現在はBC栃木でプレーしている川崎宗則【写真:荒川祐史】

写真拡大

ドラフト指名後に「地獄が待ってるから」 ムネリン流の温かくも厳しいエール

 今年もまた、数多の才能がプロの門をたたく。11日に開催されるドラフト会議。昨年は育成を含め計123人が指名を受けた。遡ること22年。無印の選手ながらダイエー(現ソフトバンク)から4位指名を受けた川崎宗則内野手も、運命の日を境に人生が変わったひとり。40歳になった今でも現役で続けるムネリンは、NPBの世界に飛び込んでくる若者たちに“らしい”エールを送る。

 様々な感情が交錯する、特別な1日。「その日から人生が変わるというか、何かが始まるよね。ドラフトにかかっても、かからなくても、次のスタートが始まるわけだから」。そう言う川崎も、当時は全く指名を予想していなかった。「大学に行くためにトレーニングしていて。そしたら、車がバーって来て(笑)。そういう意味では、僕の場合は特別だったかもしれない」と振り返る。

 もちろん、指名漏れで涙に暮れる選手だっている。「この世界は、とにかく指名されないと始まらない。自分で履歴書を書いて、面接を受けてというわけにはいかないから。18歳の人生がくじ1本で決まることだってある」。鹿児島にいた俊足巧打の川崎青年は、まさか自分が球界を代表する遊撃手になるとは夢にも思っていなかった。

 指名された選手には、知人が増えたかと勘違いするほど人が寄ってくる。決まって訪れる“あるある”。「みんなが喜んでくれるのはありがたいことだし、指名されただけですごいこと」。歓喜に浸ることを否定するつもりもないが「でも、気を付けなければいけない」。いつも穏やかに振る舞う川崎の表情が、ぐっと引き締まる。

求められる自律「スポーツでお金をもらうっていうことは、そういうこと」

「入ってから、地獄が待ってるから。バケモンがいるから。もう、別世界だよね。楽しみにしてほしい部分もあるけど、『プロ野球という、残酷な世界へようこそ』だよね。野球が上手いヤツらがバーンって集まって、勝負するわけだから」

 入団直後に絶望を感じた自身の経験を踏まえ、厳しくも愛ある言葉を贈る。ただ働けば、給料がもらえる世界とは違う。他者より劣っていると判断されれば、3年やそこらでユニホームを脱がされる。「入ってからは自分次第。上手く自分をマネージメントしてほしい。スポーツでお金をもらうっていうことは、そういうこと」。1日でも長くプレーしたいなら、1日でも早く自律するほか、生きる道はない。

 現在所属するルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスにも、NPB入りを目指して奮闘する若手が多い。問われれば、助言は惜しまない。日本、米国、台湾でプレーしながら不惑を迎えても、変わらないプロの信念がある。「もらっている給料に対し、責任を持っていいプレーを見せる。そしてファンに『あの選手いいね、応援しよう』と思ってもらわないといけないよね」。NPBの世界で羽ばたこうとする“金の卵”たちが、球界を賑わせてくれることを切に願う。(小西亮 / Ryo Konishi)