸縮スペースがなくなるじゃないですか。そもそも健康体じゃないと、いっぱい食べることなんてできないですよ。

──年齢的な問題はいかがでしょう? 一般人でも、年を取ると食が細くなることはよくありますが。



佐藤 う〜ん、でも菅原さんなんて私より20歳以上も上なんですけど、今でもバリバリ現役で食べていらっしゃいますからね。いずれにせよ体力をすごく使う競技であることは間違いないので、そこで本人が納得できるパフォーマンスをできるかどうか? ここが引退するかどうかの分かれ道だと思うんです。当然、そこにはモチベーションの問題も絡んできますし。(後編に続く)

【後編はこちら】大食い・ロシアン佐藤が語る大会引退宣言の理由「今後は“食べることの幸せ”をもっと広めたい」