Googleが累計100億円超も派遣労働者の給与を過少支払いか
イギリスの大手紙The Guardianが「Googleは数十カ国で数千人の派遣労働者の給与を過少支払いしている」と報じました。過少支払いの原因は、イギリスなどに存在する派遣労働者と正規社員を同等に扱うことを義務づける法律ですが、同紙が得た内部文書によると、Googleはこうした法律を2年以上にわたって意図的に無視していました。
Revealed: Google illegally underpaid thousands of workers across dozens of countries | Google | The Guardian
Report: Google has illegally underpaid thousands of temp workers since 2019 | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2021/09/report-google-has-illegally-underpaid-thousands-of-temp-workers-since-2019/
Google faces whistleblower complaint that it underpaid temp workers by as much as $100 million - The Verge
https://www.theverge.com/2021/9/10/22667247/google-pay-disparity-temp-workers-underpaid-sec-whistleblower
Googleは豪華な社屋とトップクラスの給与で知られる世界屈指のIT企業ですが、「Shadow Workforce(影の労働力)」として正規社員より多くの派遣労働者を雇っています。2018年の報道では、影の労働力とされる派遣労働者はオフィス清掃や食事施設での調理だけでなく、コードの構築やスタッフの雇用、YouTubeムービーのスクリーニング、自動運転車のテスト、チームの管理など多岐にわたる業務を請け負っていますが、正規社員とは一線を画す扱いをされており、特に特にヘルスケアに関しては健康保険が不十分なものか一切存在しない状況だったとのこと。
こうした派遣労働者は10万人以上にも及んでおり、国籍もGoogleが事業を展開する世界数十カ国にわたります。各国の派遣労働者はその国における労働法によって扱いが定められており、イギリス・EU加盟国・インド・台湾を含む30カ国超では臨時労働者と正規社員を同等に扱うことを義務づける賃金平等法/待遇平等法が存在します。これらの法律は国によって子細が異なりますが、一般的には給与、勤務時間、休憩、休暇、休日、および一部特典を同等化しなければならないという内容で、ボーナスも同等にしなければならないと定める国も存在します。The Guardianによると、賃金平等法/待遇平等法の存在する国で雇用されているGoogleの派遣労働者は約1000人ほどとのこと。
The Guardianが得た内部文書によると、Googleは2012〜2013年に派遣労働者の給与水準を定めましたが、その後正規社員の給与が大幅に増加した一方、派遣労働者に対する給与水準は改定されなかったとのこと。Googleの内部文書には給与水準の改定について「理想的には、これは毎年行われるでしょう」という一文や、さらには2019年5月15日付けでGoogleの派遣労働者管轄チームの責任者であるAdrienne Crowther氏の「(2012〜2013年が最終改訂というのは)うわあ、古すぎます」というコメントが存在するため、Googleは派遣労働者の労働条件を改善すべきだと自認しながら、長年にわたって問題を放置してきたことが示唆されています。
2021年2月付けの内部文書によると、個々の派遣労働者の給与は本来支払われる額よりも12〜50%低いそうで、累計差額は1億ドル(約110億円)に上る可能性があります。派遣労働者管轄チームもこのことを論じていますが、議論の方向性は派遣労働者の労働条件を是正するというものではなく、「Googleの体面」を気にするものだったとのこと。この一件を報じたThe Guardianに対し、Googleのコンプライアンス部門総責任者であるSpyro Karetsos氏は「派遣労働者の給与水準は実際には何度も上昇していますが、この上昇率が企業の基準に沿っていないことは明らかです。私たちは徹底した調査を行って、まだ対処されていない給与の相違問題に対処することを約束します」と語りました。
The Guardianはすでに内部告発者支援団体を通してGoogle社員がアメリカ証券取引委員会に告発を行ったと報じており、国際労働法は証券取引委員会の管轄外であるものの、今回の国際的な給与の過小支払いが四半期財務報告書に記載された数値に影響を与える場合は証券法の虚偽条項に違反するとして捜査が行われる可能性があるとしています。