テレビを制限されたが故に執着した古泉さん。子どもには見せる?<古泉智浩の養子縁組やってみた99>
52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した7歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。 今回は、子どもとテレビについてです。
子ども時代、テレビから遠ざけられていた古泉さん。同じ方針に?
子どもとテレビの難しい関係。僕自身が、親の育児の失敗例として身に覚えが多々あります。
子どもの頃、テレビは「ドリフ禁止」「1日2時間まで」「9時(21時)半になったら寝る」などの制限がありました。1日2時間ならけっこう見れるではないか、甘いなどと思われるかもしれないけれど、平日ならともかく日曜日や夏休み、冬休みなどなんなら一日中テレビにどっぷり浸かった生活を送りたいのが子ども。
2時間だったらアニメを2本、『カックラキン大放送』を見たらもうその日は終わりで、『トミーとマツ』が見れない、などと言うこともありました。ただ父親が7時のNHKのニュースを見ていた流れで『未来少年コナン』を見たのは、自分でチョイスしたわけではないからカウントに入れなくていい、こんなどうしようもない気苦労をしていました。
9時半に寝なければいけないため、『ザ・ベストテン』は4位までしか見れなかったわけです。理不尽じゃないですか。そんな中途半端だったら9時でいいよ、とは思わず4位まで見て、ゆっくりパジャマに着替えて横目で見て怒られて、泣く泣く我慢して翌日学校で友達に1位から3位はなんだったのか教えてもらう生活をしていました。
ドリフは父親がとくに嫌っていて、「ドリフを見るとバカになる」と禁じていました。自分では見たことがない状態で『東村山音頭』を歌ったりヒゲダンスを友達の真似で踊ったりしていて、親戚の家に遊びに行ったときだけ見ることができて、これがあれか! と確認したわけです。
●テレビを遠ざけられた結果、テレビ人間に。そして漫画家へ…?
子どもにそんなつらい思いをさせるのは間違っています。テレビ人間になってほしくないという考えでテレビを遠ざけようとしたのだろうけれど、そのためますますテレビに対する執着が強化され、むしろ完全なテレビ人間を育む結果になったのでした。また意外な副産物として、テレビを見ることができない時間にラジオを聞くようになりました(今ではテレビよりラジオが好きで、ラジオ中心に日々の生活を回すラジオ人間になっております)。
そうやって抑圧された僕が大学進学で上京したら、もはや親の制限がないため四六時中テレビを好き放題見ました。テレビや映画、ラジオ、漫画にどっぷりハマった生活を送った結果、フリーランスの漫画家になって現在に至るわけです。
自分を漫画家などという不安定でふざけた職業につかせたのはテレビを制限した父親だったと言っても過言ではありません。子どもの頃にお楽しみを制限するととんでもない執着が生まれて変な道を歩ませることがある。
これを読んでいるお父さんお母さん、本当に気をつけた方がいいですよ。
●うーちゃんにテレビを好きなだけ見せてきた結果、テレビに執着のない子に
僕みたいな人間に、うちの子にはなってほしくないのです。そのため僕は長男のうーちゃんが、養子で小1ですが、幼児のときから見たいテレビはよほどのことがない限り制限せずに見せていました。テレビを見て夜寝ない、などというときはさすがにダメだよと消したのですが、見たい番組は録画してまで見せています。
今4歳の里子のぽん子ちゃんも同様で毎日毎日同じ『プリキュア』を寝る前に見ています。日曜日の朝の放送をその日から毎晩ずっと見ます。
『となりのトトロ』はうーちゃんも一時期大好きでDVDを本当に毎晩、ともすれば2回まわしで見て、それぞれ100回ずつくらい見ています。なので僕は200回見ています。最近は子どものテレビを再生すると急激に眠気が襲ってきて寝てしまいます。
うーちゃんは『ポケットモンスター』はずっと好きなのですが、『仮面ライダージオウ』『キューレンジャー』『シンカリオン』などが大好きな時期がありました。『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』はあまり興味を持たず、ぽん子ちゃんもそんなに関心がありません。なぜなのか全然わかりません。
こんな生活を送らせてきて、小学校1年の現在どうなったのかと言うと、見事にテレビにそれほど執着のない子になりました。日曜日の朝、普通の小1なら『仮面ライダー』シリーズ、戦隊ものにまだまだ夢中で見ている年頃です。ところが、うーちゃんはやっていれば見るけれど、別に見なくてもいいというクールな態度です。録画もしていません。それより野球かポケモンGOがしたいと言います。なので日曜日の午前中はなるべく裏でキャッチボールをしたり、神社で野球遊びをするようにしています。とても健全です。
●今後の課題は「ゲーム」。これからどんどん興味が出てきそうだけれど…
ただ問題はゲームです。ゲームはテレビ以上に強烈に子どもをひきつける魔力がありますよね。執着を消すために好き放題ゲームをやらせたら、ドーパミンなど興奮物質が脳内に分泌してとんでもなくゲームにハマって、ゲーム脳のゲーム人間になってしまったら困ります。僕にも身に覚えがあります。どうしてもやりたくてやりたくてそれ以外考えることができない状態にまで陥ることがあります。
今は大して上手にできない『モンスターハンターライズ』をちょっと触っているだけなのでそれほど心配はありませんが、もうちょっと年齢が上がって上手にできるようになったり、それこそ『ポケットモンスター』を自分でやり始めたらどうやって制限をつければいいのか全然分かりません。