「全米オープン」観客はやはりワクチン証明必要に、一方で選手の接種率は50%程度?
「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月30日〜9月12日/ハードコート)で実施される新型コロナウイルスへの対策が開幕直前で一部変更に。さらに、選手たちのワクチン接種率が明らかになったことで、ワクチン接種をめぐる問題があらためて問われている。豪ニュースサイト nine.com.auなど複数のメディアが報じた。
当初、今年の「全米オープン」は観客収容率100%で行われ、観客がマスクの着用やワクチン接種を義務づけられることはないとしていた。ところが本戦開幕の直前になって大会を主催するアメリカテニス協会(USTA)は、12歳以上の観客に対してはワクチンを少なくとも1回接種した証明書の提示を求める方針に変更。当然のことながら、追加の予防措置を喜ぶ慎重なファンもいれば、この方針と発表のタイミングに憤慨する声もあがっている。
USTAの従業員、主審、ボールキッズ、メディア、一部の警備員や輸送係など、選手と接触する大会関係者はすでにワクチン接種を義務づけられていた。
一方で話題が再燃しているのが選手とチームメンバーのワクチン接種だ。「全米オープン」への出場にワクチン接種は義務づけられていない中、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)の両広報担当者は、「選手にワクチン接種を強く推奨し続けている」としているものの、実際の接種率は男女ともに50%程度に留まっていることを明かした。接種が進まない背景には、テニスが個人競技であることや、年間を通して選手とチームが世界中を飛び回るツアー形式が挙げられる。
「全米オープン」と同じく米国で開催される競技であっても、NFLやMLBでは選手や関係者に対するワクチン接種が強く奨励され、その達成率も高い。チームの施設内に接種会場を設けるなどしてシーズン開幕に向けて組織立った取り組みをしてきたNFLに至っては、8月末時点で選手の接種率は93%、職員は99%を超えているという。一方でUSTAの大会ディレクターを務めるステイシー・アラスター氏は、ニューヨークには外国人がワクチンを受けられる場所がたくさんあるとして、大会の会場で接種は行わない意向を示している。新型コロナウイルスに感染して「東京オリンピック」を逃したジョハナ・コンタ(イギリス)やココ・ガウフ(アメリカ)は、大会出場やそれに伴う移動とワクチン接種のタイミングを合わせるのは非常に難しいと指摘する。
2012年の「全米オープン」で優勝している元世界王者のアンディ・マレー(イギリス)は、ワクチン接種を完全に終えているにもかかわらず、大会前の記者会見で司会者がマスクを外してもいいと伝えた際にそうしなかった。自身のスタンスについてマレーはこう話す。「(ワクチンを受けたことで)僕は比較的、普段通りの生活を楽しめていると思っているよ。接種していない選手はそうじゃないから、いろいろな制約に対して不満を持っているだろうね。結局のところ、僕たち全員が予防接種を受けるべき理由は、一般の人々に気を配るためだと思っているんだ。世界中を旅している選手として、他の人たちにも気を配る責任がある。僕はワクチンを接種して良かったと思っているし、これから先、より多くの選手がそうしてくれることを願っている」
マレーが1回戦で対戦する第3シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)は、母国の政府に批判されながらも、義務化されない限りワクチンを接種しない姿勢を示している。また、昨年ツアーが中断している間にエキシビションマッチを主催した後、新型コロナに感染した世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、「ワクチン接種を受けるか受けないかは完全に個人の自由だ。その方針を変えないでほしい」と発言している。
(テニスデイリー編集部)
※写真は「ATP500 ロンドン」でのマレー
(Photo by Tony O'Brien/Getty Images)